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現役の人事担当者に聞く、人材不足に対する採用戦略

現役の人事担当者に聞く、人材不足に対する採用戦略

少子高齢化が進む昨今の日本では、多くの企業が人材不足に直面しているといわれています。そこで大切となるのが、求める人材を獲得するための採用戦略。各企業ではどんな戦略を練っているのでしょうか。現役の人事担当者に聞きました。

oVice株式会社 宮代隼弥さん
「採用基本戦略のもと、ターゲットを明確に定めています」

宮代隼弥さん

中学・高校をアメリカで過ごした後、関西学院大学へ入学。株式会社ビズリーチに新卒で入社し、法人営業を担当。在職中に、ビズリーチの同期とDesignカンパニーの株式会社almaを創業。almaへフルジョイン後、事業責任者兼HR担当として、組織・ビジネス部門を管轄し、プレシリーズAまでboardメンバーとして牽引。2020年12月oViceに1人目のHRとしてジョイン。HR機能の0→1を立ち上げ、現在は採用統括(Talent Acquisition Lead)として活動中。座右の銘は、「ねだるな、勝ち取れ」。

――人材不足を感じることはありますか?

宮代
さん
あまり人材不足問題は感じていないのですが、人事に関しては、適切なターゲットに対して適切な訴求を徹底したオペレーションで回すことが重要だと考えています。

――人材不足は感じていないとのことですが、御社ならではの採用戦略を教えてください。

宮代
さん
当社では以下の採用基本戦略を定めています。

oViceの採用基本戦略

  • Work from any where:世界各地のどこからでも働ける環境を提供することで、優秀な人材の採用を実現する
  • Creating operational excellence through a global standard:グローバルスタンダードなオペーションエクセレンスを作る
  • Competive Offering:優秀な人材採用のために、競合優位性のあるオファーを出す
宮代
さん
この採用基本戦略のもと、各職種に応じた採用ターゲットを定めています。

例えば、Account Executive(セールス)に対しては、ターゲットは「20代後半~30代中盤のMid〜エンタープライズ規模のセールス経験があり、SaaSでの経験を持っており外資IT SaaS出身であればより好ましく、働き方改革やコミュニケーションを通じた生産性向上に関心を持ち、oViceに可能性を感じてくださる方」としています。また、自社のセールスチームについて「Japan No.1 SaaS Sales Team」という内容での発信を始めました。

ーーでは応募数を集めるために、何か施策は行っていますか?

宮代
さん
応募数を追うより、有効応募者数を増やすことが重要だと考えているので、有効応募者数増に重点をおいた施策を行っています。そのため、現在は主にLinkedInなどでのスカウトを通じて、ダイレクトリクルーティングを実施しています。

ーーダイレクトリクルーティングを行ううえで、御社についてより知ってもらう工夫はされていますか?

宮代
さん
面談前に、oVice上の採用スペースRecruiting GalleryのURLを候補者の方に共有しています。Recruiting Galleryにアクセスしていただくと、さまざまなコンテンツをアバターを介して見て回ることができるため、弊社について深く知り、意向を高めていただくことができると考えています。

ーー早期退社やミスマッチを防ぎ、いい人材を見極める秘訣はありますか?

宮代
さん
まず1つ目が、「リクルーターの適切な情報収集・情報提供」です。カジュアル面談を必ずリクルーターが実施し、カジュアル面談時に転職軸や現職から離れようと思っている理由(ペイン)をお伺いしています。そのうえで、oViceの提供できる環境と合っているか双方でディスカッションをします。また、面接終了後、必ず15~20分程度のフォローアップのお電話をかけ、現在の選考状況や不明点・質問等をヒアリングし、必要な情報を提供しています。

2つ目が、「Interview Loop制度の導入」です。一次面接はHiring Manager(上司にあたる人)と実施し、最終面接前に仕事で関わるだろうステークホルダーとのInterview loopを実施しています。評価を開示しない状態で会っていただき、面接終了後に面接担当官、1次面接担当者、リクルーターで話しあい、最終面接に進んでいただくかHiring Managerが意思決定をするとで、Hiring Managerに採用に対する意識を高めてもらっています。

そして3つ目が、「オファー面談時、現状の組織課題・入社後期待値をお伝えする場を設けること」です。入社のオファー面談時、「選考を通じたフィードバック」「なぜ候補者の方と一緒に働きたいと考えたか」「ご入社された場合の職域(Role&Responcibility)」「採用後に候補者に期待すること」を必ず候補者の方にお伝えするよう心がけています。

――ご自身の採用スキルを向上させるために行っていることを教えてください。

宮代
さん
社内においては、一緒に仕事をするHiring Managerとのオペレーションや、採用要件に関するディスカッションを毎週実施しています。また、読書や他社事例を通じ、新しいオペレーションへの落とし込みを日々実施するよう心がけています。
 
そして採用面では、きちんと振り返りを行い、改善につなげられる体制の構築が重要だと考えています。特に早期退職が起こった際、候補者要因・企業の環境要因の両方を分析し、候補者要因に関してはきちんとターゲット像や選考フローに落とし込み、さらなる早期退職が起きないよう改善しています。
 
