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独立する時に考えた、お金のこと|りょかちのお金のハナシ#22

独立する時に考えた、お金のこと|りょかちのお金のハナシ#22

文筆家として活躍するりょかちさんが、“お金にまつわるエピソード”をお届けする本連載。今回は、りょかちさんが会社員からフリーランスになる時に考えた「お金のこと」について。

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副業ライターからフリーランスライターになった私が、お金に関して最も相談を受けるのが、「副業で続けていたライター業で独立しようと思ったきっかけは何ですか?」ということだ。

この時、聞かれている質問にそのまま答えれば「本業も副業も忙しくなり、どちらかに集中しなければならないと考えたことです」となるのだが、実際問題、そう思ったって金策がなければそれを実行に移すことはできない。

とはいえインタビューなどではあまりに生々しい内容なので、あまり踏み込まれないため、本当に独立を考え始めた友人がこっそり聞いてくる。「すぐに独立するには ”勇気” が必要だったと思うんだけど……仕事がなくなったら、ほら、お金とか」といった具合に。

私も最初は、どこまで話して良いものか答えに困ったが、もうおそらく10回以上は聞かれているので、なんかだんだん隠したいような気持ちが摩耗してきたように感じる。もういいや、毎回聞かれるなら全部連載で答えてオープンにしちゃおう。

そんなわけで、今回の記事では、今後そういった疑問あるいは不安を抱く人に向けて、「独立しようと思った時に考えたお金の話」をしようと思う。とはいえ、あまり期待されても困る。内容はかなりシンプルかつ王道だ。

挑戦するときに考えたい「収入」「支出」「貯蓄」

というのも、考えるべきはやっぱり「収入」「支出」「貯蓄」なのだ。

私の場合、まずは「収入」を考えた。これはつまり、独立したらどれくらいお金が儲けられそうか想定することである。クライアントとして仕事を頼んでくれそうな人がどれくらい頭の中に浮かぶか、そしてその仕事で得られる収入を総合すると月にどれくらい収入がありそうか。

副業としてすでに事業を始めているならば、その数値はより一層具体的に考えられる。今副業から始められる事業で独立したいなら、いきなり独立してみるのではなく、まずは副業から小さくはじめてみるほうがメリットがあるように思う。

独立してすぐの頃は、暇すぎて電車で10分くらいの道を1時間くらいかけて歩いてました。お金がなかったわけではありません……(笑)

その上で具体的に言うと、私は知り合いから「フリーランスになるなら、副業で会社員の2倍くらい収入がないと独立を考えてはダメ」と言われていたので、それを守った。さらに具体的に言えば、3カ月連続で副業の収入が会社の給料の2倍を超えた時にやめることにした。一瞬収入が増えたって、ベースとして会社員の2倍稼ぐ実力がないなら意味がない。

なぜ2倍かというと、フリーランスは体調を崩したら無収入になるし、福利厚生を始めとするサポートがないからだ。これはテキストながら大声で言いたいのだけれど、会社員と同じくらい儲けているだけなら、会社員でいたほうがオトクなんです。会社員って、毎月決まったお金もらえるし休んでも給料入ってくるし、産休とかもあるし、すごいんだぞ!!!!

とはいえ、年次がもう少し高くて本業収入がある人なら、「2倍」という基準は少し緩めて良いかもしれない。私の場合、まだ20代の頃だったから、そこまで本業収入があったわけではない。

次に「支出」を考えてみよう。独立してすぐ、十分な収入があるとは限らないため、どれくらいのスピードで貯蓄が減っていくのかある程度目処をつけるために、まずは自分が月にどれくらい「支出」があるのか見極めなければならない

月の支出は、貯蓄が減っていく時速ならぬ “月速” だ。月速が小さければ小さいほど、少ない貯蓄であっても無収入で生きていける。

最後に「貯蓄」。さっきの「支出」とセットで、月速◯万円で貯金が目減りするとして、どれくらいの蓄えを持っておきたいかを考える。私は無収入でも半年生きられる貯蓄を用意した。

りょかちさんの「収入」「支出」「貯蓄」の考え方

  • 収入:独立後どれくらいの収入を得られそうか考える
    …私の場合、3ヶ月間(=定常的に)会社員収入の2倍収入があった時に辞めた
  • 支出:月に生活しているだけでどれくらいお金が出ていくか考える
  • 貯蓄:無収入でどれくらい生きていける貯蓄があるか整理する
    …私の場合、半年無収入でも生きていける貯蓄をした。

まとめればこんな感じだ。あまりにも当たり前で申し訳ないけれど、きっとリアルなことに価値があると信じたい。

結局最後考えさせられるのは、「自分がやりたいこと」

独立とお金を考えるにあたって、もう一つ考えるべき大事なことは「どうして独立するの?」ということだ。またもや当たり前のことで申し訳ない。

私の場合、本業も楽しんでやっていたので、特にお金のために独立したわけじゃない。「より楽しく、未来にとって意味のある仕事をするために」独立したわけだ。

だから、お金のために独立後すぐに毎日を仕事で埋めるつもりはなく、最初から受ける仕事は厳選したかった。そしてだからこそ、半年分無収入でも生きていける貯蓄が必要だったし、そもそも当時受けていた(楽しんで続けている)副業での収入に余裕があるほうが良かった。

ちなみに余談だけど、独立して最初の半年で150万円くらい資産が減ってしまった。当時毎月5〜10%くらい資産が増えていたから、資産の成長率を加味すると、もっと失ったお金は大きいと思う。お金のために独立した人だったら「なにやってんねん」と突っ込みたくなるだろう。

でも、おかげで今となっては、信頼している大好きなクライアントとともにやりがいのある仕事に取り組んで、空いた時間は家族と過ごしたり、インプットの時間に充てたりしながら働くワークスタイルを手に入れられたから良い決断だったと思っている。

貯蓄もなく、月速もよくわからず、収入のあてもなくて何でもかんでも仕事を受けていたら、今よりずっと儲けられたとしても、わざわざ福利厚生の少ない勤務形態で心なく働く忙しいだけの人になっていたに違いない。

髪がピンクからオレンジになりました。同じフリーランス仲間とでかけた日。ヘルシーに働き続ける考え方について話しました。

だから、まずは「何のために独立するのか」「独立期間をどういった期間にしたいのか」を考えるのが最も大事だ。今すぐ会社を一旦辞めたいなら、支出から考えて最低限の収入と貯蓄だけあればいいだろうし、もっと儲けたいなら、収入の見込みを細かく設定したほうが良いだろう。

ただし、結局考えるのは、「収入」「支出」「貯蓄」というのは変わらない。そして、結局大事なのは “そのお金で何がしたいのか” ”そのお金でどう過ごしたいのか” 。考える項目は決まっていても、考えることからは逃げられない。

私が教えられることはすべて教えた。「私の場合どうすればいい?」という、これ以上の質問に答えられないのは、これ以上はそれぞれの人が考える領域だからだ。私の具体例はあくまで「こう考えるべき」ではなく「私はこう考えた」という、数多ある例のうちの一つ。

挑戦する時どういう気持だったか、という情報は世の中のインタビューの中に溢れているけれど、実はそれと同時に行ったお金の計算に関する情報はあまりない。私としても “人は挑戦した時、どんな金銭状況だったのか” は気になる。

ぜひあなたも、人生に乱数を持ち込んで、自分だけのお金戦略を練ってみて欲しい。そしてできたら、堂々とそれを教えてくれたら、さらに嬉しい。

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒業。学生時代より、ライターとして各種WEBメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題に。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、企業のコピーライティング制作なども行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。朝日新聞、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで記事の連載も。

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