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世界のニーズを探り、ゼロからイチを生み出す。AnyMind十河宏輔に聞く、劇的に事業を成長させる秘訣

世界のニーズを探り、ゼロからイチを生み出す。AnyMind十河宏輔に聞く、劇的に事業を成長させる秘訣

次世代を担う新しい職業を生業としている方々へのインタビュー企画「シゴトとワタシ」。今回ご登場いただくのは、AnyMind Group共同創業者兼代表取締役CEOの十河宏輔(そごう・こうすけ)さんです。

2016年、十河さんと、現CCOの小堤さんとの2名でスタートした同社は、マーケティングテック事業からスタートし、現在はブランド企業やインフルエンサーなどの個人に向けて、ブランドの設計・企画から、生産管理、ECサイトの構築・運用、マーケティング、物流管理などをワンストップで支援する「ブランドコマース事業」を軸にした​​ビジネスを展開。わずか5年で、13カ国に1,000名以上の社員を抱える大企業となりました。売上高も、2021年は約190億円を超え、2017年から60%以上の成長率を誇っており、現在も事業を広げています。

AnyMindが圧倒的スピードで成長してきた理由はどんなところにあるのでしょうか。事業成功の秘訣を十河さんに伺います。

英語は現地での採用面接で鍛えた。AnyMind創業までの道のり

——まず、AnyMind創業に至るまでについて聞かせてください。シンガポールからスタートしているのが特徴かと思うのですが、これには何か理由があるのでしょうか。

十河さん:最初からアジア全域でビジネス展開したかったというところが大きいですね。

シンガポールは、タイやベトナム、インドネシアなどにも1〜2時間くらいでサッと行けるので、グローバル展開しやすいんです。

——なぜ、アジア全域でのグローバル展開を考えていたのでしょうか?

十河さん:前職で得た経験が大きく影響しています。新卒でネット広告配信事業社のマイクロアドに入社したのですが、2年目の後半くらいから、アドテク(※広告配信の効率を向上させるためのシステムのこと)事業の海外拠点の立ち上げに関わり始めました。

ベトナムやタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアなどを担当して、アジアの熱量に感銘を受けたんですよね。若い人たちが多いので、デジタルシフトもすごく速くて、アジアの市場は間違いなく伸びると感じ、自分で起業するのであれば最初からアジア全域で、かつインターネットの領域でやっていこうと思っていました

——となると、英語が必須かと思うのですが……。

十河さん:マイクロアドで海外事業に関わり始めた当時は、まったく喋れませんでした。現地で、1人目の社員を採用する時に100人に対して面接をしたのですが、その中で英語を勉強するような状態で。でも、1日約10人、ひたすら候補者と英語でやり取りしていると、市場の状況もわかるし、英語も勉強できる。面接ってすごく効率的だなと思いましたね(笑)。

それに、英語がそこまで流暢ではなくても、アドテクやインターネットの動向に関する知識は豊富にあったので、彼らが持っていない知見を提供することで信頼を得ることができたのだと思います。

2016年創業で13ヵ国・地域に進出しているAnyMind Group。社員数は1,000名を超える

——マイクロアド時代も、相当スリリングで刺激のある生活を送られていたかと思いますが、なぜ起業しようと思われたのでしょうか。

十河さん:僕は経営者家系で、父方母方ともに両方の祖父が経営者なんです。小さい頃から「じいちゃんかっこいいな」という憧れがあって、僕もいつか社長になりたいなと思っていたんですよね。

——ですが、前職でも現地法人の社長を務めていましたよね。ある意味、夢は叶っていたとも言えるのではないでしょうか。

十河さん:経営者といえば経営者だったのですが、自分でビジネスモデルを変えるとか、新しいプロダクトを作りたいとなると、どうしても制限がありました。

しかも、東南アジアで事業を展開していると、アドテクの世界だけではなく、インターネットビジネス全般において、チャンスが転がっているわけですよ。それがもどかしくて、自分が関わっている海外拠点すべてが黒字化したタイミングで独立を決めました。

地に足ついたビジネス展開を。事業成功の秘訣

——不安はなかったですか? AnyMind創業時、十河さんは28歳でしたよね。20代というと、普通はまだまだ人生に悩む時期かと思うのですが。

十河さん:不安も迷いもまったくありませんでした。失敗するなんて1ミリも思っていなかったですし。うまくいくイメージばかりしていました

——その自信は、やはり前職の経験が大きかったのでしょうか。

十河さん:そうですね。各国に拠点を作る過程で、自分たちが持っている経営資源でどれくらいのことができるかとか、どうすれば効率的にお金を回せるかとか、事業を拡大していくためのノウハウをある程度体感していたので。

それに何もないところから何かを生み出す「ゼロイチ」の感覚は前職時代から磨かれていたし、とても得意だった自覚があります。

新卒で入社したマイクロアドでは、入社3カ月後にトップ営業となり、2年目には子会社の立ち上げにも参画した

——創業時からグローバル展開を考えられていたということは、事業計画も大切かと思うのですが、どこまで具体的に未来のことをイメージしていましたか?

