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先輩起業家に聞く、創業期にやってよかったこと・やらなきゃよかったこと|澤田経営道場コラムvol.10

先輩起業家に聞く、創業期にやってよかったこと・やらなきゃよかったこと|澤田経営道場コラムvol.10

若手起業家を育成する澤田経営道場で、起業に向けて日々勉強に励む山下楓美香さん。前回は、株式会社マイクリエイト代表の福島美穂さんから創業期に便利な補助金や助成金の活用方法を学びました。

今回からは3回にわたり、道場卒業生の先輩起業家のみなさんの体験談をお聞きします。初回のゲストは動画制作会社の株式会社dec bocを立ち上げた道場4期生の小栗紬さんです。

経験が少なくても、いちから勉強して起業した小栗さんの体験談

教育コンテンツの動画制作を行う株式会社dec boc 代表の小栗紬さんに、創業における疑問や質問をぶつけます!
山下
さん
小栗さん、お久しぶりです! 
小栗
さん
山下さん、起業の準備は進んでますか?
山下
さん
はい、順調です! 道場の講師の皆さんに改めてお話を聞いて、起業に一番大切な意志と7つのスキルを学んできたんですよ。
小栗
さん
それはよかった。私も後輩が後に続いてくれるのはうれしいです。
山下
さん
それでですね、今日は私と同じくらいの年齢で道場に入った小栗さんの体験談を伺いたくて……。
小栗
さん
私の?
山下
さん
道場にはすでに多くの社会経験を積んでいて、それを活かした起業を考えている人もいますけど、小栗さんは新卒から数年で道場に入って、いちから勉強して今の会社を立ち上げましたよね。私の状況と近いので、ぜひお話を聞かせてもらいたいなと思いまして。
小栗
さん
なるほど、そういうことですか。私の体験談でよければお話ししますね。
山下
さん
よろしくお願いします!

澤田理事長に憧れて道場に入り、得意分野を見つけた

小栗さんが澤田経営道場に入った理由は?
山下
さん
小栗さんは、どうして道場に入って起業しようと思ったんですか?
小栗
さん
私、もともと(HIS創業者で現代表取締役会長の)澤田さんに憧れていて、近くで勉強したいと思ってHISに入ったんですよ。でも、新入社員にとってはすごく遠い存在で、お会いすることもできなくて。
 
それでモヤモヤしていたときに先輩から「(澤田さんがつくった)道場があるよ」と教えてもらって、ダメ元で応募したんです。
2018年に小栗さんは、株式会社エイチ・アイ・エスの創業、スカイマークの設立、ハウステンボスの再生などの実績を持つ、日本を代表するベンチャー経営者の澤田秀雄さんが2015年に設立した人材育成道場「澤田経営道場」に入門した
山下
さん
起業する際に、今の動画制作というクリエイティブ系の分野を選んだのはなぜですか?
小栗
さん
HISにいた頃、法人向け部署でテレアポをやっていたんです。でもぜんぜんアポが取れなくて、自信をなくしてしまったんですよね。「私は仕事ができない人間なんだろうな」って。
山下
さん
そんなぁ。たまたま苦手な分野だっただけでしょう?
小栗
さん
今考えればそうですよね。当時は新入社員でそれしか仕事をしていなかったから、わからなかったんです。
 
でも、道場の研修でSNSを活用して現地の魅力を発信した時に、すごく喜んでもらえたんですよ。それで、クリエイティブの分野だったら私でも世の中の役に立てるかもしれないと思ったんです。もともと写真は得意だったので。
山下
さん
得意分野を見つけたんですね!
 
ちなみに小栗さんは、創業時の資金ってどうしました? これまで先生方に資金調達や補助金の話をいろいろ聞かせてもらって、どうしようかな~って思ってるんですけど……。
創業資金について、小栗さんに真剣に問いを投げかける山下さん
小栗
さん
私は100%自己資金だけでしたよ。動画制作はカメラとPCさえあれば、あとは出ていくお金は自分の人件費だけなので。それがこの業種を選んだ理由の一つでもあります。
 
というのも、家族の借金で苦労した友人を近くで見ていたので、借金スタートの会社経営はやめようと思っていたんですよ。だから、自己資金だけでスモールスタートできる事業を意識しました。
山下
さん
「〇億円調達」とか聞くとやっぱりかっこいいと思いますけど、リスクもありますもんね。スモールスタートして、順調に回りだしてから大きく展開していくのも堅実でよさそうです

小栗流集客は「動画制作ができる私という存在」を印象付けること!

