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エッセイスト・りょかちの私を変えたお金のハナシ#03「仕事で大切なことは、小5の時にハマったネットオークションがすべて教えてくれた」

エッセイスト・りょかちの私を変えたお金のハナシ#03「仕事で大切なことは、小5の時にハマったネットオークションがすべて教えてくれた」

IT企業に務めながら副業コラムニストとして活動し、昨年エッセイスト・ライターとして独立したりょかちさんの“お金にまつわるエピソード”をお届けする今連載。第3回は、「小学5年生で始めたネットオークションが教えてくれたお金と仕事の価値観」のハナシ。

■連載
#01「お金で手に入れる『自由』の意味が変わった日」
#02「投資は、推し活のように」

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あなたのインターネットはどこから? 私はネットオークションから。

1980年代後半から1990年代前半にかけて生まれた、いわゆる “ミレニアル世代” といわれる世代は、子供時代に “黎明期のインターネットにデビュー” する経験をしている。それは、当時まだメールしかない携帯から絵文字で精一杯自己表現した経験だったりするし、あるいはもっとディープに、自分で作ったイラストをホームページ(通称ホムペ)に載せていろいろな人からコメントをもらってヒーローになったことだったりする。

私はIT企業で長く働いているので、とくに周りは、黎明期のインターネットに触れた経験が、その後の人生に大きく影響を与えている人たちも多い。例えば、さきほど言及したイラスト職人は、今やデザイナーとして大活躍していたりするし、パソコンゲームに熱中していた少年が、おとなになってヒットゲームを作っていたりする。

多くの人が“未知との出会い” や “新たなつながり” に惹かれてあの頃のインターネットに触れ、そのワクワクをエンジンに今も仕事に精を出している。

一方、私がインターネットを始めた原動力は「お金」だった。

田舎の道端での、キラカードの出会いが、私の毎日を変えた

小学生の頃から容赦なく我が家でいわれていたのが「欲しい物は自分で買いなさい」だ。

明らかに高価でお小遣いで買えなさそうなものでも、「買って」とねだると「ほしいなら自分で買いなさい」と言われるのだ。だから私はお手伝いをしてお金を稼いだりしていたのだが、そのうちジャニーズにハマり、小学校5年生の私は常に資金難に陥ることとなった。毎月の雑誌代やコンサートの費用、初回限定版DVDなど、推し活にはお金がかかる。

そんな時、今となっては全く意味がわからず、お金の神様からの恵みとしか思えないのだが、田舎のだだっ広い道の真ん中で、人気アイドルのキラキラカードが落ちているのを見つけたのである。アイドル全般に精通していた私は思わず「なんでこんなレアカードがここに……」と呟いたが、数時間経っても誰も取りに来ないので持って帰ることにした。

父にレアカードが落ちていた話をすると、数日後、ネットオークションで売ることを持ちかけられた。拾ったものなので気が引けたが、好奇心には勝てなかった。そして、ネットオークションをはじめた数時間後、私は無料で拾った定価300円のキラキラカードが800円(=毎月買っているアイドル雑誌1冊分の値段)で売れる快感を覚えてしまうのである。

次の日から、私はネットオークションのリサーチを始めた。

ネットオークションでは、如実に世の中のトレンドがわかる。人気のタレントのグッズは軒並みSOLD OUTになっているし、中でも人気のメンバーのグッズは高額取引されている。

独自の言語も覚えた。その世界の言語を覚えたら、住人になれるというのは本当かもしれない。今でもメルカリに残っているような言葉「即購入可」「神経質な方のご購入はご遠慮願います」「素人保管のため、気になる方はご遠慮ください」など、出品している人が使う独特の定型文は当時から存在していたし、商品写真もその頃から品質がわかるものでありつつ、きれいな商品だと感じられる明るい写真が複数枚存在していることが重要だった。

そうしてネットオークションの世界の理(ことわり)を知った私は、次の月には、父のサポートを受けながらアイドルグッズをネットオークションで売り始めた(当時はネットショップよりネットオークションのほうがメジャーだった)。アイドル雑誌を購入してお目当てのグループ以外の記事を切り抜いて冊子にしたり、友人や妹からいらなくなったグッズを安く引き受けて売ったり、過去に推していたグループのグッズを売っていくうちに、商品タイトルを工夫したり、写真を工夫したりして、安定的な収入を得始めた。ヲタクたちにヲタグッズを売り、その利益で自分の好きなヲタクグッズを買う生活。

