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めちゃイケのカガリPと電通の中尾孝年が51歳で起業。オールドルーキーが挑む、ボーダーレスなものづくり

めちゃイケのカガリPと電通の中尾孝年が51歳で起業。オールドルーキーが挑む、ボーダーレスなものづくり

フジテレビの『めちゃ×2イケてるッ!』でプロデューサーを務め、同番組のガリタ食堂の“ガリタさん”としても知られる明松功さんと、電通のクリエイティブディレクターとして数多くの広告を手がけてきた中尾孝年さんが、今年春にそれぞれの会社を退社して共同創業。時代や業界の閉塞感をぶち破り、新風を吹き込むというミッションを掲げた新会社「KAZA2NA(カザアナ)」を立ち上げるまでの経緯について聞きました。

バラエティ番組やCMを作る上での試行錯誤、組織やビジネスの垣根を越えたボーダーレスなものづくりへの思いなど、51歳で新たなスタート地点に立った2人の熱い言葉が満載です!

会社員がコンプレックスで、ずっと自営業の友人に憧れがあった

テレビ業界と広告業界の第一線で活躍した、元フジテレビの明松さんと元電通の中尾さんを直撃!

——今年春、明松さんはフジテレビを、中尾さんは電通を退社され、51歳で「KAZA2NA」を起業されました。まずはその経緯から教えてください!

中尾
さん
実は昨日、電通を退社して、この取材がKAZA2NAのCOOとしての初仕事です。昨日も電通の仕事で17時までプレゼンしてたんで、まだあまり実感はないんですけど(笑)。

——わぁ、それはお疲れさまでした! 明松さんがゲスト出演された「貴ちゃんねるず」(石橋貴明さんのYouTube)を拝見すると、お二人は大学時代からの仲だそうで。

明松
さん
もともと神戸大学のアメフト部の先輩と後輩だったんです。僕が4年のときに中尾は1年。本来は同学年のはずなんですが、僕は1浪、彼は4浪しているので。でも4浪って、なかなかの根性だよね。
中尾
さん
僕、小中まではやんちゃなものの賢かったんですが、高校ですごいグレ倒して(笑)。でも、人生をやり直そうと思って、4浪してまで大学に入学したんですよ。
石橋貴明さんのYouTube「貴ちゃんねるず」で、明松さんはフジテレビを退社した理由を明かしている

——大学時代、明松さんはどんな先輩だったんですか?

中尾
さん
すごく厳しい部活だったので、神様みたいな存在でした(笑)。ポジションも一緒だったので、先輩に直接指導していただいて。

あっ、だから僕はいまだに「先輩」って呼んでるんです。先輩がフジテレビ入局後も帰省したときには、めっちゃ肉を奢ってもらったりして。先輩の活躍する姿を見て、マスコミっていいなぁと憧れて電通に入ったんです。
明松
さん
中尾が電通入ってからもたまに連絡は取り合ってて。初めて一緒に仕事したのは、2015年にめちゃイケ主体の「FNS27時間テレビ」をやったとき。番宣動画のクリエイティブを中尾に頼んだんです。
中尾
さん
電話がかかってきたときはビビりました。
明松
さん
中尾の制作の様子や動画の出来を見て、こいつ優秀だなと感心して。めちゃイケの制作チームって独特の緊張感があったので、意見をそこまで主張する外部の人間はあまりいなかったんです。でも、中尾はチームの総監督である片岡飛鳥さんに対してもガンガン意見を言うから新鮮で。内心「もっと言え!」って楽しんでました(笑)。
「どんな相手にも臆することなく自分の意見を言う中尾を見て、純粋にすごいなって思いました」と明松さん
中尾
さん
少しでも先輩の力になりたくて、もう必死で。本当は死にそうでしたけど(笑)。
明松
さん
その後、2016年に僕が関東ローカルの番組のタイムCM枠を販売するローカル営業部に異動しました。そこで当時、定例会をしていた中尾に相談したんです。「スポンサーも視聴者も喜んでくれるような面白いギミックを使って、番組と広告をいい感じに融合できないかな?」って。
中尾
さん
それまでバリバリ番組制作をしていた先輩がスポンサーにCMスポット売るための企画書を書いて、「オモロいの考えたのに、売れへんねんけどどう思う!?」って困り果ててましたよね(笑)。
明松
さん
自信満々なのに全然当たんねぇんだよ!って(笑)。
中尾
さん
だから僕はその企画書を見て、「スポンサー視点が欠けてますね」と、CMクリエイターとしての意見を率直に言って腹を割った話ができました
その後、話し合いを重ねてできたのが、「突然コマーシャルドラマ」です。