山下
さん
起業して最初のうちは大変そうですけど、集客はどうやっていましたか?
小栗
さん
集客というと、「Webサイトを充実させて〜」とか「SEO対策をして〜」とか考えてしまいがちじゃないですか。というか、実際私もそう考えていたんです。
 
でもそれってお金がかかるし、競合がたくさんある中から検索して見つけてもらうのはすごく難易度が高いですよね。
山下
さん
たしかに……。では、どうやって?
小栗
さん
「動画制作ができる小栗紬という人間の存在」を多くの人に知ってもらって、その人や周囲の人が動画を作りたくなったタイミングで「そういえば、知り合いに動画を作れる女性がいたな」と思い出して声をかけてもらう、という考え方に変えたんです。
 
そのために、ビジネスマッチングツールでいろいろな人とつながりました。経営者だけじゃなくて、会社員の方とかフリーランスの方とか、なんなら大学生とかとも。1日5、6人ぐらい、毎日話をしていましたね。
山下
さん
へ〜! そういうツールって使ったことがないんですけど、どういう感じでつながったり話したりするんですか?
小栗
さん
私はYentaやCXOバンクというアプリを使っていたんですけど、お互いに「会ってみたい」とマッチングが成立するとメッセージが送れて、日時の調整をします。コロナ禍でもあったので基本的にビデオ通話で、自己紹介の後に気になる話題を掘り下げながら、大体30分くらいお話する感じですね。気が合う人だと1時間くらいおしゃべりをすることもありますけど。
山下
さん
結構気軽にいろいろな人と話せる感じなんですね。
小栗
さん
もちろん、ちょっと話しただけではすぐに忘れられてしまうので、FacebookやLINE、インスタなどでつながっておきます。気が合う人はランチに誘ったり、「最近どうですか?」と声をかけてみたり、忘れられない努力もしています。
山下
さん
そうやって、いつか仕事につながるかもしれない人とつながっておくんですね。
小栗
さん
そうですね。忘れたころに「友達がこういう動画作れる人を探してるんだけど、御社だったらいくらぐらいですか」とか「実績とか送ってもらっていいですか」とかメッセージが来る感じです。お会いした時点ですぐに仕事につながるのは稀ですね。
山下
さん
いつ連絡をもらえるかわからないから、チャンスを逃さないようにしないとですね。
小栗さんは、創業期にやっていたよかったことを惜しみなく教えてくれる
小栗
さん
クリエイティブ系は「どんなものがいくらで作れるのか」がキーなので、すぐに出せるよう実績をポートフォリオとしてきれいに整えておくのは非常に重要です。で、仕事をした後はお客さんに「これポートフォリオに載せていいですか?」と確認して、どんどん充実させるようにしてきました。
山下
さん
どんどんつながりと実績が増えていくわけですね。
小栗
さん
実際、1年目の売上の半分以上はマッチングアプリのつながり経由でしたよ。
山下
さん
そ、そんなに! すごい効果ですね!

何かひとつでも「Give」することが、よい関係の秘訣

山下
さん
マッチングアプリでいろいろな人と話す際に、心がけていることはありますか?
小栗
さん
忙しいお時間を私に割いていただいているので、何かひとつでも「Give」できるよう心がけています。「話してよかったな」と思ってもらいたいので、動画関連の業界の流れだったり、先方の役に立ちそうなことだったり、話せることを考えていますね。
山下
さん
そう意識するようになったきっかけはあるんですか?
小栗
さん
私より40歳以上年上の経営者の方とお話させていただいた際に、「こういうお話は勉強になりました」と言ってもらえたことがあったんです。それをきっかけに「私でもGiveできることがあるんだ」と気付きましたし、できるのであれば常に意識しなくてはならないな、と思っています。

