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「起業までのRunway」HIS創業者直伝の経営塾“澤田経営道場”コラムvol.02『意志のある・なしで、起業はどう変わる?』(ゲスト:守屋実さん)

「起業までのRunway」HIS創業者直伝の経営塾“澤田経営道場”コラムvol.02『意志のある・なしで、起業はどう変わる?』(ゲスト:守屋実さん)

若手起業家を育成する澤田経営道場で、起業に向けて日々勉強に励む山下楓美香さん。前回は澤田経営道場事務局長の渡邉拓斗さんに、起業家の心構えと身につけるべき7つのスキルを聞きました。

起業家にとって一番大切なのは「意志」だと学んだ山下さんが詳しい話を聞くために訪ねたのは、”起業のプロ”として50以上の起業・新規事業立ち上げに携わった守屋実さんです。第2回では、意志が起業にどう影響するのか、意志以外の要素をどう集めればよいのかを守屋さんから学びます。

澤田経営道場とは?

株式会社エイチ・アイ・エスの創業、スカイマークの設立、ハウステンボスの再生などの実績を持つ、日本を代表するベンチャー経営者の澤田秀雄さんが2015年に設立した人材育成道場。澤田さんが経営者として学んだこと、経験したことを後進に伝え、世界で活躍できる起業家、次世代リーダー、政治家を生み出すことを目的とする。内閣府認定の公益財団法人SAWADA FOUNDATIONが運営。


澤田経営道場ホームページ:https://sawadadojo.com

起業には困難がつきもの。乗り越えるには意志が大切!

第2回のゲスト講師は、「起業は意志が10割」(講談社)の著者で、“起業のプロ”の守屋実さん!
山下
さん
実さん、お久しぶりです! 澤田経営道場の座学研修でお世話になって以来ですね。
守屋
さん
元気そうだね。渡邉さんから話は聞いてるよ。起業に大切な「意志」の話を聞きたいんだって?
山下
さん
そうなんです。渡邉さんから、起業家には意志が一番大切だと教わりました。「起業のあらゆることには起業家の意志が反映されるので、意志がなければ成り立たない」って。
守屋
さん
そりゃそうだよね。誰かに言われてやるのとは違うんだから、自分が「やりたい」って意志を持たなければ動き出せない。起業家が動かなきゃ誰が動くんだ、って考えてみれば当たり前のことなんだけどね。
山下
さん
言われてみたら、確かにそうですよね。
守屋
さん
それに事業を始めるとさ、「手伝うよ」って言ってくれた人が手伝ってくれなかったり、「いいね、使いたい」と言ってくれたお客さんが注文してくれなかったり、そういうことが山ほど起こるんだよ。

それでも熱量を落とさず突き進むには、外部要因じゃなくて自分自身の中に原動力を持っておかなくちゃいけないんだ。
山下
さん
外からどんな困難が降りかかっても、自分で自分を支えられるようにしないといけない、ということですね。

「意志が持てない人は〇〇すべき」起業のプロの秘策とは

山下
さん
以前は、起業の意志って「世界平和に貢献する」とか「人の命を救う」とか、大きく立派なものじゃなくてはいけないと思っていました。

でも実さんの研修でほかの起業家のみなさんの話をいろいろ聞いて、「意志って人それぞれでいいんだ」「小さい気持ちを大事にすることが大切なんだ」と感じたんです。
守屋
さん
意志は理屈じゃなくて感情だからね。それで本人が動き出せるのであれば、どういう形でもいいんだよ。

どんなに小さくても何かを解決したいという意志を持ったなら、困っている人の話をとことん聞いてみればいい。それを何度も何度も繰り返せば、揺るぎない原体験になる。「この人達を助けたい」「自分なら力になれる」という意志も強くなって、自分ゴト化して本気で取り組めるようになってくる。
山下
さん
困っているのは他人でも、自分ゴトとして捉えるのが大事なんですね。
起業家に必要な「意志」について理解を深めていく山下さん
守屋
さん
だって他人事だったら、少しでもうまくいかないことがあれば、その時点でイヤになっちゃうでしょ。それじゃ事業を続けられないよね。
山下
さん
あくまでも「自分がやりたいんだ」という強い意志が、壁にぶつかった時に支えてくれるんですね。
守屋
さん
強い意志が大事という話をすると、起業の経験がない人ほど「意志とはどういうことですか」「どのくらい強い意志があればいいんですか」って、言葉の定義や定量的な指標を求めたがる。だけど、それはつまづきの始まりだと思う。

