若者よ、プロデューサーを目指せ!クリエイティブの最前線で働く先輩プロデューサー3名が語る「やりがい」と「魅力」
「おかねチップス」が、「クリエイター支援メディア BRIK」と共同で行っている公開収録オンラインイベント『ジョブクロッシング -仕事と職の交差点-』。同じ名前の職種でも、業界や業態の違いにより、大きく役割が異なるもの。その役割の違いを正しく理解することで、それぞれに必要なスキル、仕事における考え方やこだわりをひもといていく、クロストーク対談企画です。
全四回のシリーズとなり、今回は第二回の模様をお届けします。テーマは「プロデューサーの謎と神秘の仕事術」。登壇してくれたのは、The Breakthrough Company GO 田中陽樹さん、株式会社ピラミッドフィルムクアドラ 溝渕和則さん、株式会社コネル 澤邊元太さん、それぞれクリエイティブの分野で、プロデューサー職に就く3名です。
<登壇者>
田中陽樹氏
2006年電通入社、2018年よりGO入社。 ファミリーマート、損保ジャパン、NTTdocomoをはじめとした大手クライアントのアカウントを担当。 一心堂本舗「歌舞伎フェイスパック」の商品開発及びシリーズ展開をプロデュースし、海外広告賞を受賞。新規事業立ち上げ、リブランディング、大型キャンペーンなど、クライアント側のチームに参画して、組織体制構築まで含めたトータルマネジメントをする。コンビニプライベートブランドのフルリニューアル、新しい保険商品の戦略策定から獲得マーケティングなどをプロジェクトリーダーして率いた圧倒的な経験量をもとに、前例の無い企画、不可能に思われるアイデアを実行まで導き、その後の売上・利益のグロース戦略まで含めて事業成長に貢献するビジネスプロデューサー。
https://goinc.co.jp/
溝渕和則氏
広告業界のデジタル領域に魅力と可能性を感じ、2000年に当社の前身である ピラミッドフィルムへ入社。 現在の代表取締役社長・篠原哲也らが立ち上げたデジタル制作部に配属された後、 様々なデジタルコンテンツ制作に携わる。 2007年に設立したピラミッドフィルム クアドラに入社して15年目。 自身を常にアップデートしながら、最新のデジタル知識やトレンドを活かし、 クライアントの課題をオーダーメイドなコンテンツで解決すべく日々挑戦している。
https://pfq.jp/
澤邊元太氏
1989年アメリカ生まれ、北海道出身。広告制作プロダクション、広告代理店、 クリエイティブエージェンシーを経て、Konelに参画。国内外の様々な企業や ブランドのプロジェクトに企画・プロデューサーとして参加し、領域にとらわれない お題に対して、領域にとらわれない切り口で打ち返す。最近は下北沢で、人の夢を叶える実験マスコットユニット「JIKKENズ」を結成。とにかくテレビとTikTokが大好き。
https://konel.jp/
プロデューサーは「何事にも興味を持つべき」
1つ目に語ってもらうテーマは「今の役職に必要なスキルとこだわり」。それぞれ、フリップに回答を記載してもらいました。まずは溝渕さんからお聞きしていきます。
溝渕さん:はい。僕は「古来も未来も全方位の興味」です。お仕事をもらうときによく聞かれるのが、「溝渕さん、〇〇について詳しいですか?」みたいなこと。最近だとChatGPTみたいな新しいサービスが多いですかね。そういったときに自分が「当事者」になっていることで、お客さんからの信頼度も変わってくる。だから常にアンテナを張って、興味があることは買って、触れて、語れるようにしています。それが自分を変化させていくために必要な心意気というか、お客さんに指名していただくために重要な素養なんじゃないかなというふうに思ってます。
澤邊さん:それでいうと、僕めっちゃTikTokが好きで、1日3時間ぐらい見てるんですよ(笑)。最近は、元料理人の広告代理店の人が、社員のランチを作るっていう動画をよく見ています。あと、最近は、AIがイラストを生成するじゃないですか。うちも『知財図鑑』というメディアを運営する中で、どこまでAIにやらせるかみたいなところの議論が白熱していて、クリエイティブテクノロジーについての話題はカバーしています。
ーーでは続いては澤邊さんお願いします。「キャリー力」、これはどういった意味なんでしょうか?