Takeするばかりではなく、何かこちらからもプラスになるものを提供しないとよい関係は築けませんからね。
山下
さん
何事もGive&Takeですね。ちなみに、具体的にどんなことをGiveしているんですか?
小栗
さん
例えば、BtoB営業で活用して良かったサービスや、業界動向の話などですね。いろいろな方と毎日お話することで話せる内容もストックされていくので、あの業界の方からこういう話を聞きましたよ、とかも。
 
やればやるほど伝えられるネタが増えてきて、さらによい関係が築けるんじゃないでしょうか。

誕生日コメント、お歳暮、年賀状……人とのつながりを大切に

山下
さん
最初の案件が取れたのって、起業してどのくらい経ってからでしたか?
小栗
さん
12月に会社を立ち上げて、1月に本格的に動き始め、4月頃だった気がします。道場のゲスト講師の方のつながりからでしたね。まあ、お情けでいただいたような感じなんですけど(笑)。でも、それを実績にして次の案件を取るのにつなげていきました。
山下
さん
小栗さんと話していると、人とのつながりをすごく大事にしているのを感じるし、つながる力が強いのを感じます。そのつながりを維持するのにやっていることは何かありますか?
小栗
さん
Facebookを適度に更新したり、誕生日にはコメントしたりとか。お世話になっている人や感謝している人にはお中元やお歳暮も送りますし、年賀状も送りますよ。
山下
さん
年賀状って、リアルのですよね? お中元やお歳暮もですけど、昨今では結構めずらしくないですか?
小栗
さん
ベンチャーだとやらない会社が多いんですけど、だからこそ記憶に残るじゃないですか。うちはクリエイティブ系の会社なので、相手の似顔絵を添えてみたり、少しでも記憶に残るようにしています。
 
お中元やお歳暮のお菓子を担当者さんが会社で配ってくれて、弊社のことを知ってくれる方が増えるかもしれません。反応もいいし、喜んでもらえているので、これからも続けたいと思っています。
山下
さん
私もお世話になった方に贈りものをしたいな~って思ったことあったんですけど、変に思われたり、ウザがられたりしないか心配でやめちゃったんですよね……。
小栗
さん
ええ~、お菓子もらってウザいってことなくないですか(笑)? 私が年賀状を送り始めたのも実際に自分がもらって嬉しかったからですし、気にしないで大丈夫だと思いますけどね。
先輩起業家として山下さんにアドバイスを授ける小栗さん
山下
さん
た、たしかにそうですね……。次に機会があれば贈ってみます! そういう風に、されて嬉しかったことをちゃんと返して、しかも継続しているところが小栗さんの強みなんだなぁと思いました。
小栗
さん
嬉しいです。ありがとうございます。

見栄を張るより、まずはとにかく売上をつくること!

一方、小栗さんが創業期にやめておけばよかったこととは?
山下
さん
今まで「起業時にやってよかったこと」をお聞きしてきましたけど、逆に「ああしておけばよかった」「あれはやめておけばよかった」と思っていることってありますか?
小栗
さん
創業したての頃って「ホームページをかっこよく作らなきゃ」とか「ブランドカラーを決めなきゃ」とか「名刺はこうしよう」とか思ってしまうんですけど、それって結局見栄を張っているだけだし、それほど売上につながらないんですよね。

はじめのうちは売上につながらない出費を極力減らすのが大事です。かっこいいサイトや名刺、ブランドカラー、おしゃれなオフィスなんかは、お金が余ってからでいいと思います。
山下
さん
とにもかくにも売上が最優先、ということですね。
小栗
さん
私は役員から怒られてそれに気付きました(笑)。最初の3カ月くらいで「何もたもたしてんの、早く売上作ってこいよ」と言われて、「あ、たしかに」って。1円でも多く、早く、稼いでくることを意識しないとダメだな、とそこで反省しました。
山下
さん
形から入ろうとしてしまうのはあるあるかもしれませんね。

「うちじゃなきゃだめ!」な得意分野にしぼって全振り

山下
さん
最初の頃に比べて、事業を進めるうちにサービスの内容や傾向って変わってくるものですか?
小栗
さん
最初のうちは「動画だったらなんでもやります」というスタンスだったんですけど、今はEラーニングなどの教育コンテンツの分野に絞っています。

