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hacomono社長 蓮田健一の唯一無二のキャリアパス。父親の会社の立て直しから日本を代表するSaaS企業へ

hacomono社長 蓮田健一の唯一無二のキャリアパス。父親の会社の立て直しから日本を代表するSaaS企業へ

ウェルネス業界向けの会員管理・予約・決済システムを提供し、業界DXのパイオニアとして注目を集めている、株式会社hacomono(ハコモノ)。

代表取締役の蓮田健一(はすだ けんいち)さんは、新卒からIT企業でエンジニア→プロダクトマネージャとしてつとめた後、2011年に震災で傾いた父親の会社を継ぎ、さらにその後起業という、大きなキャリアチェンジの経験を複数持つ。そんな蓮田さんが歩んできた道、仕事におけるミッション・バリュー、そしてhacomonoが描く未来について伺いました。

父から学んだ「人を巻き込む経営」

ーー蓮田さんは、震災の影響で潰れかけたお父さんの会社を継ぎ、そこで介護事業を経験されたそうですね。

蓮田健一さん(以下、蓮田さん):父の会社は自分が入る前は、電気工事業が7割で、残りが介護事業でした。ただ、震災の影響で電気工事の受注が急減したので、そちらを縮小して、介護に力を入れた形です。当時社員30人くらいと小さな会社でしたが、資金繰りが厳しく、社員数を減らさざるをえなくて。と、そんな状態からスタートしましたね。

ーーなかなか厳しい状態だったんですね。

蓮田さん:利益を出すのが難しく、弱音ばかり吐いていたこともありました。

そんな中で、WebサイトやECサイトを作ったり、介護の労働収益以外の売り上げを作ったりとか、会社が駅からバスで2~30分の遠いエリアで交通弱者が多かったので「介護タクシー」を始めました。介護タクシーはお年寄りが病院や行政機関に行くときに利用されます。運転手はタクシー免許、介護系の免許も両方取らなきゃいけないハードルの高さがありますが、タクシー台数を増やして事業を伸ばしました。

当時の苦労を振り返る蓮田さん

ーーそもそも、親の家業を継ごうと決断したきっかけは、なんだったんでしょう?

蓮田さん:学生時代は少しだけ裕福な家庭で、親からは自分がやりたいことをやらせてもらえるよう支援いただくことが多くありました。

その後就職し、前の会社が上場した後のタイミングで父の事業が東日本大震災で厳しくなってしまい「会社を潰すか悩んでいる」というのを聞きました。でも、まとまったお金を入れたらまたなんとかなりそうだったので、前の会社で未行使だったストックオプションがあったので、これまで支援いただいた恩返しもできていないと思い、ストックオプションを使って資金をつくり継ぐことに。父としても、私に手伝ってほしいみたいな感じがあって、キャリアを一旦リセットして家業に本腰を入れました。

ーー引き継ぐということは、いきなり社長になるわけじゃないですか。いろいろ課題に当たりませんでしたか?

蓮田さん:電気工事のほうは、昔気質の社員さんが多くて、最初のころは挨拶してくれないこともありましたね。2代目経営者のつらいところを経験しましたが、IT企業時代とは異なり、理念を大事にする経営・人を大切にする経営を学んだりととても良い経験でした。

店舗系企業のDX コロナも追い風に

ーーそんな蓮田さんが父親の会社から今のDX事業をやることになったきっかけはなんだったでしょうか?

蓮田さん:今って、どんな会社をやるにしても、自社サイトやサービスのシステムに関わる部分が大事になるじゃないですか。だから、引き継いだ会社でも、システムの開発部門を作っていて、自分以外に、デザイナー、エンジニアの数名を入れていたんです。そんな中、知り合い経由で、店舗系企業がシステムに困っているという相談をもらい、様々な開発案件を請けていったことがはじまりです。

hacomono社内のミッションの言葉。ウェルネス産業への取り組みの決意が見られる

Webサイト制作や基幹システム(ERP)、電子カルテ、予約システム開発などをしていました。店舗業界の中では話題になるシステムを作ることができ、介護の会社も黒字化したため、もう1回親に会社を戻して、改めてプロダクトを作りたいなとなったんです。

ーーそこから「ウェルネス産業」にスポットを当てたんですね。

蓮田さん:月額契約をしながら、我々の提案型で店舗系企業のシステム開発やブランディングの仕事を経験する中で、フィットネスクラブなどのサブスク店舗業界は顧客データは取れているのに、それを活かしていないというところに業界課題を感じました。

