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保証サービスprotegerの社長・野尻航太を直撃!「ECに延長保証って本当に必要ですか? 入らないと損ですか?」

保証サービスprotegerの社長・野尻航太を直撃!「ECに延長保証って本当に必要ですか? 入らないと損ですか?」

2021年にリリースされた“安心して買える保証サービス”の「proteger(プロテジャー)」。ECサイトでモノを買う際、保証料を払うと保証期間が延長され、不具合が起きたら無償で交換や修理を受けられるサービスです。そんな革新的なprotegerを提供する、Kivaの代表取締役・野尻航太さんを直撃! なぜ延長保証は必要なのか、事業者と消費者それぞれのメリットについてなど、素朴な疑問に答えていただきました。

日本初! ECサイトを中心に交換・修理に対応する延長保証サービス

事業者と購入者の両方にメリットをもたらすという、延長保証サービス「proteger」。その必要性をKivaの代表取締役・野尻航太さんに伺います!
おかねチップス編集部
Kivaさんが開発・運営している「proteger(プロテジャー)」って、どういうサービスなのでしょうか?
野尻
さん
protegerは、ECサイトを中心に最短即日で延長保証を提供するサービスです。ユーザーがECサイトなどで商品を購入するとき、保証料を支払ってprotegerに加入すれば、商品が破損してしまった場合、交換や修理などのサービスを無料で受けられるというメリットがあります。
おかねチップス編集部
家電などを買うと「1年間無料保証」などがついているにも関わらず、あえてお金を払って、保証期間を延長するということですか? それってお金がもったいない気がするんですけど……。
野尻
さん
家電などには通常1年の「メーカー保証」がついていますが、保証期間が切れたあと、突然電源が入らないといった不具合が起こることもあります。そんなとき、protegerに加入していれば、修理や交換のサービスが受けられる。買い換えるより、コストも労力も少なく済むはずです。
おかねチップス編集部
「メーカー保証だけだと期間が短くて不安」という方に最適ですね。
では、事業者側がprotegerを導入するメリットって何ですか?
野尻
さん
アフターサービスとして延長保証を導入したいという事業者は多い一方で、保険会社への審査やECサイトへの組み込み作業、お客さまとのやりとりや謝罪など、導入においてさまざまなハードルがあるんです。

それらすべてのハードルを越えられるのがprotegerの強みですね。私たちは気軽に保証サービスを利用して欲しいという思いから、管理・運⽤、申請⼿続きなどができる「組み込み型保証システム」を開発このシステムを提供している企業は、Kivaが日本初だと思います!  
2022年12月、kivaは「組み込み型保証システム」の特許を取得した
おかねチップス編集部
おお! ではprotegerが対応している商品にはどんなものがあるんですか?
野尻
さん
電子機器、家電製品、スポーツ・フィットネス用品、自動車部品、家具、宝石・時計、楽器、バッグ、メガネなど、約5万点(提供保証数)を取り扱っています。食品と化粧品、洋服は、現状取り扱っていません。
おかねチップス編集部
幅広い商品に対応されてるんですね! 特にどんな商品の需要が高いんでしょうか?
野尻
さん
需要が多いのは、家電や家具、時計ですね。使用頻度が高く多機能なものほど、必然的に故障率が上がるので、protegerの需要が高まる傾向にあります。
おかねチップス編集部
たしかに。最近、大枚をはたいて買った洗濯機が3年で壊れてしまって。メーカー保証が切れていたので、買い替えました……。修理はいくらかかるかわからないし、面倒臭くて。
野尻
さん
私自身もそういう経験があるのでわかります。以前、アウトレットで定価12万円のバッグを3万5千円で買い、ラッキー!と思ってたんです。でもその後、取手が壊れてしまい、修理屋さんに持って行ったら、「3万円です」って言われて。「アウトレットで新たなバッグが買えるじゃん」ってショックでした(苦笑)。

こんな感じで一度痛い思いしたことある人や突発的な修理費の発生を防ぎたい人、愛着のあるものを長く使い続けたい人に延長保証サービスを利用していただいています。
おかねチップス編集部
protegerでは交換や修理を行っているんですよね。交換や修理って、どういった場合に対応してくれるんですか? ワイヤレスイヤホンをうっかり水没させちゃったとかは!?
野尻
さん
それはさすがに対応できかねます! 破損や落下、水濡れなど、突発的なアクシデントによる故障を「物損」というのですが、protegerでは主に物損を除く、自然故障や不具合に対応しています。

