ワークシェアリングの課題や問題点
新たな働き方の1つとして、ワークシェアリングを導入する企業が増えています。
ワークシェアリングとは、本来1人の社員に任せる仕事を複数人で分けて(シェア)し、雇用口や労働のハードルを下げる働き方です。
この働き方は海外を中心に導入企業が増えており、国内でもワークシェアリングを推奨する動きが見られます。
しかし、導入する際はワークシェアリングの利点とともに、問題点も知っておかなくてはいけません。
今回は、ワークシェアリングの課題や問題点を中心に解説します。
ワークシェアリングとは
ワークシェアリングとは、業務を複数人の社員で分け合うことを指します。
本来は1人分の仕事を複数人で分ければ、1人分の負担が減るのはもちろん、新たな雇用口を作り出すことも可能です。
そのため、子育て中の方やプライベートを大切にしたい方など、労働時間がネックでフルタイムは働けない方の労働の機会も作れるでしょう。
また、ワークシェアリングの導入による雇用の増加は、失業率の低下にも繋がるため、社会問題の解決の観点でも効果が期待されています。
ワークシェアリングの問題点とされているものにコストがある
ワークシェアリングの問題点として挙げられるのが、導入コストです。
従来は1人で行っていた仕事を複数人で分ければ、労働者個人の負担は減りますが、引き継ぎなどが必要になり人件費が嵩んだり、より多くの人数分の福利厚生の整備が必要になる場合もあるでしょう。
そのため、人件費やコスト削減の観点から見ると、課題があることも事実です。
そのため、ワークシェアリングを検討する際は「1人に任せた方が効率が良い仕事」「複数人で分けて負担を減らした方が良い仕事」を見極めた上で導入する必要があります。
ワークシェアリングの種類
ワークシェアリングの導入方法は、主に4種類に分けられます。
雇用創出型:パートや時短労働者を雇用し労働の負担を減らす
雇用維持型:高齢者や退職者を雇用し現職社員の負担を減らす
多用職業型:パートやリモートワークなど複数種類の働き方から選択できる
緊急対応型:急激な労働環境の変化に合わせ臨機応変に労働方針を変える
以上の種類から、自社に合った形での導入方法を検討することが大切です。
特に日本で多く導入されている例が「雇用維持型」です。
少子高齢化が急速に進む昨今、定年退職者が増加し現役社員だけでは仕事が追いつかなくなっています。
そこで、雇用維持型ワークシェアリングを導入すれば、定年退職者などを継続して雇用し、人手不足を補う形で働き手を確保できるでしょう。
また、近年では感染症の急速拡大を受けて緊急対応型のワークシェアリングを導入する企業が増えているなど、情勢も相まって検討する企業が増加しています。
ワークシェアリングの事例
ワークシェアリングは世界中で導入が進んでいます。
なかでも成功した事例について、国ごとにご覧ください。
オランダ
ワークシェアリングは1970年代ヨーロッパで生まれました。
なかでも成功事例として注目されているのが、1980年代のオランダです。
オランダでは国を上げてのワークシェアリング推進とともに、減税・社会保障における負担額の削減が行われました。
これにより、課題となるコスト面の負担が減り、多くの企業がワークシェアリングを導入するに至りました。
また、以降もオランダでは企業ではなく労働者本人が労働時間を決定できる「労働時間調整法」が施行されるなど、ワークシェアリングに合わせた法整備が進んでいます。
これにより、オランダはワークシェアリングの導入に成功したモデルケースとして各国から高く評価されています。
アメリカ
アメリカでは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ワークシェアリングを導入する企業が急激に増えました。
このとき、米国内では経済打撃により失業率が上昇しており、雇用問題も深刻化していました。
この課題を解決するため、政府は2兆円規模の経済対策を実施し、同時にワークシェアリングの導入も推進します。
ワークシェアリングの推進目的は雇用口の増加による失業率の低下です。
まずは雇用を増やし、時短勤務で働ける機会を増やしつつ、同時に職業訓練を行い危機的状況を打開するに至りました。
また、ワークシェアリングの推進により、アメリカの失業率は大幅に下がり、数字としても成果を得られています。
ワークシェアリングを導入するときのメリットとデメリット
ワークシェアリングを導入することには、メリットとデメリット両方が存在します。
自社の業務に導入してメリットがあるかどうか判断するため、今一度ワークシェアリングの特徴を見つめ直しましょう。
ここでは、ワークシェアリングのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
・社員の労働における負担の軽減が叶う
・社員のモチベーションを担保できる
・労働時間の短縮が叶う
ワークシェアリングを導入すれば、社員1人あたりの業務量を減らせるため、業務の負担や労働時間を短縮できます。
短時間の労働であれば、社員のモチベーションの向上にも繋がり、より労働生産性が向上するでしょう。
また、業務の完了スピードが早まることも、見逃せないメリットです。
例えば、1人が8時間で済ませる業務も、ワークシェアリングを導入し2人で分ければ、半分の4時間で済ませられる場合があります。
そのため、業務をより早く完了できるため、ワークシェアリングは膨大で煩雑な業務をスピーディに済ませる一助となるでしょう。
デメリット
・社会保障をはじめ福利厚生のコストが増える
・必ずしも業務スピードが上がるとは限らない
・1人あたりの賃金・給与が減る
労働力を増やせば増やすほど、社会保障をはじめ福利厚生に掛けるコストは増えます。
そのため、場合によっては成果に対して人件費や経費がかさみ、労働生産性が上がらない結果に至る可能性もあるでしょう。
また、社員全員が「給与が下がっても良いから労働時間を短縮したい」と思っているわけではありません。
場合によっては、給与が減ることで社員から不満が出るケースもあるため、副業を可能にするなどフォローを容易すると、働き方の選択肢を容易するのもおすすめです。
ワークシェアリングの問題点や課題も理解して導入を検討しよう
業務を複数人でシェアする「ワークシェアリング」は、新たな働き方・雇用口を作る上で役立ちます。
プライベートを大切にしながら働けたり、労働生産性の向上を目指せるなど、より良い労働環境を目指すきっかけになるでしょう。
一方で、ワークシェアリングには問題点や課題があることも事実です。
特に企業側の負担が増えたり、ワークシェアリングを実施する業務の取捨選択が必要になることは、必ず検討しておきたいポイントです。
ワークシェアリングの導入を検討しているのであれば、問題点だけでなく、自社の業務を今一度見直したうえで決定しましょう。
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ワークシェアリングの課題や問題点
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