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エッセイスト・りょかちの私を変えたお金のハナシ#02「投資は、推し活のように」

エッセイスト・りょかちの私を変えたお金のハナシ#02「投資は、推し活のように」

IT企業に務めながら副業コラムニストとして活動し、今年6月にエッセイスト・ライターとして独立したりょかちさん。小学生の頃にヤフオク転売でインターネットデビューを果たし、大学時代にファイナンスを学んだことからも、「案外、お金が好きなのかもしれません」と言います。そんなりょかちさんの“お金にまつわるエピソード”をお届けする今連載。第2回は「株式投資」についてのハナシ。

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前回の記事で、お金に対する価値観が変わった話を書いたが、その前に自分に訪れた転機がもうひとつある。

浪費癖を少しでもマシにするために、株式投資を始めたのだ。

ここ数年、コロナ禍の到来とともに、『20~30代の投資ブーム』が話題になっていた。ブームというのはだいたいが複数の要因によって生まれるものだが、きっとこのムーブメントもそうだ。もちろん、外出自粛の流れによってこれまで使っていた外食費や服飾費などが浮いたことも理由にあるだろうし、海外でいう“ロビンフッド”、日本でいう“LINE証券”など気軽に証券を購入できるサービスの登場もこのムーブメントに寄与したに違いない。そしてそもそもここ数年、株式市場が好調だったことも、この投資ブームを牽引したと言ってよいだろう。

私といえば、証券アプリを友人がやっていたところから株式投資への興味がはじまった。前提として、数年前からつみたてNISAやiDeCoははじめていて、そういった「とりあえずやったほうがええんやろうし、やっとこか」以上のことを意識し始めたのがこのタイミングだった。

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証券アプリを開くと、様々な商品が並んでいる。

任天堂、日本マクドナルドホールディングス、メルカリ、ソニーグループ、日本たばこ産業。
S&P500、全世界インデックス、コモディティインデックス、NASDAQ100。

個別株といわれる特定の企業の株もあるし、投資信託という特定のテーマでセット売りされた複数の株詰め合わせパックのような商品も売っている。

「わあ、ショッピングモールみたい!!」

そう思った。それぞれの商品を眺めるだけで、好奇心がこんこんと腹の底から湧いてくる。

買い物の楽しみとは一体何か? 人それぞれだと思うが、私の場合は、好奇心が満たされることと、毎日に新しい要素を増やせるということが何よりも楽しい。

「これってどんな味がするんだろう……」「肌がつるつるになるって本当かな?」と思ったら、周辺の知識を検索して、試さずにはいられない。そしてその結果を自分で検証していくのもまた楽しい。

それに、購入品は、毎日に彩りを与えてくれる。毎日が、購入品の分だけ新しくなる。新しい服を着た私が日常に登場!するし、新しいゲームをする時間が登場!(任天堂ゲームの宣伝風)する。日常に新しいダンジョンが現れるのだ。

たいてい株式は、100株などまとまった単位でしか購入ができず、数万円から数十万円ほどするものなのだが、最近の証券サービスは1株から購入できるオプションを用意してくれるところも多い。数千円で、どこかの企業の株主になれてしまうわけである。

数千円で買える株式が並ぶ証券サービスのTOPページ。「あの企業は、私が好きなアニメを作ってる会社」で、「この会社の社長が出てたドキュメンタリーは面白かった」。そんなことを思い巡らせながら、最初は証券サービスを作っている友人を応援する気持ちで、好きなWebサービスを作っている会社の株式を1株分2,000円ほどで購入した。

そこからは、買い物の楽しみを満喫できる毎日がはじまった。

たいした金額ではないので、そこまで心を動かされるわけではないけど、購入した株式の値動きをチェックするようになった。株価が上がっていると、「私の推し、頑張ってるなあ」と嬉しくなった。あまりにも値動きが大きいときには、関連したニュースを検索するようになった。それによって、世の中のニュースを見る視点がひとつ増えた。

普段新しいコスメや洋服を購入しても目新しいのは数日だけど、株式は毎日私に新しい発見をくれた。そこで、ほかの“推し企業”にも課金してみることにした。それぞれ数千円ずつ。

そのうち、なんとなくネットショッピングで新しい商品に手を伸ばしかけても、「推しに課金したほうが楽しいしな……」と思うようになった。

株式市場が好調だったのもあって、嬉しい気持ちになることも多かった。しかし当然、びっくりするような値下がりを経験することもある。個別株は、投資信託などに積立投資するケースよりもリスクが高い。しかし、少額しか投資してないのもあるし、そもそも数値が悪いからという理由で売るつもりもないし、元々はよくわからない浪費に使っていたお金なので、あまり気にすることはなかった。

ただ、毎日推しが頑張ったり、苦難に陥ったり、それを乗り越えたりするのを見ているのが楽しかったのだ。値動きを見て、推しのニュースを覗いて、「このニュース、株主の皆さんはこう反応するのか〜」と考えるのも面白かった。

同じく少額から推し企業に投資した友人は名言を残している。「推しに課金しているのにお金がなくならなくてすごい」。そうなのだ。世紀の大発明である。こんなに毎日推しが頑張っているのを見て楽しいのに、そのエンタメを受け取っているのに、何故かお金がなくなっていない!!!!(時々減るけれど)

私はすっかり、すぐに消えてしまう楽しみにお金を浪費するよりも、少額でも推しを応援する気持ちで株式を買い、毎日推しが残している成績を眺めるのにハマってしまった。

そうして始めた実際の投資成績は、まずまずの結果を残している。やはり元々知識もあり、情報を調べながら購入しているIT企業への投資はうまく値上がりしているものが多いが、「社長が好き」とか「このブランドが好き」という理由で購入した株式については当初より値段が下がっているものもたくさんある。

世の中には、投資で儲けるためのノウハウ情報がたくさんある。当然、私もお金持ちになりたいし、全く儲けようという気持ちなしに投資をしているわけではない。だけど、そもそも株式投資というものがすごく楽しいものだと気づくことができたのは自分にとって嬉しい発見だった。

シンプルに、株式投資とは、株式を取得することによって企業を応援することだ。企業が創ろうとする社会を支援することでもある。誰かを応援するって楽しい。そして、誰かを応援していると、自分の視点も開けてくる。私もさまざまな推しを応援している間に、世の中のニュースに興味を持つようになった。

万人に自分と同じマインドでの投資をすすめるわけではないし、やっぱりリスクもあることなので、ご利用は個人の判断で!なのだけど、伝えたいのは“儲かることがすべて”ではなく、プロセスも楽しむ方法もあるということである。

応援する楽しさも、応援することで自分が変わっていく楽しさも、ヲタクの人なら知ってるはずだ。自分が好きな社会を創っている企業に投資することで応援する楽しみを味わえる“推し活投資”は、その営み自体がエンタメだったのである。株式投資は思いがけず、期待する誰かを応援するという楽しいお金の使い方を教えてくれた。

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒業。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題に。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、企業のコピーライティング制作なども行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。朝日新聞、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで記事の連載も。

Twitter:https://twitter.com/ryokachii
note:https://note.com/ryokachii/

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