澤邊さん:よくeスポーツとかで使われるんですが、チームを勝利に導いてくれるプレイヤーに対して「キャリーしたね」と言うんです。それは、プロデューサーの分野でもマッチする言葉なんじゃないかと思っていて。プロジェクトとかチームを“キャリーする”、いわゆるゴールにまで持っていく力が必要ということで、書きました。
ーーなるほど。そして田中さんは何を挙げていただいたんでしょうか?
田中さん:これは、僕が尊敬しているファミリーマートの足立光CMOがおっしゃっていたことで、「やれることは全てやる」ですね。例えば、損保ジャパンさんの保険商品を世の中にもっと売っていこう、魅力を伝えていこうってなったときに、予算をお預かりするんです。その時点で「会社を経営している」ことになるんですよね。テレビCMなのか、屋外広告なのか、ダイレクトメールを送った方がいいんじゃないかとか、いろいろやり方がある中から「これだ」と方針を決めたら、そこに全力を注ぎ込む。「僕の領域じゃないから」という考えは一切廃して、あらゆる方向性を考えていくっていうのはビジネスプロデューサーに重要だと思っています。
ーーいろいろと身につけているからこそ出来るっていうこともあると思うんです。なので、「これだけは身につけておいた方がいいよ」などあればお聞きしたいです。
田中さん:先ほど溝渕さんの言っていたことに近いのですが、「何事にも興味を持つこと」はすごく大事ですね。あと、めちゃくちゃシンプルなことですけど、「ちゃんと考える」ってのは意外と出来てない人がいます。例えば、広告とかコミュニケーションの企画で「これが話題になるんじゃないか」というアイデアだけ先行して、自分もしくは近しい人が本当にそれを買うか、キャンペーンに応募するかとか、「n=1」を突き詰めないと、企画倒れになってしまいますね。
良い仕事の報酬は「仕事」で返ってくる
2つ目のテーマに入ります。「自分以外の二人に聞きたいことは?」ということで、それぞれの方に質問を書いてもらいました。
澤邊さん:僕は「若手の子にどう伝えてますか?」です。これを聞きたいがために来ました(笑)。プロデュースって、どこか俗人的じゃないですか。仕事の取り方、クライアントさんの接し方、敷いて言えば、見積もりの作り方もそれぞれ違うと思うんです。指標がある中で、プロデューサーの感覚をどういうふうに下の子たちに伝えていったらいいのかなと。
溝渕さん:固有のスキルに関しては伴走しながら伝えられると思うんですよね。それ以外のスキルの部分でいうと、うちはマニュアル、企画書を作って、アーカイブしてみたいな、要は「資産をめちゃくちゃ増やす」ことをしています。あとで入った人が、Wikipediaを見るみたいに参照できるように。モチベートの部分は、まだ僕もわからないところがあるので田中さんに教えを乞いたいです(笑)。
