ソーシャルセリングの鉄人・ウィルゲートの吉岡諒が唱える、いま使うべき新時代のSNS営業術
検索エンジンの最適化であるSEOからスタートし、デジタルマーケティングのコンサルティング事業、ITとWEBに特化したM&A仲介事業などを展開する「ウィルゲート」。専務取締役COOであり共同創業者の吉岡諒さんは、ソーシャルメディアを使い顧客を獲得するソーシャルセリングの達人で、年間3億円の新規受注を獲得しています。
コロナ禍で顧客への営業手法のあり方が大きく見直される中、吉岡さんが提唱するソーシャルセリングはますます注目を集めています。そんな吉岡さんに、ソーシャルセリングとの出会いや事業化のポイントなど、いま気になるアレコレを伺いました。
ソーシャルセリングにのめり込むきっかけは、5,000円のセミナー動画
おかねチップス編集部
吉岡さんはソーシャルセリングの第一人者ですが、ソーシャルセリングを始めたきっかけって何だったんですか?
吉岡
さん
ソーシャルセリングに目覚めたのは、2019年ごろ。リスティング広告(ユーザーが検索したキーワードに連動して掲載される広告)の反響に対して、広告にかける費用の方が高くなってきていて、コストパフォーマンスが悪くなったことを実感したことですね。
おかねチップス編集部
どんな商品の広告を出していたんですか?
吉岡
さん
当時、SEOや記事作成サービスのリード獲得のためにリスティング広告を出していました。 しかし、既に市場が成熟し競合が増えていたため、リスティング広告では思うような成果が得られなくて。 そこで試しに弊社で培ってきたSEOのノウハウを100分に詰め込んだセミナー動画を、Facebookの繋がりを活かして5,000円で売ってみたんです。
おかねチップス編集部
Facebookを使ったんですね! どうやってそのセミナー動画を販売したんですか?
吉岡
さん
自分のFacebookで「動画を欲しい人がいたらコメント欄から連絡してください」という投稿を、3~4回してみたんです。そうしたら、Facebook経由で641名の人がセミナー動画を買ってくださって。これだけで粗利320万円です。これ、ちょっとヤバくないですか!?
おかねチップス編集部
た、たしかに……。
吉岡
さん
ですよね! もちろん、会社の利益として計上していますけどね。実はですね、これだけの成果を出せたのには理由があるんですよ。
おかねチップス編集部
ある理由???
吉岡
さん
Facebookの投稿に、商品の外部ページのURLをつけなかったことです。実験してみたところ、URLをつける投稿とつけない投稿では、URLを付けない投稿の方が購入者数が10倍に増加したんですよ。
おかねチップス編集部
URLの有無だけでそんなに違いが出るんですね。でもそれだと、お客さんが商品ページにすぐにアクセスできないんじゃないですか?
吉岡
さん
そこがミソです。商品やサービスを売りたいときに、セミナーの申し込みや問い合わせのフォーム画面に誘導するURLをつける人が多いですよね。でもそれは一番やってはいけないこと。だって実際にクリックする人って、5%以下なんですよ?
おかねチップス編集部
5%以下ですか!?
吉岡
さん
はい。そこで僕が考えたのが、いかに投稿を見ている人に画面遷移させずに、コメント欄で意思決定をさせるか、ということです。これがめっちゃ大事なんですよ。
おかねチップス編集部
なるほど。コメントするだけなら5秒とかからないですもんね。
吉岡
さん
そうです。このセミナー動画をFacebookで販売して何が一番嬉しかったって、動画を購入してくださった顧客のうち、8%の50名の方が吉岡に仕事をお願いしたいとおっしゃってくれたこと。それで動画を販売してから4カ月で、新規受注粗利が5,000万円になったんですよ。これも、かなりヤバいですよね!?