意志なんて自然に持つものであって、感情に正解なんてないんだから。
山下
さん
「何かをしたい」という気持ちは数値で測れるものではありませんもんね。
守屋
さん
もしここまでの話にピンとこないようなら、自分を起業へ向けて突き動かすような意志を持ったことがないんだと思うよ。そういう熱い意志を持ったことない人は、意志を持って何かに打ち込んでいる人の近くで手伝いなり、ボランティアなりしてみればいいんじゃないかな。
山下
さん
意志を持った人の働き方を間近で見て感じ取るということですか?
守屋
さん
そう。人はおのずと周囲の人に影響を受けるから、その人の熱量をもらって自分の意志を持てるかもしれないし、その人の意志に心打たれて共に行動するようになるかもしれない。

もしくは、「やっぱり自分にとって起業はちょっと違うな」って思うかもしれない。それで会社勤めを選ぶのも、僕は全然いいと思う。
山下
さん
起業を諦めてしまうということですか!?
守屋
さん
自分で「こうしよう」と考えてそう決めたなら、それもいいんじゃない? 起業するほうが偉いだなんて妄想だしね

世の中に「サラリーマンはつまらない」って言う人が多いからつまらなく見えるだけで、やりたいことをやるには大企業って有利の塊だよ? 知名度も人脈もノウハウも、自分でゼロから積み上げる必要がないんだから。
山下
さん
た、確かに……。自分で起業するだけが道じゃないってことですね。
守屋
さん
どの道を選ぶにしても、大切なのは自分の体を動かして、自分の心で感じて、自分の頭で考えること。自分のオーナーは自分自身だからね。

意志を原動力として、次に必要なのは「コト・ヒト・カネ」

守屋
さん
ここからは、自分の意志で起業の道を選んだ人向けの話をしていくよ。
山下
さん
はい、 お願いします!
守屋
さん
原動力として意志は大切だけど、もちろん意志だけがあればいいというわけじゃない。起業の段階が進めば、ほかの要素も必要になってくる。

ひと昔前は「ヒト・モノ・カネ」なんて言ったものだけど、今はモノよりコトかな。必要になる順番でいうと、「コト・ヒト・カネ」だね。
山下
さん
コトは売るコト・やるコト……、つまり詳しい事業内容、ヒトは一緒に働く人、カネはお金ですよね。
守屋
さん
そうだね。忘れちゃいけないのは、意志がなければ「コト・ヒト・カネ」があっても意味がないということ。

逆に言えば、「コト・ヒト・カネ」がないからといって、意志があれば起業を諦める必要はないということなんだ。「コト・ヒト・カネ」は必要に応じて集めればいいんだからね。
山下
さん
最初から全部必要なわけではないんですね。安心しました。
守屋
さん
意志の次にまず必要になるのはコト。意志をどう実現するのか具体的にしていかなければ、周りの人の共感を得るのは難しいからね。意志を実現するための具体的な作戦や手順の案が必要になる。
山下
さん
意志をどうやって実現するつもりなのかを、周りに説明できるくらい具体的にする、というわけですね。
守屋
さん
事業の構想を周りにきちんと伝えていくと、必ず共感してくれる仲間が現れる。周りっていうのは2、3人に話すだけじゃないよ。意志が続く限り100人でも200人でも語り続けるんだ。

最初にも言ったけど、「手伝うよ」って言ってくれる人はいても実際に手伝ってくれる人ばかりではないからね。
山下
さん
う、う、う。ちょっと切ないですね。それこそ、意志がないとくじけてしまいそうです。
守屋
さん
これは“起業あるある”なんだ。でも、共感してくれる仲間は必ず現れる。1人でできることは限られてしまうけど、仲間が増えると景色が変わるよ。

そうして人が集まって事業が動き始めると、さすがにお金が必要になってくるよね。
山下
さん
現実的な問題ですね。
守屋
さん
資金不足は事業にとって致命傷になるので非常に大事ではあるけど、大前提として意志と「コト・ヒト」があるからこそ、資金を活かせるんだということを忘れないようにしてほしい。

具体的な資金調達の方法については、専門の先生に任せようかな。
山下
さん
はい、今度詳しく聞いてみます!
守屋
さん
「コト・ヒト・カネ」が揃って事業の規模が大きくなってくると、理念に共感する人だけではなくて、単純に生活のツールとして働く人も当然増えてくる。その人が悪いというわけではなくて、企業と労働者の関係ってそういうものだからね。そうなると、そういう人も含めた組織のつくり方が大切になるんだ。
山下
さん
それまでと同じではダメなんですか? どうしたらいいんでしょう。
守屋
さん
組織をつくるには、起業家個人の意志を企業・組織の意志に昇華させる必要がある。起業家本人はもちろん意志も熱量もあるし、それが起業家にとってとても大切なことはここまでに話したよね。

でも、一人だけで突っ走りすぎてしまうと、組織としてはうまく機能しない。当然組織内で熱量の差はあるし、下手したら社長だけ一人で空回りして周りは一切動いていないという事態もありうるからね。
山下
さん
自分がどうしたいかだけではなく、組織としてどうしたいかを考えなくてはいけないんですね。

意志を持ってがんばる山下さんに、意外な展開が……!?

