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りょかちのお金のハナシ#11「高いものを身につけるのにもワケがある」

りょかちのお金のハナシ#11「高いものを身につけるのにもワケがある」

エッセイスト・ライターとして活躍するりょかちさんが、“お金にまつわるエピソード”をお届けするこの連載。今回は、ブランド品を身につけることで気づきを得たハナシ。

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フリーライターになって、ブランド品を身につけるようになった理由をTwitterで書いてみたら反応が良かった。

この考えは、何も自分で思いついたわけではない。駆け出しのフリーライターの頃、書籍発売に合わせて大物ビジネスマンに取材する機会があり、そこで売れっ子書籍ライターの方に声をかけられたのだ。

あなた、実績よりも小さい人間に見える。自分が信頼に足る人物なんだったら、それをアピールしたほうが良いよ。例えばブランド品を身につけるとか

私は時々取材も担当するのだけど、インタビュアーという仕事は非常に難しい。取材が終わるといつも、じっとり汗をかいている。

インタビューが上手な人は本当にすごいスキルをお持ちだと思う。もちろん事前に資料は読み込んでいるものの、相手にとって私はほとんどの場合が初対面で、与えられる時間は1〜2時間ほど。そこで心を開いてもらって、楽しい話を引き出さねばならない。

それゆえに、この先輩からのアドバイスは「なるほど!」という気持ちになった。限られた時間で信頼を勝ち得ないといけないからこそ、 “自分はちゃんとした人間だ” ということを語らずとも見た瞬間にわかってもらえるなら、こんなにありがたいことはない。

その日からしばらくして、私は仕事用のバッグをイタリアのラグジュアリーブランド・MARNI(マルニ)で新調した。

その時に購入したMARNIのバッグ。2時間くらい悩みました(笑)

“高いもの身につけている” という事実が与える印象アレコレ

しかし、どうしてこんなツイートを急にしたかというと、その話を眉毛サロンで思い出したからである。

その日は、眉アートメイク(皮膚の浅い部分に着色するタトゥーの一種。数年持つので何年か眉メイクしなくていい! 朝もっと寝ていられる!)を我が眉毛に施しに眉サロンに初めて訪れたのだが、“日本のトップ眉アーティストを集めたサロン” をウリ文句に掲げる場所で、私の担当になったのがフリーランスとして活躍するアーティストさんだった。

その耳には、日本発のラグジュアリージュエラー・TASAKI(タサキ)のバランス(30万円くらいするピアス)がキラリ。

「変な眉になったらどうしよう。施術後、数年は直せないのに……」と思っていたが、このバランスを見た途端に「きっと人気アーティストなんだろうな。この人に任せればきっと大丈夫や!」とのんきに安心して、眉毛を捧げて施術中はぐっすり眠った。実際、心から満足する仕上がりになったのだが、我ながらあまりにもゲンキンな女である。

しかし、初対面の相手で「○○会社」みたいな後ろ盾もないケースにおいては、 “きちんとした身なりをしている” ということがものすごく信頼感につながることがわかった。

一方で、この話を友人と一緒に運営しているPodcastでしている時におもしろい話を聞いた。それは、上場前のスタートアップで働いていると、「会社にお金がない状況なのに、良い服を着れるのはなぜ?」と思われることがあるので、逆に“ブランド品は着づらい” という話だ。

私も一度だけハイブランドのジュエリーを20代の頃にもらったことがあり、すごく嬉しかったけれど、メディアに出る時なんかは「若いのに一体どうしてそんな高価なもの持ってるの?」と思われるのがめんどうで全く身につけられなかった。

“高価なもの” を身につける、そのメッセージを読み取れるオトナになっていきたい

身につけるものは「高価だ」「安物だ」という見方だけで見られるのではない。

この間、三菱一号館美術館で開催されていた「ガブリエル・シャネル展」に行ったところ、シャネルはまさに社会進出する女性の象徴のようなブランドの変遷をたどっていることがわかった。シャネル展に訪れていたマダムのうち1人が、「私、シャネルのスーツって大好き。生地が気持ちよくて、背筋がシャンとするのよね」と話しているのを聞きながら展示を回った。シャネルというブランドが持つ意味を、私はその時やっとわかった気がした。

また別の人に聞いた話だと、「私はエミリオ・プッチを着た女性が好き」と憧れの人が言っているのを知り、エミリオ・プッチで全身揃えて、その人に会いに行ったことがあるそうだ。

冒頭のツイートが拡散された時、とある人が「身につけるものはコミュニケーション」という話をしていた。TPOという言葉があるけれど、オシャレコミュニケーション上級者はさらに細かいコミュニケーションをそのビジュアルでやりとりしているようだ。

「安いものにはワケがある」という言葉があるけれど、「高いものを着る人にはワケがある」のかもしれない。

今年、30歳のお祝いに、親が特別にプレゼントをくれるというので、カルティエのトリニティを買ってもらった。3本のリングからなるデザインだが、それぞれには「愛」「友情」「忠誠」という意味が込められている。私はそのリングに自分なりの意味を込めていて、付けていくシーンにもそれなりの意味を持たせている。

突然の親からのプレゼント。こんな高価なものを親にもらえるなんて。ありがとう!

ブランド品を普段使いするほどの資産を持っているわけではない私にとっては、やっぱりブランド品を身につける時は “特別”だ。

ブランド品が似合うのは年齢を重ねてからという言葉があるが、値段だけではなく、その文脈を背負えるようになるからかもしれない、と最近は思う。

だからというわけではないけれど、たとえ万が一大金持ちになったとしても、「高い」「安い」以上の意味が込められたこのハイコンテクストなコミュニケーションを、発信だけではなくきちんと受信できる人になっていきたいと思う。

ハイブランドのものが似合うオトナになりたいと願うのはもちろんだが、そのメッセージをきちんと理解できるオトナにもなりたい。

きっとそこには、「高いものを見せつけたい」という意味以上のメッセージを読み取られるのが待っているのだから。

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒業。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題に。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、企業のコピーライティング制作なども行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。朝日新聞、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで記事の連載も。

Twitter:https://twitter.com/ryokachii

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