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株式会社OKAN社長・沢木恵太が見つめる、事業成長のその先

株式会社OKAN社長・沢木恵太が見つめる、事業成長のその先

「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッション・ステートメントに掲げる株式会社OKAN。1品100円からこだわりのお惣菜が食べられる法人向け置き型社食サービス「オフィスおかん」や、個人向け宅食サービス「おかずストック」など、働く人の健康にフォーカスしたサービスは、大きな話題を呼んできました。そして2021年には、従業員アンケートとレポートによって組織の課題を数値化する組織課題解決サービス「ハタラクカルテ」をリリースするなど、新たな領域へのチャレンジも。時代や企業課題に合わせて進化を続けるOKAN。代表取締役CEOの沢木恵太さんに“これまで”と“これから”について聞きました。

チャレンジを続けてきた10年

——2012年のOKAN創業から数えて10年の節目ということで、いろいろな出来事があったかと思います。あらためてこの10年を振り返ってみていかがですか?

沢木さん:振り返るきっかけにはなると思いますが、10年経ったから感慨深いかと聞かれるとそういう感覚はあまりないんですよね。それよりも会社として何を成し遂げたのかのほうが重要なので。とはいえ、この10年は長いようであっという間でした。

——スピード感を持って仕事をしていると目まぐるしく日々が過ぎていくので、あっという間に感じるのかもしれませんね。

沢木さん:そうですね。同時期に創業している起業家たちのことを考えると、うまく軌道に乗って上場を果たした人がいる一方で、残念ながら道半ばで挫折してしまった人もいるんですよ。そういう意味では、10年間にわたってチャレンジできているのはとてもありがたいことだなと思います。

コンサルティング企業やソーシャルゲーム開発企業を経て、株式会社OKANを起業した沢木さん

——ここ2年は新型コロナウイルスの影響が大きかったのではないでしょうか?

沢木さん:緊急事態宣言で出社自体が制限される中、オフィス向けのサービスを提供している我々のような企業は存続の危機に立たされてもおかしくなかったですね。私自身、ヤバいと思いましたし(笑)。

ただ、蓋を開けてみると、一時的な足踏みはあったものの今も会社は成長を続けられていますし、外的要因によって経営状況が変化したときに何を重視すべきか、何が本当の価値なのかを考えるすごく良いきっかけになった気がします。

——「オフィスおかん」を始めた時点で、沢木さんは食品関係の仕事に就いた経験はなかったわけですよね。不安はありませんでしたか?

沢木さん:正直、このビジネスは利益率は確保しづらいだろうなと思いました。しかし、それはビジネスモデルを工夫することで解決できるだろうなと。そもそも、日本は人口減少によって労働力が足りなくなりますし、共働き世帯も増えています。だから、仕事と家事を両立する難易度が上がっているわけです。その課題に向き合い、きちんとオペレーションを確立させることができれば、ビジネスとして成立できる確信がありました。

OKANの主力事業でもある「オフィスおかん」は100円からお惣菜を購入できるサービス。2022年の時点で3000拠点の導入実績がある

——在庫を持つリスクがない事業に取り組む選択肢もあったかと思うのですが、なぜ社食だったのでしょうか?

沢木さん:事業を決めるときのアプローチ方法は2つあると思うんですね。

1つは個人のリテラシーに左右されずに価値を感じられるか。to Bにしろ、to Cにしろ、サービスを導入する際にハードルになるのがリテラシーです。あるビジネスツールがあったとして、使いこなせる人と使いこなせない人がいるようでは事業を拡大させることは難しいですよね。

その点、食のニーズはリテラシーに左右されにくいじゃないですか。我々が生物である以上、食事は毎日するわけですから。企業側としても導入した際のイメージが湧きやすいし、エンドユーザーとしても導入されたときに喜んで使える。だから、在庫を抱えるリスクを考慮しても、事業を拡大させるチャンスがあると思いました。

