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人事・採用担当者に聞く。「従業員の定着率向上のための取り組み」4選

人事・採用担当者に聞く。「従業員の定着率向上のための取り組み」4選

少子高齢化社会といわれる昨今では、人材不足に悩む企業は多いもの。そこで大切なのは、新しい人材の確保はもちろん、優秀な人材を会社に留まってもらう定着率の向上です。今回は各企業の人事・採用担当者に、社員やスタッフの定着率向上のために行っている取り組みを伺いました。

株式会社ベーシック 長田華凜さん
「新入社員の居場所づくりを徹底しています」

長田華凜さん

新卒で株式会社ベーシックに入社。フォーム作成管理サービス『formrun(フォームラン)』のカスタマーサクセス・マーケティングを経験。2021年から人事広報部に所属し、事業広報・採用広報・社内広報と、広報機能全般を幅広く担う。座右の銘は、「世界は貴方が思っているよりも優しい」。

――従業員の定着率向上のため、どんな取り組みを行っていますか?

長田
さん
ベーシックでは、「事業成長と働きがいの両立」の実現を重視しています。その中でもEmployee Successの文脈の中では、新入社員のエンゲージメントを高めることを主軸に、各種施策を行っています。

その施策は、大きく分けて2つあります。1つは、リモートワーク勤務をベースとする状況下においても、入社を最大限歓迎する状態を作ることを目指して2021年から開始した「Welcome Box」の運営をしていることです。「Welcome Box」にはオリジナルノベルティに加え、選考中に面談を担当したメンバーが寄せ書きをしたWelcome Letterを送付しています。これらは、新入社員10名ほどの声をベースに企画した施策であることもあり、「メッセージカードを見て入社前からモチベーションが上がった」「ノベルティにより、テレワークの中でも組織の一員になった実感が湧いた」などポジティブな反応をいただいています。
長田
さん
そしてもう1つは、入社後の施策としてコミュニケーションの9つの切り口を用意していることです。「コミュニケーション機会を増やし、新入社員の“居場所”を早い段階でつくること」を目的に、2022年にさらに強化しました。

コミュニケーションの9つの切り口

  • 配属部署
  • 社長
  • 同期入社
  • 同年代
  •  先輩社員(ブラシス)
  • 同郷
  • 同職種
  • 勤務場所(地方勤務者)
  • 趣味(コミュニティ)
長田
さん
これらの切り口でのコミュニケーション機会を用意しています。また、目的の達成のために、一人につき2,000円(税込)×参加人数分までを会社側で負担する「コミュニケーション補助」の用意に加え、上記の切り口でコミュニケーションが取られるよう、ランチや(任意参加の)飲み会のセッティングもしています。

――実際、どのくらい定着率は改善しましたか?

長田
さん
2022年下期の離職率については、創業以来、最も低い水準となりました。

また現在、社員のコンディションを確認する全社アンケートを月次で行っているのですが、Employee Successに関連が深い項目である「働きがい」や「共闘実感」については高い数値を維持できています。

――客観的にみて、成功した要因は何だと思いますか?

長田
さん
ベーシックの行動規範の1つに「GOAL ORIENTED」、つまり逆算思考性を求めるものがあるのですが、これらの施策においても目的を意識して行動することを徹底したからだと思います。
「他社がやっているからやってみる」と一目散に取り掛かるのではなく、まず会社として何を目指すのか、そしてEmployee Successのためにどのフェーズでどんな状態を目指すのかを洗い出し、その後でGAPを埋めるためにどんなことが必要かを書き出し、順に施策を行っていたことが今回の結果に現れたのではと考えています。

――他社の従業員の定着率向上のための取り組みで、気になるものがあったら教えてください。

長田
さん
すでに参考にさせていただきましたが、社員のコミュニケーション強化のための、コミュニティの運営やシャッフルランチの運営です。

――なぜ自社にも取り入れたいと思ったのですか?

