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お金は増やせるけど、時間は増やせない。時間への投資哲学|澤円コラムVol.02

お金は増やせるけど、時間は増やせない。時間への投資哲学|澤円コラムVol.02

元日本マイクロソフト業務執行役員で、「プレゼンの神様」とも呼ばれる澤円さんが、「時間とお金」をテーマにしたコラムをつづる本連載。今回は、澤さんがお金に苦労していた時代の話をお届けします。自分で稼ぎ始めた澤さんが、「時間の切り売り」という概念を手放したきっかけとは——。

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みなさんこんにちは、澤円です。
連載第2回目をお届けします。
お金に関する連載を始めたということで、「澤という人間は、昔から稼ぐことが得意だったのでは?」と思っている方もおられるかもしれませんね。

全力で否定させていただきます(笑)。ほんっとにお金に関しては苦労していました。

といっても、特段貧しい家で育ったというわけではありません。中流よりはちょっと上くらいの、恵まれた環境で育ったのは間違いないでしょう。父は、野村證券に終身勤めた強者。出世こそしなかったものの、定年までしっかり働き、その後もちょこっと嘱託の仕事などもして、しっかり稼いでくれていました。

なので、学生時代まで生活レベルでお金で苦労した記憶はありません。
これは両親に感謝ですね。本当にありがたい。

ただ、若い頃のボクは本当にアホだったので(今でもですけどw)、そこのありがたみをよくわかっていませんでした。そして、周囲と自分の格差に勝手にイラついたりしていました。
というのも、ボクの周りにはとんでもない金持ちがひしめいていたからです。

とくに、大学時代はそれが顕著でしたね。
時代的にもバブル真っ最中ということもあり、周りにはその恩恵にあずかりまくっている同級生がウヨウヨいました。外車乗り回してるとか、ヴィトンのバッグを持ってるとか、アルマーニのジャケット着てるとか、こんなの当たり前。バイトで稼いでるレベルでそんなもん手に入らんやろ!と心の底から思ってました。
でも、時代がそうなんだから仕方なかったんですよね。ボクはよくわかっていませんでしたけど。

なので、「華やかな生活ができない大学生は負け組なのではないか」という歪んだ価値観を持ってしまい、その一方で富裕層とはいえない家庭に生まれた自分とのギャップをうまく処理できなかった日々でした。

ホントにアホだったなぁ……。
めちゃくちゃ恵まれていたのに。

某テーマパークでアルバイトしていた頃の澤さん

さて、そんなボクは大学生の時、とにかくアルバイトばかりしてました。やっていたバイトは、世界一有名な齧歯類が頑張っている某テーマパークと、家庭教師。その2つで随分と稼いでいました。学生として遊び呆けるには十分な収入があったと思います。ここで「自分で稼ぐ」という体験ができたのはよかったと思います。

その一方で「時間当たりいくら」という考えが染み込んだのは、ちょっと問題でしたね。
つまり、「時間の切り売り」という概念を自然なものとして受け入れてしまったので、その後のキャリアにおいても、「給料は時間と交換で得られるもの」という感覚がついて回っていました。

当たり前の話ですが、どこかに就職して自分が多くのお金を手にしたいなと思った場合、給料を多く支払ってくれる会社を選ばなければなりません。でも、このアプローチは「自分がコントロールできる部分」が極端に少ないんですよね。「え? 自分で行きたい会社を受ければいいだけでしょ?」と思う方もいらっしゃると思いますが、受けたら必ず入れるわけではないですよね。

それに、「就職したら何しても(≒何もしなくても)自動的にお給料は上がっていく」というシステムはすでに崩壊してます(そもそも、そんな無茶苦茶なシステムが一定期間は機能していた日本てすげぇなとも思いますけれど……)。稼ぐということを会社という仕組みに委ねてしまうと、「多く稼ぎたい」と思ったときは残業代を目当てにして長く働くという手段に頼るしかない人も多いのではないでしょうか。歩合制の営業は例外かもしれませんが、これも多く稼ぐには多くの営業活動が必要になるので、頭を使わないと長時間労働に直結しかねませんよね。

ボク自身、最初に就職した会社では「長く働くことで手取りを増やす」くらいしか頭にありませんでした。しかし、外資系に転職して年俸制になった途端、労働時間と給与の連動が断ち切られました。

これはボクにとって結果的に非常にいい薬になりました。「労働時間ではなく結果が問われる」というカルチャーにどっぷり浸かったことで、「効率よく仕事を進める」ことに専念できたからです。

お金に苦労している時期は、思考の幅も狭くなりがちで、どうにも「時間の切り売り」に流れやすかった記憶があります。
これが非常に効率悪いということは、今ではよくわかるのですが、苦労している最中にはなかなか気づけないものです。

このコラムでは、「時間とお金」が基本テーマなので、折に触れて「時間の切り売り」を問題として取りげていきたいと思います。

お金は増やせるけど、時間は増やせない。おまけに、ひとりの人間が使える時間はMAXでも「一生分」です。超貴重なリソースである「時間」をどう投資していくかが一番大事なんですよね。

今ちょっとお金に苦労しているなと思っている方は、まず「自分は時間の切り売りをしていないか」を意識してみてください。そして、「そこから脱却していくための方法」を一緒に考えていきましょう。

澤円(さわ まどか)

株式会社圓窓 代表取締役、元・日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 専任教員。

立教大学経済学部卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得ている。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオなどの出演多数。

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