——「突然コマーシャルドラマ」は、2018年に国内最大の広告賞のACC賞でメディアクリエイティブ部門ブロンズ賞を受賞されましたね。

中尾
さん
ドラマのなかにCMを組み込む「アドフュージョンドラマ」という新しい手法を生み出しました。事件の犯人が追い詰められるシーンなど重要な場面にCMを融合することで、視聴者はCMもドラマの一部として楽しめるから、ちゃんと見てくれる効果があるんです。
明松
さん
番組の視聴率ってCMを跨ぐたびにどうしても落ちてしまうから、その瞬間いかに離脱させないかが視聴率キープの鍵。CM後も番組を見てもらうにはどうすれば、という長年のテレビ屋としての課題が、この発想に結びつきましたね。
中尾
さん
僕はCMクリエイターとして、「広告が邪魔」という風潮を何とか変えたいという思いがあって。番組と広告、双方にとって良いCMのあり方を追求し、しかもその内容が面白ければ視聴者も喜んで見てくれるはずという狙いもありました。

——その狙いはズバリ的中したんですね。

中尾
さん
そうですね。第2弾では、視聴者のTwitterをリアルタイムで表示する試みも取り入れました。普段は「CMがウザい」といったネガティブなつぶやきが多いのに、「次はこれが来るはず!」などとCMの予測ですごく盛り上がってて。視聴者にCMを待ち遠しく思ってもらえるなんて経験したことがなかったので、めちゃくちゃ嬉しかったですね。
明松
さん
その後、2020年に今までにない発想の通販番組『パンサー尾形の通販バラエティ BUY or BYE』の企画を2人で立ち上げました。
商品開発者や社長さんが持ち時間3分で、海外のプレゼン番組『TED』みたいにプレゼンをし、お客さんが「興味なし」と意思表示したら強制終了になるという企画。単に商品紹介をするのではなく、ショーバラエティに仕立てて通販をエンタメ化しました。

——明松さんと中尾さんは、いつから起業を考えていたんですか?

中尾
さん
僕は「実績と知名度のあるクリエイターになって、先輩に声を掛けてもらいたい」と頑張っていたんですが、2020年に早期退職者を支援する制度(ライフシフトプラットフォーム)が電通で導入され、興味を持って。「来年また募集があったら、僕辞めるんで一緒に起業しましょう!」って、先輩には話していました。
明松
さん
中尾に「独立とか興味ないんですか?」って聞かれたから、「ゴリゴリあるよ」って。

去年の夏にそんな話をしていたら、フジテレビで早期退職の募集があって、僕の方が先に辞めることになったんです(笑)。
中尾
さん
逆に、電通の早期退職者募集は2020年以降なくなって……。僕だけ普通に自己都合で会社を退社しました(笑)。
「会社の支援制度を使うつもりが、なぜか僕だけ自己都合による退社になりました(笑)」と、中尾さん

——明松さんはなぜ早期退職しようと思ったんですか?