守屋
さん
こんな感じで、起業の段階が進んでいくと意志以外の要素も必要になってくるわけだ。

とはいえ、こんなに順調に右肩上がりで進んでいくことはまずありえないから、マスターリソースである意志を自分自身の中に持ち続けるのを絶対に忘れないでほしい。そうすれば、苦しいときも目指す場所を見失うことがないからね。
山下
さん
私がその段階までたどり着くのはまだまだ先だと思いますが、とても勉強になります!
守屋
さん
こればっかりは、僕が「いつ頃たどり着ける」と言えるものでもないからな〜。でも、山下さんだってこうして澤田経営道場で勉強しているからには、ちゃんと意志があるんでしょ? 
山下
さん
はい、もちろんです。私は数年前にバイク事故で大けがをして、リハビリにすごく苦労しまして。同時期に父親も病気を患い、同じくリハビリに苦労したんです……。

だから、もっと多くの人が良い理学療法士さんやリハビリ方法に巡り合える仕組みをつくって、選択肢を増やすことができればと思っています。
守屋
さん
そうなの? 僕今度、理学療法士関係の事業を立ち上げるんだよね。
山下
さん
えっーーー!!!
守屋
さん
ちょうど先月、理学療法の業界をより良くするために立ち上がろうとしている人と、たまたま縁が繋がったんだ。それでいろいろ話をするうちに「このプロジェクトに参画したい!」と思ったから、お願いして創業に混ぜてもらうことにしたんだよ。

理学療法士養成校と就労現場の間を埋めるプラットフォームを作るプロジェクトで、僕たちは「理学療法2.0」と呼んでる。山下さんもチームに入る? 澤田経営道場の実地研修、そろそろでしょ。
山下
さん
挑戦してみたいです。ぜひお願いします!
チャンスを掴む癖づけの重要性を説く守屋さん
守屋
さん
ははっ、即答か。意志がある人はチャンスに対して貪欲だからいいね。何がチャンスで何がチャンスでないかは、人それぞれ自分で決めればいい。

でも、日々のチャンスをスルーする癖だけはつけない方がいいよ。大きなチャンスが来たときもスルーしてしまうようになるからね。
山下
さん
はい! 気をつけます。チャンスは逃したくないですから。
守屋
さん
逆に日々のチャンスを掴もうとする癖がついていれば、大きなチャンスが来たときに力まず自然体で挑むことができる。スルーするのとは天と地の差だよ。

じゃあ、今日はここまで。プロジェクトメンバーには伝えておくから今度顔合わせしよう。
山下
さん
よろしくお願いします! 守屋さん、今日はありがとうございました。
守屋
さん
こちらこそよろしく。じゃ、また今度!

思いがけない幸運でプロジェクト参加のチャンスがめぐってきた山下さん。運を味方につけるのも、起業家にとっては大切なのかもしれません。次回は本気ファクトリー株式会社代表取締役の畠山和也さんに、創業期の組織づくりと「ミッション・ビジョン・バリュー」について伺います。

守屋実(もりや みのる)

ミスミを経てミスミ創業者田口弘氏と新規事業開発の専門会社エムアウトを創業。複数事業の立上げと売却を実施、2010年守屋実事務所を設立。新規事業家としてラクスル、ケアプロの創業に副社長として参画。2018年、ブティックス、ラクスル、2か月連続上場。博報堂、JAXAなどのアドバイザー、内閣府有識者委員、山东省人工智能高档顾问を歴任。近著、「起業は意志が10割」(講談社)、「DXスタートアップ革命」(日本経済新聞出版)。

Facebook:https://www.facebook.com/minoru.moriya.7
Twitter:https://twitter.com/moriyaminoru

山下楓美香(やました ふみか)

株式会社JALスカイ退職後、インド旅行中にバイク事故でリハビリに8か月かかる大怪我を負う。生死に関わる経験を経て、助かった命を多くの人の力になるために使おうと起業を決意。2021年、7期生として澤田経営道場に入門。

取材・文/内島美佳

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