十河さん:この前、創業して3カ月目くらいの社員総会の資料を見ていたのですが、具体的なプランにまでは落とし込めていなかったものの、成長のスピード感については当時からかなりはっきりとイメージしていました。「何カ国に展開する」とか「プロダクトのラインナップは何個」とかって。

——その計画を実現できた秘訣は何でしょうか。

十河さん:地に足のついたビジネスを展開してしっかり稼げる体質を作れたことでしょうか。AnyMindはデジタルマーケティングの一元管理ツールとインフルエンサーマーケティング、この2つの領域から事業をスタートしましたが、どちらもポテンシャルが高く、大きな成長が見込めました。そこにきちんとニーズに合ったものを提供する。これができたことで業績を大きく伸ばすことができたと思います。

よく話し合い、ビジョンを共有する。社員と築く信頼関係

——AnyMindは、タレントのブランドの立ち上げをお手伝いするにあたって、商品の生産から物流まで、全工程をバックアップしていますよね。デジタルマーケティングとものづくりは、なかなか紐づかないと思うのですが、どうやって展開を考えたのでしょうか。

十河さん:マーケティングのプラットフォームや、ECのソリューションに加えて、生産や物流のところも連携すれば、おもしろい仕組みを各ブランドに提供できるのではないか。その予感から事業を大きく拡大しました

結局、マーケティングがどれだけうまくいっても、売れ筋の商品が在庫切れになっていたら、成長という意味では伸びていかないじゃないですか。そこで例えば、在庫が切れそうになった時にオーダーを自動で出せるような仕組みを整えられれば、ブランドにとってメリットになります。そうしたデータ連携がすごく重要だと感じたんです。

——少しいじわるな質問になってしまいますが、事業がどんどん拡大して、ものすごいスピードで急成長する中で、「十河さん、ちょっと落ち着いてください、もうついていけません」という声が社内から上がることはないのでしょうか?

十河さん:おっしゃる通り、そういうケースも正直あったと思います。もちろん僕がすべての意思決定をしているわけではないので、議論はしますが。

例えば、2020年の4月に六本木ヒルズへオフィスを移転するにあたって、経営陣と何度も議論したんですよ。当時はコロナ禍でオフィスの必要性自体が問われているような時期でした。その中で従業員50人に対して250人くらいのキャパのオフィスを借りようとしていたわけです。さすがに「ちょっとやりすぎじゃない?」という声もあって。ギリギリまで悩んだ末に移転を決意したわけですが。

——士気が下がるようなことはなかったですか?

十河さん:うちの経営陣のいいところは、自分たちが意思決定したことを「正」にしようというマインドがものすごく強いところなんですよね。

移転した時は緊急事態宣言が発令されていたので、オフィスに来ても3人くらいしかいないんですよ。それだけで考えたらとんでもない出費じゃないですか。でも、全員が前向きな姿勢でいてくれて。結果、日本の拠点はこの2年でものすごく伸びたんですよ。社員も一気に増えて、今では少し手狭なくらいです。

僕はそんな経営陣のことが大好きだし、頼もしいなと思っています。

六本木に拠点を構えるAnyMind Groupの日本法人。2017年4月にはJAFCO Asiaから約13.6億円を資金調達。グローバル展開を加速させ、M&Aも実施した

——AnyMindが大きく事業を拡大できている理由のひとつに強いメンバーが集まっていることがあると思います。ただ、普通にリクルーティングしているだけだと、経営側に回れるような人にはなかなか出会えません。良い人材をうまく引き寄せて仲間にできている秘訣は、どんなところにあるのでしょうか。

十河さん:ひとつは、AnyMindに入ることによって得られるものをきちんと説明することですね。例えば、今いる国のことだけではなく、他のいろいろな拠点のことも知れるし、そこから知見も増えていくよ、とか。

カントリーマネージャーの採用の際は、多くの場合M&Aを使うのですが、僕らと一緒になることによって、グローバル展開ができることをアピールします。アジア圏は、海外進出することに対してすごくワクワクする人が多いんですよね。一緒にアジアで頑張ろうという誘い文句は、シンプルで伝わりやすいですし、うまくいっていると思っています。

——M&Aする会社の経営者のビジョンやイズムは継承されますか?