明松
さん
僕はめちゃイケをやっていた30代半ばから「定年まで会社員をやるのは格好悪い。いつか辞めるぞ」と思ってたんです。

もちろん、フジテレビはやりたいことをやらせてもらえる最高の環境でしたけど、俯瞰で見ると敷かれたレールを進んでいるだけだと感じて。年控序列で働く会社員なのがずっとコンプレックスだったんです。自営している周りの友達を見ると、自ら人生を切り開いていてかっこいいなって。それで、いつか退職して中尾と一緒に会社をやるのが、セカンドキャリアの最有力だと考えてました。
中尾
さん
先輩も独立起業の構想はずっと前からあったんですよね。
明松
さん
そうそう。そしたら、去年の夏にコロナにかかって生死の境をさまよい、死生観が変わって。「辞めるのを先延ばしにしちゃいけない」と。そこにちょうど早期退職者の募集があったという流れです。
中尾
さん
僕も同じように、起業した人が自分で決めた道を自らの足で進んでいく姿ってかっこいいから、憧れていました。

——お二人はそれぞれ業界のトップランナーだったと思いますが、会社から退社を引き止められなかったんですか?

明松
さん
早期退職制度には引き止めてはいけないというルールがあるんですよ。
中尾
さん
僕は自主的な退職なんで、止め放題(笑)。ありがたいことに考え直さないかというお話もありました。

ただ、決して電通が嫌いとか未来を感じないというわけではなくて、電通のクリエイターは広告業界の外に出ても活躍できるぞっていうのを後輩たちに示したかったし、広告クリエイターの知名度そのものもあげたかった。それを定年後ではなく、現役バリバリの今のうちにやりたい。この話を上司にして「頑張れ」と送り出していただきました。

ヤラセか演出か。バラエティ番組における正義とは?

人気バラエティ番組を制作した明松さんが感じる、今のテレビ業界の課題とは?

——話は変わりますが、明松さんはテレビマンとして、現在の“テレビ離れ”をどのように受け止めていますか?

明松
さん
いつでもどこでも見られるNetflixやYouTubeに人が流れるのは当たり前のこと。

最近、TVerの同時配信が始まりましたけど、1週間などの期限があるから「いつでも」にはならない。現状のテレビ番組の評価は、再生回数や話題性ではなく、やっぱりまだリアルタイム視聴率が一番重要なんです。いつでも見られるほかのメディアに比べたら不利な状況ですが、そこは割り切ってリアルタイムで見てもらえる仕掛けを作る必要があると思っています。

——たとえば、どんな仕掛けですか?

明松
さん
僕がめちゃイケのときに意識していたのは、宣伝で「この放送を見るっきゃない感」を醸し出すこと。宣伝の記事や告知動画、広告などのプロモーションプランを試行錯誤していました。ありとあらゆるツールを使って、その時間にチャンネルを合わせてもらうための踏ん張りが必要だと思っていたので。

——今、TVerの見逃し配信の再生回数が多いと話題になりますよね。でも、テレビ局側では、番組の評価に直結しないんですか?

明松
さん
大前提として、地上波とTVerでは流れる広告が違うんです。テレビ番組は主に地上波の広告費で制作しているので、地上波の視聴率が高いことが大事なんです。僕ら製作陣からすると、「もっと再生回数も評価に加味してよ」って思うんですけどね。
中尾
さん
番組制作におけるビジネスプラットフォームが、時代にそぐわなくなっている感はありますよね。僕は今後、コンテンツビジネスが二極化すると思っています。
 
1つは世界中の多くの人が見るハリウッド映画などの一大エンタテインメント。もう1つは、小さな市場に向けた、カスタマイズ可能な視聴者参加型コンテンツ。大所帯のテレビ局や広告代理店が後者で採算を取るのは難しいですが、KAZA2NAならフレキシブルに挑戦できると思っています。
広告業界で活躍する中尾さんが思う、広告制作の面白みとは?

——ここ数年でコンプライアンスが厳しくなったことに関してはいかがでしょう。番組や広告づくりで窮屈になったと感じたことはありませんか?