また、採用して終わりではなく、入社後アンケートを実施し、期待値や現状に対してずれがないかなどをきちんと確認するようにしています。

oVice株式会社

「誰もが、どこからでも“つながる”」ことができるビジネスメタバース『ovice(オヴィス)』を開発・提供する。2020年8月のサービス開始以降、テレワークにおけるバーチャルオフィスやオンラインイベント、オープンキャンパスなど、さまざまな場面での活用が進み、2023年4月末時点で約4,000社に導入されている。また、シリーズBラウンドで新規投資家および既存株主含む複数投資家を引受先とする第三者割当増資に加え、複数の金融機関からの融資により総額45億円の資金調達を行ったことを2022年8月31日に発表した。

株式会社Smart相談室 三浦麻友子さん
「ビジョン採用、タレントプール形成、柔軟な働き方を大切にしています」

三浦麻友子さん

2022年8月にCorporateマネージャーとしてSmart相談室へ参画。人事責任者として全職種の中途採用計画からオンボーディングまでのフロー構築、各種制度設計、コミュニケーション施策、VMV制定と導入などを担う。また広報部門の立上げを行い、採用広報としてオウンドメディアの運用やイベントを実施。自身のメンタル不調の原体験から、「Smart相談室」を通じて働く人がイキイキと自分らしく元気に過ごせる世界を創ることが目標。人事歴12年。座右の銘は、「敬意と感謝」。

――人材不足問題について、御社ではどう捉えていますか?

三浦
さん
人材不足問題は売り手市場をさらに加速させ、企業の人事戦略のみならず、会社として経営陣も交えながら本気で取り組むべき問題であると考えてます。日本の社会問題である少子高齢化にともない、将来的にはより労働人口が減少し、企業の存続にもダイレクトに関わってくることも予想されます。

――採用においての課題感はありますか?

三浦
さん
弊社ではありがたいことに、各職種において現状は採用計画通りに進んでおりますが、今後のさらなる採用人数増加となった際には、否応なしに対策強化を進める必要があると考えています。

採用したいのは、ビジョン共感・カルチャーマッチはもちろんのこと、高いビジネスリテラシーを持った方々のため、当然そうした方々の採用競争率は非常に高い状況から、いかに選ばれる存在になるかがポイントだと認識しています。

――御社ならではの、人材不足に対する採用戦略を教えてください。

三浦
さん
Smart相談室ならではという側面では3点あげられます。まず1点目の「ビジョン採用」は、弊社への動機付けを重要視しています。選考に入る段階でCEOのインタビューを共有し、感想をアンケート回答いただきます。そのため、初めて面接を行う段階から意向度が高く、モチベーション理論で言う衛生要因よりも圧倒的に動機付け要因が強化された状態でお話しをする状態が実現できています。
 
次に2点目は、「タレントプール形成」です。転職潜在層へのアプローチを意識し、まずは会社とサービスの認知度を上げるところへ注力しています。
 
そして3点目の「柔軟な働き方の提供」は、人材不足の現代では欠かせない観点です。フルリモートやフルフレックス制度、図書購入補助や入社時から15日間の有給付与などは、さまざまなライフステージにいる社員それぞれが入社後に安心して働ける環境に繋がっており、そうした一つ一つの取り組みが採用戦略と実績に結びついていると考えています。

ーー応募数を集めるために、行っている施策を教えてください。

三浦
さん
たくさんありますが、代表的な2つをご紹介しますね。

まずは「広報との一体化」です。昨今の採用活動は広報活動との連携は欠かせません。現状私が人事と広報を統括していることから、分け隔てないメッセージングができていると考えています。広報では各種メディアへの露出頻度と社内で運用できるオウンドメディアの制作と発信を強化。双方ともに読み手が「わかるわかる」と頷いてしまうような、わかりやすいメッセージ性を意識しています。こうした私たちの想いを受け取った方がいつの間にか応募者となり、転職活動はせずとも弊社のみに応募いただくような流れが構築されています。

次に、「登録会の実施」です。採用人数を絞っていることもあり、すぐに選考に進めない職種があります。そうした職種はまずはキャリア登録制とすることでタレントプールを形成し、募集開始となる際にお声がけできる体制を構築しております。

――早期退社やミスマッチを防ぎ、いい人材を見極める秘訣はありますか?