長田
さん
ベーシックでは、新入社員にフォーカスを当てたコミュニケーション機会は用意している一方で、仕事上あまり関わりのない社員や最近入社した社員とコミュニケーションを取る機会が多いわけではありません。
その課題の解消のための施策として、他社さんにおいてもコミュニティ運営やシャッフルランチを開催しているのを目にしました。特にコミュニティ運営は「趣味」で繋がることで、人事が介入しなくても活性化する点で有効だと感じ、シャッフルランチも全社的なコミュニケーションが取れることが魅力的だと感じ、自社にも取り入れました。

株式会社ベーシック

「問題解決の専門家集団として、情熱を妨げる世の中のあらゆる問題解決をやり抜き、多種多様な企業が強みに集中できる世界を創造する」をミッションに掲げ、事業を展開するテクノロジーカンパニー。企業がWebマーケティングを推進する上で直面する“知識・環境・人”不足の問題を解決するため、BtoBマーケティングのお困りごとをまるっと解決するサービス『ferret One』、フォーム作成管理ツール『formrun』、日程調整ツール『bookrun』、Webマーケティングメディア『ferret』の4つの事業を展開する。

株式会社ペライチ 直江つかささん
「社員間のコミュニケーションやキャリア形成支援に注力しています」

直江つかささん

人事歴約3年。チャレンジ・トライアルがしやすい環境や成長支援、心理的安全性を感じてもらえるよう多様なインナーコミュニケーションなどの施策づくりを中心に、人事企画や社内イベントを担当。また、社員が気軽に相談しやすいような雰囲気作りや声がけを行い、寄り添いつつフラットな立場で相談に乗ることを心がけている。座右の銘は、「目配り気配り心配り」。

――従業員の定着率向上のため、どんな取り組みを行っていますか?

直江
さん
ペライチはほぼフルリモートで働く環境だからこそ、社員間のコミュニケーション施策に重きをおいています。
なかでもユニークな取り組みとして、毎月1回、全社員のご自宅にお菓子と社内報を送る「ペライチお届け便」があります。到着するとSlack上に「届いたよー」や「このお菓子好き!」「次はこれ入れて欲しい」など、様々なコメントが投稿され、横断的なコミュニケーションのきっかけになっています。
直江
さん
他にも、社員間の飲み会代補助や役員陣も含めたシャッフルランチ、メンター制度の導入など、様々な形で交流の機会を設けています。

――多彩な取り組みですね。

直江
さん
さらに、コロナ禍で長らく集合型の学びの場を持つことが難しかったため、自律的な学習を促す取り組みも増やしました。書籍購入代、外部カンファレンスへの参加費用や資格取得時の受験料を補助するなど、社員一人ひとりの自律的な学び、キャリア形成を支援しています。直近では社員向けの英会話教室を始めました。今後も業務内外を問わず、社員のキャリア形成の機会を充実させたいと考えています。

――実際、どのくらい定着率は改善しましたか?

直江
さん
直近年度においては、非エンジニア職の定着率が3.8%改善しました。エンジニアは3年以上離職者ゼロが続いています。

――客観的にみて、成功した要因は何だと思いますか?

直江
さん
ペライチには全社的に「ユーザーとの接点を大事にする文化」「課題解決に向けたトライアルを歓迎する文化」があり、それは私たちコーポレート部門も同様です。社員や組織の様子を常に「気配り目配り心配り」しながら、その時々に応じて柔軟かつスピーディーに様々な取り組みを重ねてきたことが、社員の定着につながっていると思います。

――他社の従業員の定着率向上のための取り組みで、気になるものがあったら教えてください。

直江
さん
住宅ローンテックのiYell株式会社さんの「郊外の空き家再利用プロジェクト」や、それを含めた福利厚生100個導入までのカウントダウンに注目しています。

――注目されているポイントは?

直江
さん
福利厚生の数もさることながら、ただやみくもに導入するのではなく、研修の一環として社員を巻き込みながら企画・導入を進めておられる点に、徹底した社員ファーストを感じます。社会貢献にもつなげていくなど、福利厚生の取り組みを「働きやすさ」のみならず「働きがい」の向上にまで昇華されている点が素敵だと思います。

株式会社ペライチ

「テクノロジーをすべての人が使える世界に」をビジョンに、ホームページ制作SaaS『ペライチ』を運営。『ペライチ』はWEB予約や決済、メルマガなどのビジネスに必要な機能が「誰でも・簡単に・低価格で」利用できるオールインワンサービス。他にも、お客さまの集客を支援する『ペライチなんでもマーケット』、NotionベースのWebサイト制作サービス『Wraptas』の運営も行う。スモールビジネスの成功をトータルにサポートするサービスを提供することで、「起業・副業」を志す人にとってインフラとなることを目指している。

株式会社ライフェックス 飯嶌孝之さん
「仕事もプライベートも充実させる環境づくりをしています」

飯嶌孝之さん

2022年1月にライフェックスに参画し、人事の責任者として中途採用の推進、評価制度やフレックスタイムの導入など、人事制度の構築に取り組む。また、労務にも幅広く関与し、組織の人事全般を経験する。人事歴は10年。座右の銘は、「今が変われば未来が変わる」。

――従業員の定着率向上のため、どんな取り組みを行っていますか?