おかねチップス編集部
それはヤバい! すぐにでも実践したいです……(メモメモ)。
季節の挨拶メールは、最高の自己アピールツール
おかねチップス編集部
ソーシャルセリングをするうえで、ほかにもポイントがあれば、ぜひ教えてください(本気)。
吉岡
さん
たとえば新年挨拶や暑中お見舞いの挨拶って、堅苦しい挨拶文を送りがちですよね。しかし、私は自分のプライベート報告を交えて、挨拶のメッセージを送っています。「妻の実家の札幌に帰っていました」とか「いま子供が◯◯にハマってます」とか書いたりして。これに対して共通点があったり、親近感を覚えてくれた人が返信してくれるんですよ。
おかねチップス編集部
実際、どれくらいの人が返信してくれるんですか?
吉岡
さん
6,000通送れば、100通は返ってきますね。その100通の中に、仕事の相談が10通ぐらい入っています。ある意味、メールもSNSみたいなもので、ソーシャルセリングでの売り上げ3億円のうち、2億円はFacebook、5,000万円はTwitter、5,000万円はメールで新規のお取引に繋がっています。
おかねチップス編集部
すごっ……!!!
吉岡
さん
あとはセミナーの集客の場合などは、日程を記載しないこともポイントですね。とくに経営者の方は忙しいので、参加したくても予定が合わないことが50%以上の可能性で発生します。まずは参加の意思をイエスかノーで確認。そして、参加すると言ってくれた人に対して、個別メッセージで日程調整も含めた案内を送ります。これだけで、反応率がぐんと上がるんですよ。
おかねチップス編集部
なるほど。吉岡さんの理論や方式で行くと、SNS上での友達やフォロワーの数が絶対的に必要ですよね。それが少ない場合は、どうしたら良いですか?
吉岡
さん
ちょっと言葉は厳しいかもしれないですけど、ソーシャルセリングって、人脈がある人に対して提供するものなので、Facebookの友達が1,500人以下の方には不向きだと思います。確率論的に言っても、僕がコンサルを引き受けるかどうかの基準はそこですね。
おかねチップス編集部
じゃ、人脈が乏しかったり、個人規模ではソーシャルセリングはやるべきではない?
吉岡
さん
私の場合は、Facebookの友達1万人で年間3億円の新規受注なので、Facebookの友達が500名なら年間1,500万円の新規受注であれば、確率論的にあり得ると思います。ちなみに私は大学生のころ、担任の先生から仕事を受注したり、ふらりと入った不動産屋さんからもホームページの制作を依頼してもらったことがあります。つまり、ちゃんと営業する気概を持って、自分の能力を必要としているところにリーチをすべきということ。多くの人は周りに見込み顧客が大量にいるにも関わらず、なぜか赤の他人に広告を打ってるんですよね。だから、人脈が乏しかったり、事業が小規模であろうと、自分の繋がりを大切にし、営業すべき相手を見極めることがまず第一歩ですね。
考え方や価値観を発信することが、ファンづくりの第一歩
おかねチップス編集部
ソーシャルセリングの活用方法や注意点について、さらに詳しく教えてほしいです。吉岡さんがSNS上の発信で大切にしていることは何ですか?
吉岡
さん
まずは、ポイントを押さえながら発信をしていくことが重要です。具体的には、SNSの発信内容には大きく4種類あります。1つ目は「自分の考え方や価値観」、2つ目は「人の役に立つこと」、3つ目は「活動報告」、4つ目は「プライベートの話」です。その中でもとくに重要なのが、「自分の考え方や価値観」の発信。SNSで発信する上で、「自分はどのように認知されたいのか」というキャラ設定が大事です。
おかねチップス編集部
ほうほう。それはなぜですか?
吉岡
さん
人は価値観や思いに触れるとファンになるからです。たとえば、私の場合、「仕事に一生懸命」「代表を想うCOO」「3度の飯より鈴木あみが好き」という設定にしています。実はTwitterアカウントもSEOと鈴木あみが好きだから「SEOアミーゴ」っていうアカウント名にしてるんですよ。
おかねチップス編集部
アミーゴが好きなんですね。どんなところが?