澤田経営道場で学んだことのうち、ランチェスター経営戦略の「ナンバーワン・オンリーワンの武器を持たないと」というのを意識して、得意分野で戦わなければとはずっと思っていたんですよ。
山下
さん
ちなみに、なぜ教育分野なんですか?
小栗
さん
2期目に入った頃、そろそろ得意分野に絞ろうとメンバー全員で話し合ったんです。今までやった案件を全部書き出して、「1番お客さんに喜んでもらった案件は何か」「うちじゃなきゃいけなかった案件はどれか」を意識して、自分たちの得意分野を探りました。
山下
さん
「どれだけお客さんに価値を感じてもらえているか」という視点ですね。
小栗
さん
その結果、エステ業界とEラーニング業界の2つに絞り込めたので、両業界にフォームメールを送ってみました。エステ業界は返信が0だったのですが、Eラーニング業界の企業様からは結構返信があり、しかもすぐに2件くらい受注も決まりました。
 
それで「Eラーニングの方がニーズがある」と判断し、今はEラーニングの動画制作を強みに、日々多くのEラーニングコンテンツを制作させていただいています。

むしろ若手女性こそどんどん起業してほしい

若手女性起業家にエールを送る小栗さん
山下
さん
最後に、私を含めこれから起業する人へ向けて、小栗さんからアドバイスをいただければと思います。
小栗
さん
営業って結局人間関係なので、よい人間関係を築くことが大切です。仕事につながらないとわかると急に失礼な態度になったり、時間に遅れたり、そもそも来なかったり、そういうことをする人はよい関係を築けないし、中長期的には売上や事業自体にも響いてくると思います。
山下
さん
人として当たり前のことだからこそ、改めて気を付けたいですね。
小栗
さん
それから、全ての人に尊敬の念を持って接することも常に意識しています。
山下
さん
20代女性の起業って大変なイメージがありますけど、とくに若い女性の起業家へ向けて何かありますか?
小栗
さん
起業するのはお子さんのいる男性の方がリスクが高いと思うので、むしろ女性の方がどんどん起業すればいいと思っています。
 
私は起業する上で「若いから」「女性だから」というのをネガティブに感じたことはないですね。誠実にがんばっていれば応援してもらえるし、若ければ若いなりに謙虚な姿勢でいろいろ質問すれば、多くの先輩経営者さんは親身になって相談に乗ってくれたり教えてくれたりするものですよ。
山下
さん
案外そういうものなんですね。ちょっと安心しました。
小栗
さん
なので、若い女性の起業はポジティブな面しかないと思っています。私もこれまで泥臭く人脈をつなぎ続けて、今では専門知識を持った味方になってくれる方々も増えました。見る人を飽きさせない教育コンテンツをどんどん制作していきたいと思っているので、山下さんもぜひがんばってください!
山下
さん
ありがとうございます!

自分と境遇が近い先輩の体験談を聞いたことで、自信と勇気をもらった山下さん。次回も引き続き、澤田経営道場の先輩起業家達に創業期を振り返ったアドバイスをお聞きします。ゲストは株式会社GLiN代表取締役の占部智久さんです。

小栗 紬(おぐり つむぎ)

ニュージーランド・アメリカ在住経験を生かし旅行会社H.I.S.のセールスに従事した後、2018年に澤田経営道場の4期生として入門。ハウステンボスの業務効率化プロジェクトの立ち上げ、秋田県での地域活性化業務、ANAグループでの新規事業開発等携わったプロジェクトは多岐に渡る。2019年12月に株式会社dec bocを設立。現在は教育コンテンツの動画制作をメインに事業を展開している。
 
Facebook:https://www.facebook.com/oguri.tsumugi

山下 楓美香(やました ふみか)

株式会社JALスカイ退職後、インド旅行中にバイク事故でリハビリに8か月かかる大怪我を負う。生死に関わる経験を経て、助かった命を多くの人の力になるために使おうと起業を決意。2021年、7期生として澤田経営道場に入門。

取材・文/内島美佳

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