「新たな職」が未来を創る。KDDIの舘林俊平が注目する、クリエイターエコノミー スタートアップ5社
各業界に特化したキャピタリストから、日本と世界を代表する100社のユニコーン企業になり得る注目のスタートアップを先取りでピックアップする本企画。今回ご登場いただくのは、KDDI株式会社 事業創造本部 BI推進部 部長の舘林俊平さん。CVC※のKDDI Open Innovation Fundで大企業とスタートアップの共同事業を手がけ、現在もスタートアップとの協業及びM&Aによって、新規事業を矢継ぎ早に立ち上げ持続的な成長を実現させています。
そんな舘林さんが今、注目しているのが、「クリエイターエコノミー」領域のスタートアップ。この先、ますますこの領域が伸びていくという舘林さんに、その理由はもちろん、クリエイターエコノミー領域で注目のスタートアップ5社を選出していただきました。
※コーポレート・ベンチャー・キャピタルの略。事業会社が自己資金でファンドを組成し、主に未上場企業に出資や支援を行う。
大企業だからこそ、スタートアップファースト
その点、スタートアップはその分野にフルベットしているから知識も技術力も長けているし、スピード感も比べものになりません。私たちのような企業が新規事業を推し進めるには、スタートアップの力がなくてはならないんです。そういうリスペクトが社内に根付いているので、協業が成功してM&Aしたとしても、スタートアップの文化はきちんと継承しています。
M&Aしたスタートアップと融合して新たな事業ドメインを担ったり、私たちの経営資源を使って成長してからIPOを目指したりしているので、スタートアップにとっては出口の選択肢が増えていると思います。
KDDIの舘林俊平さんが選出。クリエイターエコノミー領域で注目のスタートアップ5社
クリエイターエコノミーがさらに発展し、今まで仕事にならなかったようなものがお金を生み出していくという舘林さん。ここからは、クリエイターエコノミー領域のスタートアップ5社をそのポイントとともにお聞きします。
ゲーム×ライブ配信「ライブゲーミング」|株式会社ミラティブ
スマホゲーム配信者数日本一のゲーム配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」を運営する株式会社ミラティブ。2022年に本格始動したのが、ゲームとライブ配信が融合したライブゲーミング事業。視聴者は従来のライブ配信のようにコメントやギフトアイテムを贈れるのはもちろん、実際に配信者と一緒にゲームをする「参加型ライブゲーム」や、ギフトアイテムを通じてゲームに対して影響を与える「介入型ライブゲーム」など、これまでのゲームやライブ配信とは全く違った体験を「Mirrativ」内で楽しめる。
“好き”を応援できる次世代クレジットカード「Nudge」|ナッジ株式会社
「ひとりひとりのアクションで、未来の金融体験を創る」をミッションに、チャレンジャーバンク事業を通じて、日本におけるフィナンシャルインクルージョン(金融包摂)を実現していくナッジ株式会社。いつもの買い物に使うだけで、好きなスポーツチームやスポーツ選手、アーティスト、地方自治体の応援につながるクレジットカード「Nudge」を提供する。応援先から、Nudgeカードだけの特典をもらうこともできるのも魅力的。
さらに、「Nudge」カードは小規模のコミュニティからでも発行できるのも特徴的。コミュニティがファンにカードの存在を広げてくれるから、同社からのプロモーションは不要。私たちKDDIもクレカ事業を行っていますが、そもそもの文化が違うところにも魅力を感じています。
Web3時代のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」|株式会社Gaudiy
株式会社Gaudiy は2018年の創業以来、ブロックチェーンを中心とする先進技術を活用したコミュニティサービスを展開。これまでにソニー・ミュージックエンタテインメント、集英社、バンダイナムコエンターテインメントなど、大手エンタメ企業にサービスの提供を行っている。ファンの熱量を最大化するWeb3時代のファンプラットフォームとして開発したのが、「Gaudiy Fanlink」。IP(知的財産コンテンツ)独自のコミュニティシステムの提供を通じて、ファンの横断的な活動データを記録・蓄積。ファンの貢献や熱量が正しく評価され、還元されるエコシステムを構築している。
“好き”が仕事になるECプラットフォーム「MOSH」|MOSH株式会社
ネットでいろいろなサービスを簡単に販売できるストアフロント型※サービスECプラットフォーム「MOSH」。ホームページや予約、決済、月額サブスクリプション、回数券、クーポンといった機能をスマホ一つで簡単に作ることができるうえ、顧客管理やデジタルコンテンツの販売なども行える。5万人以上のクリエイターが「MOSH」でサービスを展開し、サービスの取引件数は累計40万件を突破している。
※ユーザーが自分の販売サイトをそのwebサイトに設けることができるWEBサイトのこと。
世界のアニメファンを唸らせるスーパーアプリを開発|株式会社any style
「好きが加速する体験を創る」をビジョンに、2019年に創業したエンタメ領域のスタートアップ・株式会社any style。好きな声優にサブスクリプション課金すると、テキストや画像、音声、動画などが届く一対一感覚のメッセージアプリ「dear.」や、キャラクターと話せるリアルチャットアプリ「my dear.」などを提供している。
そこでany styleでは今や世界的に人気の声優に着目。これまでになかなか声優をコンテンツにしたビジネスモデルが登場していなかっただけに、any styleが世界へと羽ばたいていくことを期待しています。
クリエイターエコノミー領域のスタートアップは、これからどうなる?
そしてこれはクリエイターエコノミーに限らずですが、スタートアップ単独でグローバル進出する方法のほかに、例えば、最近だと「PaidyとPayPal」のように、大企業とのM&Aを通じてグローバル進出を進めることも、ユニコーンになるための一つの道だと考えています。
M&Aによって起業家のビジョンを実現する事例は、今後日本からも続々と増えていくのではないでしょうか。
舘林俊平(たてばやし・しゅんペい)
2006年にKDDI株式会社入社し、移動体通信事業のネットワーク設計を担当する。2012年より、ベンチャー支援プログラムKDDI∞Laboやベンチャー投資ファンドKDDI Open Innovation Fundに関わり、主にモバイルゲーム領域のベンチャー企業への出資やゲームパブリッシングでの共同事業を手がける。2017年からグループリーダーとして、テーマパークやスポーツ、エンタメ、XR領域でのアライアンスや新規事業を担当。2021年からビジネス開発部 副部長としてモビリティ領域でのJV設立などを推進。2022年4月より現職。
撮影/武石早代
取材・文/おかねチップス編集部
知識を皆に
シェアしよう!
「新たな職」が未来を創る。KDDIの舘林俊平が注目する、クリエイターエコノミー スタートアップ5社
この記事のシェアをする