田中さん:せっかくの『おかねチップス』ですし、見積もりって話が出たんで、お金の話をすると、「フィーをいただけるように自分たちの価値をしっかり磨いていこうぜ」とは若手に言いますね。例えばCM制作費の見積もりには、大体2〜30%のクリエイティブディレクションフィーが計上されることになるんですよ。ただ、GOでは、制作原価には一切利益を上乗せしていません。その代わり、最高の仕事をする。するとクライアントから「また仕事をやりたい」「もっと良い制作費でやってほしい」という思いを持ってもらえる。いい仕事をして、いい案件をもらうというサイクルが出来上がるんです。
ーーGOの三浦社長が書かれた本にも「仕事の報酬は仕事」と書いてありましたが、まさにそういうことですね。
田中さん:そうですね。以前、大好きなケンドリックラマーの仕事をやらせていただいたときは、ユニバーサルミュージックの知り合いが、僕がやった安室奈美恵さんとの仕事を見て連絡くれたんですよ。良い仕事をすると次の仕事が生まれてくるので、いきなり飛び込んで営業するぐらいだったら、いい仕事をして、それを世の中に知ってもらうように自分で発信するっていうのが一番実になると思っています。
ーー溝渕さんは、「令和の若者のキャリーの仕方」ということですが。
溝渕さん:澤邊くんのさっきの「キャリー力」にも近いところはあるんですが、デジタル業界の人たちっていろいろなタイプがいると思っていて。それこそ対面でガンガンコミュニケーション取れる人もいるし、オンラインでチャットする方がコミュニケーションを取りやすい人もいる。聞きたいのは後者のほうで、そういう人が「プロデューサーになりたい」って思ったとき、何ができるかっていうのが知りたいんです。
田中さん:GOには、電通や博報堂といった広告代理店出身だけじゃなく、リクルート出身だったり、楽天とか商社から来てたりとか、いろいろな社員がいるんですね。中にはまだ経験が少ない人もいるんですが、共通しているのは「モチベーション」。入社して、プロデューサーとして頑張りたいっていう強い気持ちがあることが重要かなと思っています。僕たちの会社では、クリエイターとプロデューサー同士が、お互いにリスペクトし合っていて、日頃から課題に向き合って「一緒に解決しようよ」っていうチーム力が発揮されています。むしろそのおかげで、「プロデューサーってすごく価値ある仕事だよね」っていう、重要なポジションになっているなと。なので、普段からメンバーに対して「感情を表現していく」っていうのは大事なことかもしれないですね。うちの会社でいうと、会議中の拍手がめちゃくちゃ多いんですよ。
ーーそれはすぐにでも取り入れやすいですね。その田中さんが聞きたいこととはなんでしょうか?
田中さん:私は「(制作フィー以外で)儲かってる事業があれば教えてください」。お二人は、映像制作とかイベントとか、いわゆる制作フィーがメインになってくると思うんです。それ以外で、こんな事業で実は儲かってるぞっていうのがあったら教えてもらいたいです。
溝渕さん:うちも華やかな仕事事例があるんですけど、地味に下支えしているのは、長年契約してるサーバー費とか、ランニングで入ってくる部分。もちろん制作業の結果ついてくるものではありますが、欠かせないことではあります。
ーー特許は「金のなる木」というイメージもあるんですが、澤邊さんから何かありますか?
