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「SXSWで感じた“自分のお金”と“他人のお金”の違い」|澤円コラムVol.09

「SXSWで感じた“自分のお金”と“他人のお金”の違い」|澤円コラムVol.09

元日本マイクロソフト業務執行役員で「プレゼンの神様」とも呼ばれる澤円さんが、「時間とお金」をテーマにコラムをつづる本連載。今回は、澤さんがアメリカのとあるイベントに参加して感じた、“自分のお金”と“他人のお金”を使う人の感覚の違いについて。

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みなさんこんにちは、澤円です。
連載第9回目をお届けします。

今ボクはこの原稿をテキサス州オースティンで書いています。「South By South West(通称:SXSW)」というイベントに参加しています。このイベントは、音楽と映像、そしてITの祭典で、街を挙げてのフェスといった様相です。

ボクはサラリーマン時代に、主に所属企業だったマイクロソフトの主催するイベントに参加していて、会場の物理的な様子は結構似ているのですが、中身は全く違っていました。マイクロソフトのイベントはあくまで一企業が主催のもので、会社の宣伝だったりパートナーとのミートアップの場所だったりしました。

そして、基本的にあらゆるものは会社が予算を提供していて、あまりお金を使う機会はありませんでした。出張なので、交通費は会社もち。朝食や昼食は、会社がすべて準備してくれていて、ディナータイムは大体パーティー。イベント中に、超大物アーティストが社員やパートナー企業のためだけにライブをやってくれたりしました(覚えているだけでも、レディ・ガガ、マルーン5、ケイティ・ペリー、ワンリパブリック、ボン・ジョヴィ、ブラック・アイド・ピーズ、アッシャー、ピットブル……素晴らしかったなぁ)。

本当にさまざまなものが「与えられている」状態でした。マイクロソフトという会社は相当儲かっていて、イベントは超大規模かつ派手に行われていました。リーマンショック以降、結構緊縮財政になっていたものの、それでもやっぱり派手&大規模でした。アメリカ国内の様々な都市で毎年イベントが行われていて、ボクが辞めるまでの2、3年はラスベガスだった記憶があります。夜な夜なカジノで遊んでいる社員の多かったこと!

こんな環境にいると、はっきりいって脳みそがバグります。油断をすれば、こういう状態が当たり前になってしまい、金銭感覚もおかしくなります。マイクロソフトのような巨大企業に限らず、会社のお金を使えるというのは、脳をバグらせる効果があります。会社というものは、そこそこ経営ができていれば社員がお金をいろんな形で使うことができ、その金額は個人の給料では賄えないようなものだったりします。

今はどこの企業もかなり絞ってはいると思うのですが、多くの日本企業でも役員の出張はビジネスクラスで行けるでしょう。コロナ禍になってからはだいぶん減ったとは思いますが、その前までは「接待」という名のもとに、会社の金で夜の街に繰り出す人たちも多かったのではないでしょうか。

ボクのかみさんは子供の頃、父親の仕事の関係で3年ほどブラジル暮らしていました。その時は、往復ビジネスクラスだったそうです。小学生の子供が、社員の家族だというだけでビジネスクラスに乗れていたんですね〜〜。そしてかみさんは、社会人になって「ビジネスクラスは自分の給料では乗れないもの」と思い知ったそうです。そりゃそうだ。会社の金で何かをさせてもらえるのって、感覚をバグらせる効果がテキメンなんですよね。

ボクは、サラリーマン時代からなんとなく会社の金を使って何かをするのが好きではなくて、できる限り自腹で過ごすようにしていました。自分が稼いだお金以外のもので何かをするのが、どうしてもしっくりこなかったんですよね。

別にその方が正しいとか、そうすべきだとかそんなこと言うつもりはありません。ボクはそうしたかった、というだけです。ただ、そのおかげで独立した時に苦労しなくて済みました。自分の持っている予算でできることをする、という感覚が身についていたからです。

今回のSXSWでは、すべてボクが自分の稼ぎ「だけ」ですべての支出をカバーしています。あくまで自分のお金だけを使っているので、実に気分がいい。

そして、SXSWという場も、本当に素敵。

マイクロソフトのイベントも素晴らしかったのですが、SXSWはまさに「個の集合」で出来上がっているイベントで、なんの制約も思惑もなく自由奔放なイメージです。もちろん、SXSWに会社の仕事で来ている人も多くいるのでしょうけれど、コンテンツは特定の商材に偏っているわけでもなく、むしろイベント全体が「表現の場」になっているイメージ。

今日は会場内で開かれていた「Flatstock」という、アートの市場のような場所に行ったのですが、個人が自分の作品を並べて売っていて、フリーマーケット的なゆるさで楽しかったです。

この「個人で何かをする」というのが、Web3時代には最も重要なマインドセットだと考えています。組織の中で生きることに慣れすぎてしまうのは、Web3時代にはリスクになるかもしれません。
「そんなこと言っても、日本企業は給料が上がらないんだよ!」と嘆く人もいるでしょう。そんな人こそ、「個として何が出来るか」を考えた方が、いろんなチャンスが目の前に見えてくるかもしれません。与えられるもので満足するのではなく、自分で何かすることでお金が得られたら素敵だと思いませんか?

シリコンバレーに「視察」と称して企業の役員クラスが訪問するツアーのようなものがありますが、現地企業からの評判はすこぶる悪いそうです。というのも、そういう人たちは「何かを与えてもらえる」というマインドセットが強いからです。

「え? 最新のテクノロジーを教えてくれるんでしょ?」という姿勢で来られると、現地のビジネスパーソンからすれば「なんであんたたちに教えてやらにゃならんねん」ということになります。

これは、飛行機代も現地での食事代もすべて会社持ちで、どうしても「元を取らないと気が済まない」という気持ちになりにくく、修学旅行的な姿勢で臨みがちなようですね。こんな方々も、定年退職などすればそんな機会を与えられるわけもありません。そして、シリコンバレーという素晴らしい場所への訪問が、人生の貯金として活かせない結果になるように思います。

定年退職というキーワードが出たところで、ちょっと思い出したことが……。鉄道係員への暴力行為は60代以上が最多というデータがあります(「鉄道係員への暴力行為、2021年度は前年比29件増の406件発生」参照)。

これは完全な邪推ですが、会社員時代に肩書によってさまざまな恩恵を受けていた人が、リタイア後にストレスを溜めて暴力を振るっているのだとしたら、本当に悲しいことですよね。

足るを知る、もしくは自分の稼ぐ力をアップしておく……こんなマインドセットがより一層大事になる時代なのかもしれません。

澤円(さわ まどか)

株式会社圓窓 代表取締役、元・日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 専任教員。
 
立教大学経済学部卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得ている。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオなどの出演多数。

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