中尾
さん
僕はないですね。CMはもともとコンプライアンスが厳しいのが当たり前ですから。CMのクレームは代理店ではなくスポンサーに行きますし、「疑しきはやるな」という考えが基本でした。

また、CMのインパクトの出し方として、タブースレスレのことをやるのではなく、ルールを守りながら斬新な方法を探るのが面白いと僕は思っていますね。
明松
さん
僕はコンプライアンスは必要だと思いますし、否定する気もまったくないですね。大事なのは、報道番組とバラエティ番組のコンプライアンスは違うと認識すること。

報道番組が公平性を大事に、視聴者に与える影響も考慮して放送する理由は、「真実」と向き合っているから。一方、バラエティ番組が向き合っているのは、真実ではなく「楽しさ」。だから、双方とも同じコンプライアンスなのは無理があると思うんです。
 
バラエティでも「真実」と向き合うシーンはもちろんありますが、「真実」よりも「楽しさ」を伝えたいシーンで演出が入るのは当たり前。それをヤラセだと言われるのは間違っていると思います。番組制作はコンプライアンスを区別化せずに対応し続けていると、いつか破綻してしまうんじゃないかと危惧しています。

めちゃイケの“地獄会議”で習得した3つのトレーニング

——KAZA2NAは「ボーダレスクリエイティブカンパニー」と掲げていますが、この言葉はどうやって生まれたんですか?

中尾
さん
「何やってる会社なの?」って聞かれたとき、一言で伝えられるキャッチコピーがあるといいなと思って、いろいろと候補を提案しました。

ただ、残念ながらこの言葉と社名はコピーライターの僕ではなく、先輩が思いついちゃって(笑)。紙にサッと書いたのを見せられた瞬間に「めっちゃいいですね!」ってなりました。

——なるほど(笑)。では、具体的にどんな風穴を開けたいと考えていますか?

中尾
さん
肩書きや所属先、業種などの壁を越えていきたいという思いがあります。

たとえば、YouTubeの世界って、従来のバラエティやドラマ、スポーツといったセグメントがないですよね。1つのチャンネルにあらゆるジャンルが盛り込まれている。それが当たり前になるなか、いまだに広告業界はコピーライターや監督といったそれぞれの職種の型にはめて仕事をしている。監督じゃない人が違った感覚で映像を作ったら、新しくてめっちゃ面白いものができるかもしれないのにもったいないですよね。

レオナルド・ダ・ヴィンチは医者でありながら、ヘリコプターの設計図も書いて、モナリザも描きましたから。自由な発想を発揮して、結果いいものができたらそれが1番いいと思うんです。
明松
さん
僕は20年近くめちゃイケの長い長い地獄会議で、大変なトレーニングをしてきました。この経験があれば、どんなジャンルの人ともいい仕事できるという自負で、業界に関わらずボーダーレスに仕事して、どんどん風穴を開けていきたいですね。
中尾
さん
どんなトレーニングだったんでしたっけ?
明松
さん
めちゃイケにゲストを呼ぶとき、その方の出演作品を見まくって、みんなで延々と議論するんです。そのときに毎回行うことが3つあって。

まずは、あらゆる無駄を削ぎ落とし「ここが一番面白い!」という笑いの真理を掴み出す。次に、それが一番面白くなる設定を考える。最後は、その面白さが最大限に伝わる表現方法を考えるというトレーニングです。
中尾
さん
裏ではそんな大変なことをやっていたんですね。
明松
さん
実は営業に異動になったとき、めちゃイケの総監督の片岡さんに退職の相談をしたんですが、「1回知らない世界を見た方がお前のためになると思う」と言われて営業部に留まったんです。

さすがに畑が違うから通用しないだろうと思ったんですが、営業でもこの3つのトレーニングが活きて通用して。めちゃイケの地獄会議で、「人々に受け入れられている理由を見つけ出す」というワザが身についたんだと思います。
「営業部に異動にならなかったら、今回の起業につながらなかったかもしれません。だからあの時、すぐに退職をしなくてよかったと思ってます」と明松さん
中尾
さん
めちゃイケってノリとフィーリングでオモロいもんを作っているとばかり思ってました(笑)。それが実は、めちゃくちゃ綿密に計算された台本があったなんて驚きですよ。
明松
さん
これは単なる成功の一例なので、この通りやるんじゃないですよ」と言って、演者には練りに練った台本を渡してた(笑)。「現場でこれを超えてくれたら最高だから!」って。