澤邊さん:(笑)。僕らが開発してきたコンテンツの中に、「面白フォトブース」というのがあるんですが、それは自分が変な格好するとトラッキングして、「その格好をした」と認識してくれる技術が入ってるんです。実は開発したのは1年目とかインターンの子たちで、他のことにめちゃくちゃ転用できるんですよ。ひとつ、マスターになる技術を作っちゃうっていうのは、「儲かる」という意味では糸口になるのかもしれません。ただ、物をたくさん売る企業の方が、利益をいっぱい出せると思うので、そこは僕らも挑戦しているところですね。
プロデューサーは人の孤独を救うことが出来る
最後、3つ目のテーマは「今の仕事の拡張性とポテンシャル」についてです。
田中さん:「社会課題、世界的IP、ビリオネア」です。順に「社会課題」から言っていくと、僕ら広告業界って、課題を解決するとか、物を売るっていうことをクライアントさんから求められるんですね。でも、その視点に立てば、何も企業だけじゃなくて、アフリカとか南米の貧困地域を救えるかもしれないアイデアも生まれる。そういった部分に拡張性は感じますよね。次に、「世界的IP」ですが、たとえば僕が音楽の仕事を担当して、あるラッパーをプロデュースしたら、もしかしたら世界で売れるようなIP(Intellectual Property=知的財産)になるかもしれないということです。そして最後は「ビリオネア」で、アイデアって「石油」みたいなものだと思うんです。日本って資源はないけれど、独自性の文化ってのがあって、これってやっぱ世界に対する競争力になってくるはず。なので「クリエイティブ×ビジネスプロセス」がうまく噛み合えば、とんでもなくお金を稼げるチャンスでもあるのかなと思っています。
ーー確かに、アニメから派生したコンテンツはお金を生み出していますね。では溝渕さんお願いします。
溝渕さん:「まだ見ぬジャンルのフロントに立てる」です。例えば、今でこそ広まってきた「画像生成AI」だったら、THE GUILDの深津貴之さんが第一人者で、困ったら相談を受けるポジションにいますよね。特定の分野に対してものすごく詳しくなれば、あるいは新しい表現を先に見つければ、ずっとジャンルを代表する存在として認められて、マネタイズにもつながっていく可能性がある。プロデューサーという肩書だけではなくて、自身をプロデュースすることも、今後のデジタル業界においては重要なんじゃないかなと。
ーーでは澤邊さん、お願いします。
澤邊さん:「孤独を救う」、すいません、一見よくわかんないですね(笑)。先日ある商業施設の担当の方たちが集まるセミナーで登壇させていただいたんですけど、1人の事業者さんが「孤独です」とおっしゃっていて。煮詰まったときに周りに相談できる人がいなくて、いつも困っているみたいな話だったんですね。おそらく、世界中にそんな孤独を抱えている人たちがいるはずで、そこで力になれるのがプロデューサーだと思うんです。ともに並走してあげたり、寄り添ってあげたり、アイデアの壁打ちができるはず。言ってしまえば、その先にはビジネスチャンスが待っているんじゃないかなと思っています。
ーーここまでいろいろとお話を伺っていますと、プロデューサーというのは大きなプロジェクトを動かしつつも、繊細な部分も非常に求められるお仕事なんだなと。最後に皆さんより、プロデューサー志望の方にメッセージがありましたらお願いします。
田中さん:特に若い方向けになりますが、今やってるプロジェクトの中で「必要だな」と思ったことがあったら、領域を決めずに、どんどんチャレンジしてほしいです。例えば、僕がやってきた音楽のフェスの仕事とか、HIPHOPアーティストのプロデュースとか、ファッションの仕事とか、人から「かっこいい仕事が多くていいですよね」と言われるんですけど、降って湧いてきた仕事じゃないんです。本当に数万円の仕事から始めたものが、2万人規模のフェスの仕事になったりしているので、とにかく興味あることに手を挙げて、その分野に詳しくなって、オンリーワンの存在になっていく。そんな生き方、働き方をしてほしいですね。
溝渕さん:会社としては、「まだ見ぬ体験を作り出そう」とうたっていて、先ほど田中さんがおっしゃったように全方位でいろいろ興味を持って戦っていくっていうのも大事ですし、自分自身の「好き」をどんどん表して、それを武器にする、両軸で動いていってほしいですね。そんな人と一緒に働きたいですし、新しい領域で、存在感を出していきましょう!
澤邊さん:プロデューサーと言っても、僕もまだ経験不足で、日々精進していきたいなと思っています。というのを前提に、プロデューサーって、他のポジションにはないような嬉しい場面に直面できるって思っていて、売り上げみたいなところもそうだし、クリエイティブの誕生、ビジネスの成功に最前線で立ち会えるのもそうだし、ちゃんと全ての喜びにフェイシングできるようになっています。そんな素敵な仕事に挑戦する人がもっともっと増えてほしいなと思いますね。
※Vol.3の様子も近日公開いたします!
撮影/武石早代
文/ヒガシダシュンスケ
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