ただ、高級家具などの場合は、物損にも対応。たとえば、ソファの張り地(生地)は、破損は一部でもすべて張り替えになるケースが多く、商品代金の3分の1もの費用がかかってしまうので。
おかねチップス編集部
へ〜! ところで、保証と保険ってどう違うんでしょうか?
野尻
さん
保証は自然故障や不具合に対応、保険はアクシデントによる物損に対応しています。ケースバイケースですが、保証はモノで、保険はお金で対応することが多いですね。
おかねチップス編集部
なるほど。保証料はどのように決めているんですか?
野尻
さん
保証料は「損保ジャパン」さまなどと連携して算出し、最適な価格にしています。大まかに言うと、保証期間が1年だと商品代金の10%、2年は10%台後半、3年は20%超という感じです。ただ、商品の耐用年数、修理・交換が両方可能かどうかなどによっても保証料は変わります。
おかねチップス編集部
ではその保証の中で、Kivaさんの利益はどのくらいなんですか?
野尻
さん
お客さまからいただいた保証料から、修理・交換にかかるコストを差し引いた金額が利益となります。すごくシンプルなビジネスモデルです。
おかねチップス編集部
なるほど。商品のジャンルが多岐に渡りますが、どうやって修理に対応されているんでしょうか? 自社で行っていたり?
野尻
さん
全国に約400拠点を持つ修理事業者さまと提携しているため、さまざまな商品の出張修理や宅配修理が可能です。
「protegerでは修理事業者さまと提携することで、迅速な修理対応を実現させています」と野尻さん

24時間対応、保証書を電子化。proteger導入後の商品購入率は1.4倍に

おかねチップス編集部
実際にどういった会社がprotegerを導入しているのでしょうか?
野尻
さん
たとえば、PCショップを展開する「アプライド」さま、老舗アウトドアブランドの「ogawa」さま、総合バッグメーカーの「エース」さまにprotegerを導入いただいています。

また、低音調理器の「BONIQ(ボニーク)」で知られる「葉山社中」さまなど、延長保証やカスタマーサポートに十分なコストを割けないスタートアップからの導入も増えています。もともとは中小企業からの需要が高いと予想してprotegerをリリースしたのですが、想像以上に上場企業からの需要も高いことに驚きました。
おかねチップス編集部
なぜ企業からの需要が多いんでしょうか?
野尻
さん
通常、エンドユーザーから保証料を受け取って保証期間を延ばすことは、保険会社と提携している会社しかできません。元々1年の保証期間を無償で2年に延ばすことを検討するメーカーもありますが、エンドユーザーはもっと長い期間を求めている。2年以上となるとコスト的に難しいため、protegerの導入に至るという感じです。
私たちKivaは「損保ジャパン」と提携し、さまざまな事業者と契約することでリスク分散ができるので、安定的な経営とサービスの提供ができるのです。
おかねチップス編集部
なるほど。
野尻
さん
また、保証料は、Kivaと事業者と分配する「レベニューシェア」をしています。実は、世界最大と言われるアメリカの家電量販店「Best Buy」は、年間収益の約2% を延長保証の販売から得ており、それが利益の半分以上を生み出しています。2021年、Apple Careの売上は全世界で1兆円超ということを踏まえると、その利益の大きさが想像できますよね。今後、日本においても、保証料のレベニューシェアが企業利益の下支えになると考えています。
おかねチップス編集部
ほほう。でも、事業者としては延長保証サービスを導入せず、商品が壊れたら新品を買ってもらう方が利益が上がっていいんじゃないですか?
野尻
さん
私は、利益よりもユーザーファーストであるべきだと思います。エンドユーザーからしたら、壊れて買い換えが発生するブランドに良い印象は抱かないですよね。一方で延長保証サービスに入って、良質なアフターサービスを受けられれば、ブランドに好印象を抱くことが多い。実際、protegerを導入後、平均CVR(商品購入率)は1.4倍に上昇しています。
野尻さんは「アフターサービスが充実している企業は、エンドユーザーからも愛される傾向にあります」と語る
おかねチップス編集部
すごい!
野尻
さん
ある調査によると、延長保証非加入者に比べ、加入者はリピーター率が約2倍。今使っている製品・ブランドを再選択する傾向が強く、販売店にとっては顧客の囲い込みに役立つと言われています。競争が激化するECサイトにおいて、新規顧客の獲得は難しく、一度顧客になった人を離脱させないことは大きな課題。protegerはその課題の解決に役立つと思っています。
おかねチップス編集部
アフターサービスが手厚い製品やブランドのファンになっちゃう気持ちはわかります。
野尻
さん
他にもエンドユーザーの購買率を高める秘密があります。それは、紙の保証書が不要なこと。
おかねチップス編集部
あ、あのいざというときに見つからないやつ……! 保証書がないと修理や交換が受けられないから焦りますし、結局諦めて買い替えたりするんですよね。
野尻
さん
ですよね。protegerはすべてネット上で管理を行い、保証書も電子化。商品が破損した場合は、24時間対応のチャットボットから保証申請を行うだけでOKなんです。3分ほどで申請が完了したら、翌営業日にカスタマーサポートが対応し、壊れた商品の返送をしていただくという流れです。
保証申請フローをネット上で行うことで、スピーディーな対応が可能に
おかねチップス編集部
protegerは保証対応の商品が多岐に渡るため、カスタマーセンターの対応も大変ではないですか?
野尻
さん
保証の申請は電話やメールでも可能なんですが、現状9割は、チャットボットをご利用いただいています。ただ、protegerのシェアが伸びていくにつれ、カスタマーセンターの比重が大きくなると予想されるので、KIvaが得意とするテクノロジーによって最適化や効率化を進めていきます。
おかねチップス編集部
とはいえ、メーカー保証の期間を過ぎたら、問い合わせ先がメーカーからKivaにいきなり切り替わることにちょっと戸惑いそうなんですが……。
野尻
さん
そうならないよう、延長保証の加入日と開始日、延長保証の終了日に、お客さまにはメールでご案内をしております!
おかねチップス編集部
それなら安心ですね!
野尻さんって、これまでにたくさんの保証を行ってきましたよね。ということは、壊れにくい製品やメーカーを知り尽くしているわけですよね(ニヤリ)。それを教えていただくことは……?
野尻
さん
それはちょっとできません(笑)。
私たちKIvaには、保険会社を凌駕するほどの故障データが蓄積しています。一般的にメーカーは1年間の耐久テストを行いますが、実際の利用ケースとなる3年や5年以上テストを行うことはほぼありません。その点、protegerを導入すると、故障した製品名や保証事由などが管理画面にデータ化されていきます。たとえば、「3年目以降はここのボタンが壊れやすい」とデータが得られたら、商品開発・改善などに活用できるわけです。これはprotegerならではの価値であり財産だと思っています。