もちろん、めちゃイケメンバーで台本を覚えようとする人なんて誰もいなかったけど。ただ、それぞれの立ち位置だけはブレないようにしてもらってましたね。
中尾
さん
めちゃイケメンバーのプレッシャーはすごかったでしょうね……。
明松
さん
演者を土佐犬だと思い、「よし、お前いいか」って興奮させ、ゔー!って唸った一番いい状態でポンッと首輪を外すのがディレクターの仕事だと教わりました。本番5秒前でどんだけ演者のスイッチを入れられるかが演出の肝だと。

まぁ、すべて片岡イズムなんだけど(笑)。

51歳で独立して、もう1回ギラギラ仕事できるってアホみたいに楽しい

アラフィフを迎えた2人。新たに挑戦するKAZA2NAでは、どんな事業を展開していくのだろうか

——KAZA2NAの事業内容に地方創生と社会貢献事業を掲げているのが気になります。どんなことをやる予定なんですか?

中尾
さん
一見、僕らが生きてきた業界と地方創生って関係なさそうに感じますよね。僕は広告屋として課題を発見し解決することが得意。先輩は笑いの真理を掴み、人を楽しませるノウハウを持っている。この2人で化学反応を起こして、困っている地方の方々の役に立ちたいと思っています。
明松
さん
あと、2人ともいい歳だから、そろそろ世の中の役に立ちたい、生きてきた証を残したいという思いもあるんです。
中尾
さん
社会貢献といっても慈善事業ではなく、ビジネスとしてちゃんとやらなければいけないと思っていて。善意だけでやると、途中で資金が枯渇して活動が持続できなくなりますから。そこは番組作りや広告作りで培った力を活かせると思っています。
明松
さん
『貴ちゃんねるず』でこの話をしたら、ありがたいことに反響がすごいんですよ。初めてのことなのでワクワクしています。
中尾
さん
とりあえずこの道をずーっと真っ直ぐ行ったら、何があるのか。それが楽しみでしょうがないですね。
明松
さん
これからは、7月1日にYouTube「ガリタちゃんねる」をローンチして、「KAZA2NAと一緒に作りませんか?」と言う企画を配信します。企業と商品やメニューを作ったり、地方自治体と観光コースを作ったり、形の有無を問わず一緒につくらせていただいて、そのプロセスも動画で発信していきます。
中尾
さん
制作過程そのものを売るプロセスエコノミー的な発想ですよね。広告って完成納品型のビジネスなので、制作費でしかビジネスができないという課題があって。制作過程では、開発者や経営者の意見や思いを聞くんですけど、そこにこそ本当に伝えるべき価値がたくさん詰まってることが多い。それを僕らが伝えていきたいと思っています。
明松
さん
「KAZA2NAはこういうことをやっています」というプロモーションにもなるしね。
中尾
さん
制作費だけ稼ぐのではなく、コミュニケーション・コンサルとしても契約させていただき、さらに成功報酬型などの新しい形にも積極的に取り組んでいきたいですね。

僕は電通時代に担当したサービスで相当な売り上げアップに関わったんですが、僕の月給はいつもと変わらず感謝されるだけ(笑)。こういう既存のビジネスモデルをなんとか変えたいんですよね。もし何%かマージンをいただければ、仕事の責任感も増しますし、ともに成功を分かち合って成長もできますし。
明松
さん
それでいうと、僕もめちゃイケの「ガリタ食堂」関連の事業でそれなりに会社に貢献したような気がするけど、僕自身はあの企画であちこちで大量に食べまくって、体調が悪くなっただけ(笑)。イベントとグッズですごい売り上げがありましたけど、特別なボーナスとかはないです。それでも、「番組のためなら上等!」って思ってました(笑)。
めちゃイケでは、ナイティナインの矢部浩之さんを太らせるため、明松さんおすすめの高カロリーメニューをひたすら食べ続けるコーナー「ガリタ食堂」が人気を博した

——この先、お二人で新たな道を歩んで行かれると思いますが、お互いに尊敬しているのはどんなところですか?