もう1つは、私自身の原体験。過去に食生活の悪化によって体調を崩したことがあったんですね。だから、単純に自分がほしいサービスだなと(笑)。

とにかくやってみることで、道は拓ける

——とはいえ、食のビジネスはライバルも多いですよね。

沢木さん:そうですね。レストランも、コンビニも、出前も、あと仕出し屋もライバルになります。ですが、特に都心では「ランチ難民」なんていう言葉に象徴されるように、飲食店がたくさんあっても行列ができている場合には気軽に昼食にありつけるとは限りません。コンビニではレジ待ちの長蛇の列ができている。また、地方は地方でコンビニが周りにないケースも多々あります。

それに毎日同じ食事を摂る人って少ないですよね。だいたい数通りの選択肢から何を食べるか選ぶはず。ニーズに食い込む余地はいくらでもあるんですよ。だから、バッティングによって事業が失敗することはあまり考えませんでした。

しかも「オフィスおかん」は、1品100円からのおかずをオフィスというラストワンマイルの場所に置ける強さがあります。健康面での訴求もしていたので、選ばれる理由もそれなりにあったと思います。

——食品は賞味期限がありますが、在庫管理の見通しに苦労されることはありませんでしたか?

沢木さん:会員制サービスということもあり、過剰な在庫を持つことはほとんどありませんでした。導入企業が抱えている従業員数以上の数が売れるわけではないので。ということは、最初の導入数を調整すれば、本当に限られた在庫だけで始められる。しかも、特殊な加工によって取引先で1カ月程度日持ちが可能になることを前提にすると、売れ残ることもそこまでなく、そう簡単にはロスにならないんです。ですので、そこにもあまりハードルは感じませんでした。

ビジネスモデルをリサーチするのが大好きだという沢木さん。「オフィスおかん」のアイデアもさまざまな事例を見ているなかで思いついたとか

——知見がないジャンルのなかで道を切り拓いていくためのコツはなんだと思いますか?

沢木さん:とにかくやってみる、これに尽きると思います。私自身、先輩経営者から「組織の課題」に関する忠告を度々いただいて備えていたつもりでしたが、最終的には先人と同じ経験をすることになりました。結局のところ、実際に対峙してみないと課題に対する向き合い方はわからないですし、会社によって解決方法も異なるんですよね。

だから、まずは腹を括ってやってみて、課題に直面した際はいかにスピーディーに乗り越えるか考えることにフォーカスしたほうがいいと思います。私たちの会社も完璧ではないので、これから多くの課題と向き合うことになると思います。その際には、自分で勉強したり、社員に問いかけてみたり、外部にアドバイスを求めたりして、泥臭く解決していこうと考えています。

「意義」と「大義」にこだわりたい

——現在、OKANは「オフィスおかん」や「おかずストック」だけでなく、組織課題解決サービスの「ハタラクカルテ」を提供するなど、サービスの多角化が進んでいますよね。沢木さんはどういったところに原動力を置いてビジネスを動かしているのでしょうか?

沢木さん:昨今は「パーパス経営」というものが流行っているので、もしかしたらそこに乗っかっているように思われるかもしれないのですが、そもそも私は意義と大義を気にするタイプなんですね。会社を経営するうえでも「意義のないリスクを取るんだったらやらなくていい」と思っています。行動を起こすときには絶対に意義を持ちたいし、意義がないなら付けたいし、意義を付けたら良い意味で依存したい。すべて意義から考えたいめんどくさい人間なんです(笑)。

ビジネスとして「オフィスおかん」を始めるときにも、自分は本当に惣菜をやりたいのかと自問自答しました。そのときは、OKANのビジョンに掲げている「働く人のライフスタイルを豊かにする」という大義からブレていないという結論に至ったので挑戦してみることにしたのですが、その考えは今でも変わっていません。

採用でも意義と大義の話をしているので、入社してくれるメンバーもそういう心持ちでいると思います。だから、惣菜ばかりに特化して事業展開していくほうが、「おや、なんか違くない?」みたいな話になってくるんですよね。

「働く人のライフスタイルを豊かにする」をビジョンに掲げるOKAN。その理念に共感して集ってくるメンバーも多いという

——沢木さんの掲げる意義と大義からしてみれば、食から離れた事業が生まれるのも必然だと。

沢木さん:そうですね。食の領域にせよ、組織サーベイ(※状態把握のための調査)の領域にせよ、それとは違う第3の領域にせよ、意義と大義が会社のビジョンと一致しているのであればむしろやるべきだと考えています。

——少し意地悪な質問かもしれないですが、人は月日を経るなかでどんどん変わっていきますよね。もしかしたら10年前にたてた会社のビジョンと個人の考えが合わなくなることもあると思います。沢木さん自身はそういう変化はありませんか?

