お金の稼ぎ方を学ぶ相手とは?|澤円コラムVol.07
元日本マイクロソフト業務執行役員で「プレゼンの神様」とも呼ばれる澤円さんが、「時間とお金」をテーマにコラムをつづる本連載。今回は、スキルと年収の関係性について。
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みなさんこんにちは、澤円です。
連載第7回目をお届けします。
ネットサーフィンしていると、「プログラミングを学んで年収1,000万円!」みたいな広告って目にしませんか? エンジニアとしてのスキルを付ければ、確かに年収アップが期待できますよね。特にアメリカではエンジニアは花形職業であり、平均年収は楽に1,000万円を超えているようです。
もっとも、この「年収1,000万円」という一つの指標もけっこう突っ込みどころ満載だったりするんですけど、そのことについてはまた別の機会に語ってみたいと思います。
今回は「◯◯を身に着ければ年収アップ」を掲げる広告やサービスには気をつけましょうねって話をしたいと思います。スキルを身に着けることは、ビジネスパーソンとして非常に大事であることは疑問の余地はありません。プログラミングに限らず、なんらかのスキルを身に着けることによって年収をアップすることは、可能です。
ただ、「スキルを身に着ける」と「年収が上がる」の間は、ダイレクトにつながっていません。そして、「スキルを教える」とうたっている学校やサービス提供会社は、年収アップというゴールまでの間に存在するあれやこれやを教えてくれるとは限らないのが現状ではないでしょうか。
というのも、教える側の人たちに年収アップのためのノウハウがあるかどうかが、少々疑わしいからです。ボクが知る限り、「教える側がその道で大成功している」というパターンはあまり多くはないように思います。むしろ、本当に誠意があるところは「年収アップは今後のあなたのがんばり次第」と正直に教えてくれていると思います。スキルを教える人たちは、そのスキルに関してはプロかも知れませんが、高給取りになるための手段を知り尽くしているとは思えないからです。
たとえば、一般的な日本企業であれば、高い給料をもらうためには「長く勤める」という条件がどうしても出てきます。プログラミングスキルを身に着けていることが、中途入社のハンデを埋めて高給が支払われるようになるかというと、これは就職先を相当選ばないといけない気がします。というのも、たいていの事業会社はプログラマを社内に抱えておらず、かつアウトソーシングの仕組みが出来上がっているので必要としてない場合も多いからです。
では、そのアウトソーシング先となるIT企業(いわゆるシステムインテグレーター)では、プログラミングスキルだけですぐに高い給料が支払われることはあり得ません。プロジェクトマネジメントやピープルマネジメントの能力がなければ、いいお給料をもらえることはないでしょう。平均的に給料が高めに設定されている外資系はどうでしょう? おそらく、大手の外資系IT企業の日本法人は、営業所としての役割が大きく、プログラマを含む技術者は本社のある国やインドなどに集中させているパターンが一般的です。日本にも開発者を配置している会社もあると思いますが、そういう人たちは物心ついた時からずっとプログラミングをしていて、かつ英語でしかコミュニケーションできない連中とも共同作業できるような猛者たちなので、ポジションを争うのは相当な覚悟が必要になるでしょう。ということで、単一のスキルを身につけて年収1,000万円をゲットだぜ!というのは少々厳しそうです。
では、どうすればいいか。これはもう、組み合わせしかないんですよね。その組み合わせるピースとしては、プログラミングは最高の選択にはなり得ます。日進月歩で進化していることもあり、スキルの陳腐化が激しい側面があります。裏を返せば、いつ始めてもトップランナーになれる可能性があるスキルなのです。弁護士や医師といったいわゆる「士師業」は、とても長い歴史があり、法律上身に着けるプロセスが厳密に決められています。そのハードルの高さゆえに、高収入が得られるという側面もあります(実態はそうとは限らないそうですけれど)。プログラミングに関してはまだまだ歴史も浅いですし、繰り返しになりますが陳腐化のスピードが異常に速い。なので、身につければ絶対に得します。
あとは、自分の人生経験を振り返ってみて「何か組み合わせられないか?」と考えてみてはいかがでしょうか? 何を選ぶのも自由です。出身地でもいいし、のめり込んでる趣味でもいいし、推してるアイドルでもいいし、とにかく組み合わせられるピースを探しましょう。そうすることで、自分のユニークなポジションを確立できるのです。
高年収は、「高スキル」よりも「希少性」で狙う方が現実的だと思っています。スキルの優劣は、単一ルール上での競争になりやすく、応用が利きにくい。でも、組み合わせで希少性を作り上げれば、競争をしなくて済むわけです。そのうえで、市場のニーズと合わせることができれば、高収入への道が開かれるのではないでしょうか。
そこまで考えて「プログラミングを学んで年収1,000万円」を目指すのは、大いにアリですね。
澤円(さわ まどか)
立教大学経済学部卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得ている。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオなどの出演多数。
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