延長保証でサステナブル社会を実現したい

おかねチップス編集部
野尻さんのお話から、ECサイトでの延長保証サービスの必要性がとてもよくわかりました。でもなぜ今までEC業界には延長保証サービスがなかったんですか?
野尻
さん
住宅設備機器や車などの分野で普及するなか、延長保証サービスがECサイトになかったのは、業務負荷やコストが大きかったからですね。以前は、膨大な商品管理や受注管理などを手作業で行っていました。それが、異なるアプリケーションやソフトウェアの機能をつなぐAPIによって、クラウド運用を自動化でき、手間もコストも大幅に削減。protegerは、ECサイトに簡単に組み込めることからシェアが拡大しています。
おかねチップス編集部
野尻さんは、protegerのビジネスモデルにどのような勝算があると考えていたんですか?
野尻
さん
買い手と売り手、そして社会にとっていい、嘘偽りのない「三方よし」のビジネスだと自信を持って言えるところですね。エンドユーザーはわずかな保証料で交換・修理を無償で受けられる。事業者は保証料のレベニューシェアがあり、交換・修理の債務リスクがかからない。
そして、モノを修理して長く使うことでごみを減らし、資源の有効利用にもなるので、サステナブル社会の実現の一助となれます。
おかねチップス編集部
protegerの利用が広まれば、モノの故障で嫌な思いをする人が減りそうですね。
野尻
さん
そうですね。モノが壊れるという不満が溜まる体験を、なるべくポジティブなものに変換したいと思っています。延長保証によって良い体験ができたら、エンドユーザーはブランドから離反しないはずなので。

また、エンドユーザーと長期的に接点を持てるという利点を生かし、延長保証が終了するタイミングで新商品の宣伝をすることも考えています。
おかねチップス編集部
延長保証のその先の展開までお考えなんですね。
野尻
さん
はい。Kivaには「後世に語り継がれるコングロマリットカンパニーを作る」というビジョンがあるんです。300年後まで続くような、複合的な巨大企業を作りたいと考えています。理想は、上場して新規事業を立ち上げ、事業や企業の買収を行い、ゆくゆくはファンドマネージャーになること。ソフトバンクのビジョン・ファンドのように大規模な投資運用をしたい。これは創業時から語っていることなんです。
おかねチップス編集部
これからの活躍が益々楽しみです。今後目論んでいることはありますか?
野尻
さん
時間はかかるかもしれませんが、大手ECモールへのproteger導入を目指して、実績を重ねていきたいですね。

また、ECサイトだけでなく、リアル店舗へのproteger導入も始めたので、こちらの普及にも努めていきたいです。延長保証サービスを通して、大切なものをより長く使える社会を実現したいと思っています。
野尻さんは、延長サービスの先にある新たな未来を見つめている

野尻航太(のじり・こうた)

株式会社Kiva 代表取締役
 
大学在学中、営業代理店である合同会社Puenteeを設立。2019年、ウリドキ株式会社にて、EC事業を立ち上げ、別会社に事業売却を経験。2020年12月、株式会社Kivaを取締役・磯崎裕太と共同創業。2021年5月、安心して買える保証サービス「proteger」をリリース。

撮影/武石早代 
取材/おかねチップス編集部
文/川端美穂

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