吉岡
さん
えっと……(急に口ごもる)。もう全部です。デビューした瞬間から大ファンでして。って、この話は永遠にできるので、今度またゆっくりと。
おかねチップス編集部
ははは。吉岡さんのどこか人間味あふれる部分が垣間見えて嬉しいです(ほろり)。
吉岡
さん
ソーシャルセリングの話に戻ると、発信を受け取ってもらうための工夫も大事ですね。
おかねチップス編集部
受け取ってもらうための工夫って?
吉岡
さん
自分の発信を読んでもらうために大切なのは、読み手のメリットになるような話をすることです。そうすることで、相手に興味を持って発信を受け取ってもらえるんですよね。そのために、何に詳しい人として認知されたいのかを逆算して投稿する点がポイントとなります。
おかねチップス編集部
へぇ〜。具体的にはどんなことを?
吉岡
さん
私の場合、SEOやソーシャルセリング、M&Aに詳しい人として認知されたい。なので、プロフィールにこれまでの実績を具体的な数値とともに記載します。また、先ほどのTwitterのアカウント名にSEOと入れているのは、SEOが好きという意味合いもあるのですが、自分の得意なことをアピールするための策略でもあるんですよ。
おかねチップス編集部
すべては吉岡さんの手の上で転がされている、と。
吉岡
さん
そんなことはないですが(笑)。こういった工夫によって、顧客に発信をキャッチしてもらえる機会を増やし、自分が仕事やプライベートで何をしているかを知ってもらうことができます。そして、顧客に親近感や興味を持ってもらい、SNS上の発信を通して信頼感でつながっている状態をつくることが重要なんです。
吉岡式 SNS発信で押さえるべきポイント
- 自分の考え方や価値観の発信
- 人の役に立つ情報の発信
- 活動報告の発信
- プライベートの話の発信
相手との関係性によって、SNSの使い方も工夫する
おかねチップス編集部
SNSを通じたファンのつくり方について教えてもらいましたが、吉岡さんはこれをどうやって仕事の取引につなげているのですか?
吉岡
さん
自分のファンになってもらったら、相手から相談が来るような状態をつくることが重要です。SNS以外のメールマーケティングでは、相手に応じた情報をリストを精査してお送りします。たとえば「採用募集中」と発信している企業に対しては、「ウィルゲートがリファラル採用で年間15名採用できた方法」についてセミナーのお誘いをお送りしたり。あとは、相手から私に個別に相談が来るタイミングを待ちますね。これを徹底してみたら、M&Aに関しては、SNSやメール経由でほぼ毎日相談が来るようになりました。M&Aの仲介実績としてはこの1年半で24件が成約しましたよ。
おかねチップス編集部
えー!!! そうなるために、具体的に何をしたらいいですか?
吉岡
さん
まずは、名刺などの顧客データの管理と活用が大切です。データを管理する際にも、相手との関係性を加味しながら、「季節のご挨拶だけお送りする方」「セミナーのご案内をお送りする方」といった具合に独自のルールをつけて、名刺を手作業で振り分けています。過去には、1万5,000枚の名刺を、朝の4時まで振り分けたこともありました。
おかねチップス編集部
自分だったら失神しちゃうかもです。
吉岡
さん
この作業って、どれだけ時間がかかっても絶対に必要だと思っています。いただいた名刺はそのままにせずに、業態や社員規模、役職などによってしっかりとグループ分け。こうして必要な時間と労力をかけることで、それぞれの興味に合わせたセミナーなどを案内でき、取引のきっかけをつくることができるんです。
おかねチップス編集部
名刺などのデータ管理、さぼらずにやってみようと思います。そのほかに、意識されていることはありますか?
吉岡
さん
関係性の深い人ほど、多くの時間を割くようにすることもポイントです。私がSNSに使う時間の中で最も多いのが、Facebook。だから、そういった関係性の深い人とのやり取りはMessengerで個別のやり取りで時間をしっかりと使って、つながりの浅い人はTwitterなどの不特定多数に向けた発信ツールを使う。そうして、相手とのの関係値を深めていくイメージですね。
おかねチップス編集部
ほほう。そのような関係性を築くことによって、相手から自分に対して仕事の相談のメッセージが来るんですか?