飯嶌
さん
「仕事もプライベートも100%充実させる」を目指し、『ワッフル(Work fullness)制度』を導入しています。この制度を通して、メンバーがより多様な働き方を自律的に選択し、仕事とプライベートどちらも充実させ、生き生きと働ける環境づくりをしています。
 
働き方に関しては、月間総労働時間の範囲内で1日の働き方を自由に決められるスーパーフレックスや、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークを導入し柔軟性のある働き方を実現しています。昨今では、メンバー自身や家族の誕生日に使える特別休暇「LOVE休暇」を付与し、プライベートを大切にしていける施策も導入しました。

――働きやすい環境づくりに注力されているんですね。

飯嶌
さん
そうですね。あとはキャリアアップ支援にも注力していて、ピアボーナス制度や書籍購入支援制度などがあります。ピアボーナス制度では、社内ポイントを通じてメンバー同士がお互いに感謝を述べたり、成果に対して賞賛したりすることで、社員同士の繋がりを強化。書籍購入支援制度では、社員が自己啓発の一環としてビジネス書籍を選ぶ際に、全額を会社が負担することで学びの機会を広げています。

――従業員の方からの反響はいかがですか?

飯嶌
さん
弊社は、有子率が7割と非常に高く、男女を問わず家庭や育児に積極的に取り組むメンバーが多いのが特徴です。そのため、「子供の病院付き添いや家族の体調不良などの際に柔軟な働き方ができて良かった」という声をよく聞きます。

また、採用時においても、自身のキャリアを追求しながら子育てを進める環境が整っているという点が、入社時の意思決定を後押ししています。

――実際、どのくらい定着率は改善しましたか?

飯嶌
さん
制度導入後、メンバーからフィードバック調査を実施しました。その結果、100%のメンバーが制度に賛同してくれました。

具体的な定着率の改善についてはまだデータを取得していませんが、メンバーの家族からは「柔軟な働き方ができることが助かっている」という声も寄せられていて、生活スタイルや家庭の事情に合わせた柔軟な働き方を選択できることは、定着率に対してポジティブな効果を持っているのではないかと考えています。

――客観的にみて、成功した要因は何だと思いますか?

飯嶌
さん
制度を作って終わりにするのではなく、その制度をしっかりと活用し、自分自身や家族に対してプラスの側面を残すことが重要だと考えています。そのため、活用シーンを具体的に定め、より現実に即した運用ルールに変更したことが大きかったです。

――運用ルールの変更は、具体的にどんなことをされたのですか?

飯嶌
さん
例えば、スーパーフレックス制度を導入する際には、試験期間を3カ月設け、意識的に活用を促しフィードバックを受けて運用ルールを調整しました。その結果、業務の中抜けを反映できる勤怠管理システムに変更したり、許可制だと突発的な体調不良に対応できないという意見を受けて自主的にカレンダーでスケジュールを共有できるルールに変更したりと、柔軟な運用に向けた改善を行いました。

――なるほど。では、他社の従業員の定着率向上のための取り組みで、気になるものはありますか?

飯嶌
さん
「働きがいのある会社」ランキングで、6年連続の1位を獲得している株式会社コンカー社のフィードバックをし合う文化には興味があり、書籍も読ませてもらいました。上司部下関係なく社長に対しても伝え合うことで、成長を促す仕組みとして醸成されています。

――注目されているポイントは?

