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「超富裕層」の生活にふれて感じた、人生とお金の相関関係|澤円コラムVol.10

「超富裕層」の生活にふれて感じた、人生とお金の相関関係|澤円コラムVol.10

元日本マイクロソフト業務執行役員で「プレゼンの神様」とも呼ばれる澤円さんが、「時間とお金」をテーマにコラムをつづる本連載。今回は、超富裕層の友人Aさんから学んだ人生とお金の関係について。

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みなさんこんにちは、澤円です。
連載第10回目をお届けします。

先日、ベンチャー企業の元経営者で、今はセミリタイアをして悠々自適に暮らしている友人(この記事内ではAさんと呼びます)のお宅にお邪魔しました。元々は「ガレージを作ったから車を見に来て〜」という誘いでした。てっきり車が何台か並ぶ、プレハブづくりのガレージをイメージしていたのですが……。

そもそも場所が都内の超一等地のど真ん中。そして、「ここでーす」と案内されたのは、重鉄骨づくりの3階建ての邸宅。1階部分は確かに車3台が格納できるガレージになっているのですが、ガラスで仕切られた場所にはオフィスが作られていて、2階と3階は完全な居住スペースになっていました。立派なキッチンにベッドルームとリビングスペースが二つずつ、最新の映像機器や家電製品がしっかりと揃っていました。

最近経営していた企業が上場を果たし、相当数の株を保有していたAさんは、市場の株数を増やすために手元の株の一部を売却したのだそうです。結果として、相当額の現金を手にすることになり、この邸宅を作ったそうです。他にも、マンションを1棟丸々所有して経営していたり、自分の資金を使っていろんなビジネスを回しているとか。

身近に超富裕層ができて、ボクとしてはたくさんの学びが直接得られて大変にありがたい(笑)。

Aさんは10年以上前からの知り合いで、本当にスタートアップ立ち上げ時期からすぐ近くで苦労されているのを見ていたので、このようなステータスを感じる暮らしができるようになって、ボク自身も嬉しい気分になれます。

そして、「巨大な財産を持つ」ということが、また別の宿命を与えるものなのだな、と改めて考えさせられました。手に入ったお金は、ただ手元においても「活きた資産」にはなり得ません。何かに使うことによって経済は周り、そして自分も豊かになることにつながります。

これが、贅沢品をたくさん手に入れたり、豪華な食事やお酒に注ぎ込んだり、たくさんの不動産を購入したりしても、ぶっちゃけ限界があります。なにしろ、1日は24時間と決まっていて、その割り当ては富裕層であろうと貧困層であろうと同じです。

また、人生はひとり当たり1回しか割り当てられておらず、その中で持っている資産をいかに使っていくかがポイントになるわけです。もちろん、お子さんがいれば相続すればいいわけですが、世の中にはそのプロセスでいろんないざこざやらゴタゴタやらドタバタやらが繰り広げられるわけです。

残し方という観点でも考えなくちゃいけないとなると、たくさんの資産を持つことで「楽になること」と「しんどくなること」の両方が、極端に増えていくんだなぁと改めて思いました。

超富裕層は、まず絶対数が少ない。ということは、参考となるケーススタディが少ない。そして、多くの富を手にするまでのプロセスも全く違うでしょうし、富を手にした人たちの趣味嗜好もバラバラだったりするわけで、「どう使えばいいのか」を考えるための材料が多くないのが実情だろうなと思います。

Aさんも、周りの近しい立場の人からあれこれ聞いて、試行錯誤している状態だそうです。

アメリカなどでは、多くの資産を手にした人は「寄付をしないと尊敬されない」というカルチャーがあるようです。その代わり、寄付をするためのエコシステムはある程度確立していて、そこに参加することで、資産を手放し代わりに名声を手にすることができるようになっているそうです(アメリカ在住の友人から聞いた話なので、実体験をもとにして書いているわけではありません。もう少し勉強する余地がある気もしています)。

話は飛びますが、ボクが以前勤めていたマイクロソフトという会社には、超富裕層が普通に社員として働いていました。これは、入社時期が早いかどうかで決まっていて、その人の能力との相関関係は薄いものでした。大して仕事ができなくても、ずっと前から在籍していたら勝手に株価が上がって大金持ちになったという構図でした。

ただ、会社として成熟していくにつれ、「ただいる人」に対する扱いはどんどんシビアになり、最終的には退職せざるを得なくなった人もたくさんいました。そして、退職と同時に「まだ個人の資産になっていない」株式の権利は返納する必要があります。権利の喪失が耐えられずに、社内で自分のポジションを探し回る人がたくさんいた覚えがあります。資産をキープするためだけに、社内のポジションを探すという人生もあるのだな……と、部外者のボクは冷静に観察していました。

ボクはある程度お金に余裕はある方ですが、超富裕層とは程遠い存在です。でも、十分に幸福を味わっていますし、超富裕層の方々の暮らしを眺めていても「そんな人生もあるんだな」と感心するだけで「羨ましい」とか「自分の人生は失敗だった」とか、全く思いません。

Aさんとの会合は、それはそれは楽しいものでした。会話の中心は、過去の出来事を懐かしんだり、今世の中で起きていることに対する自分たちの取り組みを共有したりすることでした。要するに、ただの友人同士の会話。本当に楽しい時間でした。超富裕層であっても、人間であることには変わりがないんだということを、Aさんと過ごして改めて感じました。

澤円(さわ まどか)

株式会社圓窓 代表取締役、元・日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 専任教員。
 
立教大学経済学部卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を得ている。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加。2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオなどの出演多数。

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