吉岡
さん
まさにそうです。相手からご相談をいただくことも多いですが、こちらからご連絡差し上げることもあります。お相手のご状況やビジネスモデルを加味して、お役に立てる自信がある時はご連絡しますよ。ご連絡の内容が相手のニーズを捉えていなかったり、距離感を見誤ると相手からぱったりと返事が来なくなったり、関係性が途切れてしまったりすることになるんですよね。
おかねチップス編集部
まずは、土台にしっかりとした関係性構築を行う点が大切なんですね。関係性が固まったらタイミングを見極めて、提案を行っていくことが重要である、と。
吉岡
さん
はい。従来の営業のように顧客に積極的にアプローチをかけていくというよりは、SNS上のコミュニティでつながりながら、自分からあまり積極的に営業しにいかないというスタイルです。常にSNSでの発信を続けて、集客と顧客との関係性の構築を同時に進めることで、自分と親しい関係性の近い方だけではなく、直接はあまり話したことがない方からも仕事のご相談がいただけるようになるのが、僕が行っているソーシャルセリングの強みと言えますね。
おかねチップス編集部
ソーシャルセリングもそうですが、吉岡さんは徹底的にものごとを解析し、そのためなら努力を惜しみませんよね。どうしてそこまでできるんですか?
吉岡
さん
「ストレングスファインダー」という才能診断ツールを受けて発見したんですが、私を動かす原動力として一番根底にあるのは、「達成欲」です。実際、朝起きた瞬間から達成欲に突き動かされてひたすら仕事してるんですよ。ほかにも「社交性」や「自我」という項目が当てはまり、どれも私自身を構成する要素として欠かせません。
おかねチップス編集部
なるほど。最後に、コロナ禍でのソーシャルセリングの立ち位置って、どのように変化していくと思いますか?
吉岡
さん
コロナ禍で人に会えないからこそ、SNSを通したソーシャルセリングの重要性は高まっていきます。たとえば、外出制限などで以前に比べて、名刺交換をする機会も減りましたよね。でも、名刺交換ができなくても、SNSでやれることはたくさんあります。まずはSNSに注力する。それこそ、いまの時代を生きる私たちに必要なアクションだと考えています。
吉岡諒(よしおか りょう)
株式会社ウィルゲート 専務取締役COO 共同創業者。
1986年生まれ、岡山県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。幼馴染の小島梨揮氏とともに、2005年に起業。翌年、19歳で株式会社ウィルゲートを設立。コンサルティング事業とメディア事業を展開する中で、ソーシャルセリングのノウハウを確立する。ソーシャルセリング事業を強みとして年間3億円の新規受注を獲得し、営業現場では自身で累計2,000社以上の顧客を担当。オンラインを活用したセミナーを積極的に行いながら、コンサルタントとしても活躍するなど、多方面に活躍の幅を広げている。
ウィルゲート:https://www.willgate.co.jp
Twitter:@seoamigo
FACEBOOK: https://www.facebook.com/willgate
note:https://note.com/seoamigo
1986年生まれ、岡山県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。幼馴染の小島梨揮氏とともに、2005年に起業。翌年、19歳で株式会社ウィルゲートを設立。コンサルティング事業とメディア事業を展開する中で、ソーシャルセリングのノウハウを確立する。ソーシャルセリング事業を強みとして年間3億円の新規受注を獲得し、営業現場では自身で累計2,000社以上の顧客を担当。オンラインを活用したセミナーを積極的に行いながら、コンサルタントとしても活躍するなど、多方面に活躍の幅を広げている。
ウィルゲート:https://www.willgate.co.jp
Twitter:@seoamigo
FACEBOOK: https://www.facebook.com/willgate
note:https://note.com/seoamigo
撮影/酒井恭伸
取材・文/小山田滝音
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ソーシャルセリングの鉄人・ウィルゲートの吉岡諒が唱える、いま使うべき新時代のSNS営業術
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