中尾
さん
先輩は、僕との打ち合わせで「もう1回言って」って何回も言うんですよ。これって、先ほど言ってた無駄を削ぎ落として、真理を見極めるための大事な作業。

僕は広告屋ということもあって、あまりわかってなくても「なるほど」と頷くクセがあるので見習わないとって思っています(笑)。
明松
さん
真理を掴むまでは時間がかかるけど、掴んでしまえば作業が一気に進むからね。それに、真理を掴まないまま動くと、大きな間違いをする恐れもあるし。
中尾
さん
先輩には僕とは違う着眼点のアイデアがあり、常に刺激的で面白い。いつもいい緊張感で仕事できていますね。
明松
さん
えっ、まだ緊張感あんの(笑)? 
僕は27年間サラリーマンをして、予算を使って番組制作をした期間が長かったので、マネタイズの感覚が全然ないんです。自分の作業や努力が値付けされる感覚もゼロ。営業部に異動したとき、営業の粘りや計らい、頑張りが広告費に反映されることが衝撃でした。その辺に関しては、中尾って頼りになるなぁと今、実感してますね。
中尾
さん
広告業界での値付けは、今でこそプロデューサーがやってくれますけど、僕の若い頃は20ページくらいの見積もりをダーっと自分で作るのが普通でしたから。それで料金交渉の勘所も身についたし。プロデューサー的な側面は、電通で身につけた僕の武器の1つですね。

——そのまま会社に居続けて役職定年という安泰な道もあったはずなのに、あえて茨の道を選んだお二人ですが、この先どのような挑戦をしていくのでしょうか?

中尾
さん
僕は死ぬ直前まで作品を描いた手塚治虫先生のようにずっと現役でいたいと思っています。クリエイティブな仕事は、スポーツ選手と違って引退がないし、経験が溜まれば溜まるほど充実するはず。

だから、自分の辞めどきは自分で決める。進むと決めた今は、どこまでもやりがいと幸せを感じながらプレーし続けたい。この歳で独立して、もう1回ギラギラ仕事できるってアホみたいに楽しいですよ。だから今、超幸せなんです。
明松
さん
めちゃイケという看板がない状態で、自分がどれだけ通用するのかという初めての試みに掻き立てられています。

僕には10歳、8歳、5歳の子どもがいるんですが、長男が4歳のときに営業に異動したので、死力を尽くして奮闘していためちゃイケ時代の背中を子どもに見せられなかった。だから、起業が決まってすぐ「この春から俺の背中見とけよ!」って子どもに宣言しました。もっとかっこいい背中を見せるために、まだしばらくはゴリゴリに働きます(笑)。
アメフト部時代の掛け声「トゥース!」ポーズを決めてくれた二人

明松 功(かがり いさお)

KAZA2NA CEO
1971年2月25日生まれ。フジテレビ人気バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」ではADからチーフプロデューサーまでを歴任。同番組内の人気企画『ガリタ食堂』では“ガリタさん”という大食いキャラクターで出演、視聴者に親しまれる。営業局へ異動後はバラエティ制作の経験を活かし広告とドラマが融合する新しい仕組み「突然コマーシャルドラマ」を生み出しTwitterのトレンド1位獲得など業界内外で大きな話題となる。制作に復帰後2022年4月フジテレビより独立し、合同会社KAZA2NAを起業。

中尾 孝年(なかお たかとし)

KAZA2NA COO
1970年10月30日生まれ。電通のクリエーティブディレクターとして、こだわり酒場のレモンサワー、にしたんクリニック、TOKYO 2020聖火リレー、AKB48江口愛実、大人AKB48、POCKYデビル二宮、フジテレビ突然コマーシャルドラマなど、広告史に残る話題作を仕掛ける。カンヌ、NYフェスティバル、スパイクスアジア、ACC、TCC、日本PRアワード、日本雑誌広告賞、日経広告賞、朝日広告賞など国内外の広告賞で数多くのアワードを受賞。2022年5月電通を退社し、KAZA2NAのCOOに就任。

写真/石橋優希
取材・文/川端美穂、おかねチップス編集部 
撮影協力:gradation.Inc

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