十河さん:もちろん継承します。M&Aをする前に何度も飲みに行ったりして、人間性や大事にしていること、これからやりたいことをしっかりと擦り合わせるんです。そこをきちんとやっておかないと結局ずれてしまう可能性があるので、ビジョンの共有は大切にしています。

「個人」がブランド化していく時代。ニーズを探り、応え続ける

——これまでも、市場の動向を読み、先手を打って新しいプロダクトを作ってきたと思うのですが、日頃の情報収集はどのようにされていますか。

十河さん:ネット上のメディアから情報を得るのはもちろんですが、気になる会社に関しては、四半期分の決算書を全部読むようにしています。そうすると、どういう事業が最近調子いいのか、どんなビジネスが生まれてきているのかがわかるんですよね。これは、事業の方針を決めるうえでベースになっていると思います。

——各拠点のメンバーと話すことで情報を得たり、新たなプロダクトが生まれたりすることはありますか?

十河さん:それもあります。例えば、「AnyFactory」というものづくりプラットフォームのアイデアは、社員との他愛もない世間話から生まれたんですよね。なので、情報収集は日課にしつつ、社員とコミュニケーションをとることも忘れないようにしています。

——今後、新たに生まれそうなサービスはありますか? クリエイターがブランドを作った後の物流やものづくりのサービスはすでに作られていると思うので、その前の資金調達をサポートする仕組みを構築するとか。

十河さん:ブランドオーナーであるクリエイターが生産のコストを抑えたり、在庫を自動で管理したり、自身で身軽に進められるような仕組みはすでに提供しています。例えば我々のシステムを使ってクリエイター自身で資金を確保できる仕組みを作るのもいいかもしれませんね。

AnyMind Groupでは、クリエイター・メディア・ブランド向けに商品企画・生産からEC展開、マーケ、物流までを一貫支援するプラットフォームを開発・提供している

——クリエイター自身がですか! そうなるとこれから先、個人の力はさらに強くなっていくのでしょうか?

十河さん:個がブランド化していくのは間違いないと思います。それは今後さらに加速していくはずです。そういう意味では、D2Cのような顧客と直接コミュニケーションを取りながら商品の売買をする流れ止まらないと思うんですよね。商品のジャンルもさらに多様化して、今まで以上に多品種・小ロットなラインナップが並んでいくイメージを持っています。

——今後も成長を目指していく中で、これから先、どのようなことに取り組みたいと考えているのでしょうか。

十河さん:僕が最も重視しているのは中長期的に会社を成長させることです。目先の利益だけでなく、本質的な課題解決に向けて、常にアップデートを続けていきたいと考えています。

それに僕は何よりも、問題を放っておくのが嫌いなんです。それを解決したいから会社を経営しているし、新しい事業にも積極的に取り組んでいます。今後も人々のニーズに目を光らせて、この会社は10年後も成長しそうだよねと期待を持ってもらえるようなことをやり続けていきたいと思います。

日本のみならず、世界各地を行き来しながら働いている十河さん。「やると決めたらすぐやってみる」を信条にしている

十河宏輔(そごう・こうすけ)

AnyMind Group共同創業者兼代表取締役CEO。1987年香川県出まれ。2016年AnyMind Group(旧AdAsia Holdings Pte. Ltd.)を創業。横断的なデータ活用を軸に、商品開発、生産、EC構築、物流管理、マーケティングまで、ブランドビジネス全体を一気通貫でDXする事業をアジア13市場17拠点で展開する同社の成長を牽引している。Forbes JAPAN誌「日本の起業家ランキング2022」TOP10、エンデバー・アントレプレナーへの選出など、国内外で複数の表彰歴を持つ。前職の株式会社マイクロアドでは最年少取締役としてアジア全域におけるビジネス拡大に貢献した。

AnyMind GroupのWebサイト:https://anymindgroup.com/
十河さんのTwitter:https://twitter.com/kosuke47

撮影/酒井恭伸
取材・文/村上広大、瀬口あやこ

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