最終的にヲタ卒したときには、ヲタクグッズを全て売り払って、はじめての大きな買い物である“アコースティックギター”を自分で稼いだお金で購入した。

工夫をこらした商売でコツコツお金を貯めて目標金額に達した喜びと、それがギターに変わったときの嬉しさは忘れられない。人生の中でもいまだにひときわ鮮やかな良い思い出となっている。

「はじめてのあきない」が教えてくれたこと

ふとしたことから始めたネットでの商売だったが、意外とこの経験は、私に沢山のことを教えてくれたと感じている。

まずは、「自分の発信を改善する楽しさ」。どんな写真がウケるのか、どんな文章なら安心してもらえるのか、どんなコミュニケーションをすべきなのか。ほかの事例を調べながら実践していく。

こういった楽しさが、私をWEBでツイート文を書いたり、文章を書いたりする楽しさに導いてくれたのではないかと思っている。さらには、そうして「試しながら成功体験を得ていく」楽しさは、IT企業で働く姿勢にも活きた実感がある。

それから “好みや状況の多様性” との付き合い方を教えてくれたのもこの体験だ。

ヤフーオークションやメルカリなどのサービスは、基本的には “欲しい物の多様性” によって成立している。

ランダムに個別メンバーの商品が当たるグッズを購入したりして、望まない形で手元にやってきた、私が好みじゃないアイドルのグッズを誰かが購入する。誰かのファッションの好みが変わって、“かわいい”と思えなくなった服を誰かが買う。

同じものに対して、欲しい人もいればいらない人もいるし、それに500円の価値しか感じない人もいれば、3万円の価値を感じる人もいる。“こういうものが良い”という基準は絶対的ではなく、人それぞれで違っていて、その熱量はピュアで尊く、他人が口出しできるものではない。みんな違って、みんないい。綺麗事じゃない、その言葉の価値が、シンプルな売買の中には存在する。

世の中のだいたいどんなものにも、どこかに求めている人がいる。その人に商品が見つかるように工夫しながら、文章や写真やコミュニケーションを工夫する。そういった楽しさを、はじめてのお店屋さん経験で私は学んだのである。

あなたの”お金を生み出す楽しさ”はどこから?

最後に、この経験が教えてくれた大事なことのもう一つは、「お金を得る活動の楽しさ」ではないかと思う。

私はこの経験を通して、「誰かが欲しいグッズを譲って、自分が他のヲタグッズを買えるなんて最高!」、つまりは、誰かの役に立ちながら自分も利益を得る楽しさを知った。

インターネットデビューと同じように、誰しもが「はじめて自分の力でお金を得た体験」があるはずだ。私の場合はそれがインターネットで不要なものを売ることだったが、人によってそれが誰かを笑顔にするために奮闘したり、仲間と協力して利益を得ることだったりするのだろう。

そしてそれは、インターネットの思い出よりもより一層多くの人にとって、その人の「仕事論」につながっているのではないだろうかと思う。仕事論といえばかっこつけたように聞こえるが、つまりは、「誰かが喜んでくれる“価値”を生み出す楽しさ」だ。

私にとってもいまだに、誰かからお金をもらう“仕事”とは、「その人が本当に欲しいモノを見極め、精一杯相手にとっての価値を最大化するように尽くしながら提供する」ということなのである。

仕事は楽しい。

辛いことがあっても結局その結論にたどり着く理由の数%は、この時ゲームのようにして商売を楽しんだ経験があるのかもしれない。

あなたに、「お金を稼ぐことの楽しさ」を教えてくれた思い出はどんなものだろうか。ピュアな気持ちではじめて向き合った“あきない”は、純粋に誰かの役に立つ喜びを教えてくれる。そこには、あなたの仕事論の原点があるかもしれない。

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒業。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題に。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、企業のコピーライティング制作なども行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。朝日新聞、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで記事の連載も。

Twitter:https://twitter.com/ryokachii
note:https://note.com/ryokachii/

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