ーー2013年、hacomono(当時は「まちいろ」)を創業されたときは、受託開発でしたよね?どのような経緯を経て、SaaSに進化していったのでしょうか。

蓮田さん:まず1つはお金の問題です。親の会社のときに、散々苦労してきたので、お客様ニーズを検証して売上モデルができるまでできるだけ自己資金でいこうと思っていました。前職でもプロダクトビジネスをやっていたため、プロダクトとして軌道するまでは粘り強く検証していこうと。「hacomono」以外にもプロダクトを作ったりしましたが、良いものを作っても売れない、売れたとしても早期に解約されてしまうなど、いくつかの失敗を重ねる中でようやく「hacomono」というニーズを掴めるプロダクトを立ち上げることができ、エクイティでの資金調達を開始しました。

hacomonoエントランス。フィットネス産業に携わるだけあり、クリーンで開放感のある雰囲気が流れている

ーーそのSaaSを導入するメリットを、顧客に理解してもらうのは、大変ですか?

蓮田さん:ある大手の企業さんなんかは、もう4年くらいかけてやっています。業務整理のフェーズで伴走したり、何よりも先方の事業や現場を、丁寧に時間をかけて、理解していく。正直、人的コストは合わないんですけど、1回入ってもらうと継続率が高くて、平均10年ぐらいのスパンでいけるので結果回収できるなと

ーーなるほど。実際、DXした店舗のスタッフや、エンドユーザーの反応はいかがでしたか?

蓮田さん:スタッフの残業を大幅に減らせたという声をいただきました。従来であれば、閉店後締め作業が始まって、日報を書いて、ようやく退社ということになります。そうなると、残業は1時間では足りないですから。「hacomono」が導入されていない店舗から転職されてきたとあるスタッフの方は「こんなにやることがないんですか?」と驚いていましたね(笑)。またご利用者さまからは、年配のお客さまがシステムの導入を機にスマートフォンを買われたり、スタッフとの新たなコミュニケーションが生まれているとも聞いています。

hacomonoが作るメンバーサイトインターフェイス例

ーーコロナ渦では、hacomonoが手掛けるDXの流れはさらに需要があったんじゃないでしょうか。

蓮田さん:2020年8月くらいにオープンしたジムがあるんですが、そこは1か月で2000人以上入会者を獲得することができたんですね。その数って、DXしないと絶対にできない規模です。業界の中で「hacomono」での成功事例や評判が広がる中で需要も増えていきました。

日本を代表するSaaS企業へ

ーー振り返ってみて、蓮田さんにとっての一番の「ハードシングス」って何でしょうか。

蓮田さん:いま創業10年ぐらいなんですが、途中で業績不振により社員が減ったりと、思い返せばハードシングスだらけです。

でもすべて乗り越えてきた

ーー紆余曲折があり、2023年1月現在では社員180人の会社にまで成長しましたね。

蓮田さん:多くのメンバーとコミュニケーションを取るようにはしていて、まだまだ全員の名前やニックネームも覚えられる規模だし、趣味なども把握しているし、自分の中ではまだそこまで大きい会社になった印象はありません。

ーーではhacomonoが目指す、今後の展望について教えてください。

蓮田さん:特定業界をじっくりと深くやりつつも、横展開で業種を増やしていきます。それを「ボーリングピン戦略」って呼んでいるんですけど、「センターピン=フィットネスをはじめとしたウェルネス」を深く倒しながら、周囲の業界のピンも倒していく進め方です。

社内には、社員が使える最新の機器が勢揃いしたフィットネスルームがある

ーー日本では、まだ代表的なバーティカルSaaS企業がそこまで多くない気がしているだけにチャンスですね。


蓮田さん:そこは目指していきたいところではあります。まずはバーティカルなSaaSをウェルネス産業をメインに極めたうえで、その深さを維持しながらホリゾンタルに、いろんな可能性を探っていきたいですね。

蓮田健一(はすだ・けんいち)

株式会社hacomono 代表取締役CEO
株式会社エイトレッドのエンジニア、製品開発マネージャーとして、ワークフロー製品X-point、AgileWorksを生み出し国内トップシェアに。2011年、震災の影響で潰れかけた父の会社を継ぎ、介護事業を経験した後、新たなB2Bプロダクト起業を目指し、2013年7月株式会社まちいろ(現:hacomono)を創業。2019年3月にウェルネス産業向けシステム「hacomono」をリリースし、これまでに約2,400店舗以上が導入している

写真/武石早代 
取材・文/ヒガシダシュンスケ、おかねチップス編集部

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