沢木さん:結論から言うと、私の考えは10年前と変わっていないんですよ。ただ、変わる可能性は十分にあります。そうなったら、私は会社を辞めるでしょうね。

株式会社って大航海時代のヨーロッパで生まれたもので、航海前に軍資金を集めて、航海後に得られたものを分配するための仕組みなんですよ。つまり、目的ありきなわけです。だから、合理的な理由があるのならば良いですが、創業者のエゴで組織の存在理由をすげ替えるのは良くないなと。

メンバーも会社のビジョンやミッションに共感してコミットしているので、経営者から「ちょっと考え方が変わったのでビジョンを変えますね」なんて言われても、「じゃあ、お前が辞めて違う会社を作れよ」と考えるはずそのあたりのことはドライに捉えるタイプなので、もし考えが変わることがあれば、私が会社を去ります

世界で最も大変な国だからこそ、できるサービス展開を

——先ほどパーパスの話がありましたが、現在は社会貢献の視点が企業にも求められています。沢木さんはOKANを通じてどのような社会還元ができると考えていますか?

沢木さん:それで言うと、OKANは社会課題を解決したいという想いから始まった会社でもあるんです。そもそも日本は、世界で最も大変な国だと思っていて。高齢化や人口減少による国力の低下を先進国のなかで真っ先に経験することになるので。これって言い換えると、これからの日本の取り組みが世界のモデルケースになっていくという意味もあるんですよね。

「高齢化や人口減少という課題があるなかで、いかにサステナブルに働き続けられるかを考えていきたい」と沢木さん

——日本が失敗すると他国も困るわけですね。

沢木さん:そういう状況において、私たちのサービスは社会インフラに近い存在になれると考えています。社会保障は国民が税金を負担することで均一化を実現させているわけですが、その仕組みを事業として実現できないかと考えた末に生まれたのが「オフィスおかん」です。

BtoCサービスは良いものを作れば作るほど、利益を出すために対価をきちんといただく必要が生じるので、エンドユーザー側の費用負担が上がってしまうんですね。でも、私はお金を持っている人にしか使えないサービスにはしたくありませんでした。

そこで企業に費用を一部負担してもらうBtoBtoCの形を取ることで、エンドユーザーの費用負担を限りなく抑え、経済的余力の差分に影響されない状態を実現しました。そういうサービスを今後も増やしていきたいと考えています。

一方で、我々だけが頑張ったところで、社会は簡単に変わらないという想いもあって。

「OKANで数十億、数百億というラインで売上を作ることで、大手企業が参入しやすい市場を形成していきたい」と沢木さんは語る

——それでも活動しているのはなぜなのでしょうか?

沢木さん:私たちのようなスタートアップがおもしろいビジネスモデルを作り、利益が発生し、市場としての価値が高まれば、多くの企業が参入してくるはず。そうすれば、多種多様なサービスが生まれ、働く人が抱える問題をカバーできる網羅性も高まっていくと思うんです。

その実現のスピードは、我々の知名度や信頼度を上げていくことで、より加速できるでしょう。そのためにも、まずはミールサポートの領域でそれなりの規模の旗を立てなければいけません。それが実現した後には、食という1本の矢だけではなく、2本目の矢、3本目の矢も確立させて企業としての注目度を上げていく。それを目指して、これからも走っていきたいと思います。

沢木恵太(さわき・けいた)

株式会社OKAN代表取締役CEO
大学卒業後、フランチャイズのコンサルティング会社に入社。ソーシャルゲーム開発企業・教育系ベンチャーを経て、2012年に株式会社CHISAN(現株式会社OKAN)を設立。OKANでは、ぷち社食サービス「オフィスおかん」、ハイジーンファクターに特化した調査・改善サービス『ハタラクカルテ』をはじめとしたサービスで「働く人のライフスタイルを豊かにする」の実現を目指す。

撮影/武石早苗
取材/村上広大
文/瀬口あやこ(アニィ)


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