飯嶌
さん
ポジティブな意見もネガティブな意見すること、聞き入れることが当たり前のカルチャーを作っています。コミュニケーションを適宜取り、成長につながっていく文化は魅力的です。
また、ネガティブなフィードバックでも相手の課題に対して常にオープンな関係でいられるため、不平不満やストレスを溜め込むことがないという点がとても気になりました。

株式会社ライフェックス

EC・D2Cブランドを対象に、ブランディングから新規獲得(広告運用・PR)。リピート顧客育成(CRM)まで一気通貫で支援を行うマーケティングプロデュースカンパニー。各領域コンサル事業の他、LINEのCRMツール『LIneON(ラインオン)』やCRM担当者を養成する『みんなのCRMアカデミー』のサービスなどを軸に、長く愛されるブランドにするため(LTVの最大化)の支援を強みにしている。「衣・食・住・遊を通し、毎日がハッピーでワクワクするカルチャー及びライフスタイルを創る」というパーパスを掲げ、マーケティング支援だけでなく、対峙する企業や人のカルチャーやライフスタイルにまで携われる存在を目指す。2009年に創業してから300社以上の支援を行っている。

変な商社株式会社 田中毅さん
「会社のハブとなって、不安、疑念、不信を地道に解消します」

田中毅さん

大学中退後に、大手メーカーのグループ会社にてIT営業として社会人デビュー。その後、社内組織のあり方に疑問を持ち人事へ異動願を出すも叶わず、人事の近道になるであろう転職エージェントにキャリアチェンジ。様々な企業の採用を支援しつつ、したたかに人事になる道を模索して6年目、組織コンサル企業で人事責任者を拝命。その後紆余曲折あり、現職。座右の銘は、「押してはいけないボタンは、一回押してみてから考える」。

――従業員の定着率向上のため、どんな取り組みを行っていますか?

田中
さん
従業員もヒトであり、仕事もプライベートも人並みに悩みや葛藤を抱えながら日々過ごしているため、話せる範囲でコミュニケーションを取り、鍵となるワードを感じ取りつつ、不安、疑念、不信を地道に解消し取り払っていくことがシンプルかつ、効果的な施策になると思っています。

なので、人事は社内をウロウロしながら、従業員一人ひとりの変化を感じ取る事ができるように気を配っています。

――人事としてどのように社員とコミュニケーションを取っていますか?

田中
さん
まだ6月に着任したばかりなのですが、6月の2週目から徐々に浸食をしていきました。私の強みは、鬼のようなポジティブさ。ケタケタと笑いながらコミュニケーションを取り、私自身がどんなヤツかをまず知ってもらいました。今ではみなさん陽気に迎え入れてくれて、徐々に業務の相談など話してくれるようになりました。

――実際の手応えはいかがですか?

田中
さん
着任したばかりなので成果自体は出ていないですが、よほどの出来事がない限り今のメンバーは3カ月、いや6カ月、いや1年は在籍してもらって、この「変な商社」という一風変わった会社を盛り上げてくれると信じてやみません。

――田中さんは、変な商社の新風になりそうですね。

田中
さん
これまで社長と従業員の間で僅かばかりのズレがあるように思えた部分を新参者の私がハブとなり、意味を曲げることなく通訳して伝えることで、従業員は社長の、社長は従業員の思いを少しずつでも感じ取ってくれていると思っています。
大げさに聞こえる、もしくは大層なことをやっていると文字だけ見ると思うかもですが、大したことはしておらず、ただ報連相の仲介をしているだけなんですけどもね。これが意外と絡まりそうな紐が絡まずにいれるような気がしていて、人事という社内で一番フラットな立場を利用してやっています。

――他社の従業員の定着率向上のための取り組みで、気になるものはありますか?

田中
さん
某セリーグ球団オーナー企業で今もあるかわかりませんが、シェイクハンド異動は面白い取り組みだなと思いました。これはマンネリ化した社員や挑戦したい社員が異動したい先の部署の責任者にプレゼンして握手できたら異動ができるという仕組みですが、数年前の自分が転職活動していた時にエージェントの方から聞いて、面白いことする会社だなぁって印象に残っていました。そういった面白い取り組みにも挑戦できたらいいなと思っています。

変な商社株式会社

旅行会社H.I.S.発のツーリズム系専門商社として2017年に創業し、現在7期目を迎えたベンチャー企業。ツーリズム商事事業として国内約400施設のホテル・旅館・テーマパークに向けたアメニティから電化製品、家具、雑貨、オリジナル商品などの物販を主軸に、テーマパーク事業から派生してイベント企画・運営や自社ECサイト、社内カフェ&バーの運営など幅広く展開する。「変わった社名」と言われる「変な商社」の「変」は変化の変に由来。旅行業界、宿泊業界のみならず、ツーリズム業界全体の総合商社として変化・進化を起こしていく。

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