三浦
さん
正直、いい人材を見極めるってとても難しいですよね。人事としての年月を重ねるほど、よりそう感じます。ツールを使ってもミスマッチは起こりますし、100%防ぐことは不可能だと思います。

そこで、初歩的ですが私たちは違和感を大切にすることを徹底してます。選考フローの中でのやり取りや面談での言動などで「おや?」と感じることは、些細でも関係するメンバーで共有しています。その違和感が間違っていることはほとんどなく、見て見ぬフリをすると結果的に早期退職に繋がると学習しています。
 
また、採用活動においてもPDCAを回して次の対策を打つことを大切にしています。なぜ見極められなかったのか、反対になぜ見極められたのかを次の選考にいかします。私たちのValueに「失敗の歓迎」という言葉がありますが、まさにこれだと感じています。そこから次の価値を見つけにいくことに繋げます。

――ご自身の採用スキルを向上させるために行っていることを教えてください。

三浦
さん
まずはコミュニケーションスキル向上のための、カウンセリングやコーチングスキルの研鑽です。私自身が資格保有ということもありますが、傾聴は採用活動において欠かせないスキルであり、最終的なクロージングの際には候補者の背中を押すコーチングが役に立ちます。
 
それから情報収集も大切にしています。人事繋がりのコミュニティに参加したり、SNSでのコミュニケーション、媒体担当者とのリレーション構築維持、エージェントやコンサル企業の方との情報交換などを行っています。
 
あとはSNSでの発信ですね。発信することで言語化するスキルが身につき、同時に会社の広報や採用活動にもポジティブに効果がでます。一石二鳥どころか三か四鳥くらいのイメージですね!

株式会社Smart相談室

「Smart相談室」は、ちょっとしたモヤモヤの段階で相談してもらう事で、働く人の「モヤモヤ」を解消し、「個人の成長」と「組織の成長」を一致させる法人向けオンライン対人支援サービスです。働く人それぞれのモヤモヤに応じて、なんでも相談して良い、社外相談窓口サービスを提供しています。
メンタルケア、コーチング、法令対応を実現するストレスチェック・ハラスメント窓口などの機能を提供することで、企業の健康経営と働く人のwell-workingへ寄与します。

株式会社カンム 横井一喜さん
「安心して働け、柔軟な働き方ができる環境づくりを徹底しています」

横井一喜さん

株式会社カンム 人事企画責任者。リクルート系の求人広告代理店で営業を経て、人事にキャリアチェンジ。採用・人材開発・人事企画・HRBPを経験した後、AI系ベンチャーにて人事部門のVice Presidentとして組織戦略・組織再編・人事制度・採用戦略・カルチャーなど、組織基盤づくりを多面的に牽引。2023年3月に人事企画責任者としてカンム入社。座右の銘は、「真実に向かおうとする意志」。

――人材不足問題について、御社ではどう捉えていますか? 御社の課題感なども踏まえて教えてください。

横井
さん
競合他社との競争が激しくなり、優れたスキル・知見を持った人材を獲得する難しさが増しており、これにより、採用プロセス(人材獲得までのリードタイム)が長引き、結果として事業の進捗や業務の遅延などに影響が出ます。

そのような人材不足の中で、既存社員のスキル向上やキャリア開発にも目を向ける重要性を感じており、限られたリソースの中でも工夫をしながら継続的なトレーニングや学習機会を提供し、社員の成長を支援する必要があると思っています。

――人材不足に対する採用戦略の一環として、御社が行っていることを教えてください。

 横井
さん
面接時などにご好評いただいている点として、柔軟な働き方があります。働く上で、家族や健康への不安があると仕事どころではありません。まずは「何があっても安心して働ける環境を用意し、かつ柔軟な働き方を自律的に選択しやすくする」ことを会社として大切にしている点を、採用面接時にお伝えしています。

――具体的に、どのようなことをお伝えしているのでしょうか?

横井
さん
リモートワークやフレックスタイムを導入し、地理的・時間的な制約を緩和できる労働条件の提供を行っている点ですね。

本社は東京にありますが、なかには沖縄など遠方に住んでいるメンバーもいます。また、男性育休の取得率は約90%を誇り、性別に関係なく、ライフイベントに応じて休みながら働いていただける環境も整えていることもお伝えしています。

――応募数を集めるために、行っていることを教えてください。

横井
さん
まだ当社と接点を持っていない方との機会創出と、すでに関わりのある方々とのご縁を大切にしています。

前者はスカウトやエージェントとのコミュニケーションを増やすことで、なるべく多くの候補者の方とお会いする機会をつくっています。
後者は社員紹介によるリファラル採用の奨励、過去に内定を辞退された方やアルムナイ(退職者)のネットワークの構築などを行っていて、実際に一度退職をして、再び戻ってきて活躍しているメンバーもいます。

――ご自身の採用スキルを向上させるために行っていることはありますか?

横井
さん
私個人の採用スキルを向上させるアプローチとしては、効果的な質問リストの作成やアクティブリスニングのスキル向上、組織文化に関する学問的理解を深めています。

株式会社カンム

「心理的Unbankedをソフトウェアで解決する」をミッションに掲げるFinTech企業。面倒、難しい、怖い、不安などの気持ちから金融サービスから遠ざかっている”心理的unbanked層”に対しサービス提供。具体的には、どなたでも最短1分で発行できるVisaプリペイドカード『バンドルカード』、「”貯蓄から投資へ”をもっと手軽に」がコンセプトの資産形成に活用できるVisaクレジットカード『Pool』を提供する。「銀行機能のアップデート」を目指す。

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