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超売り手市場化した採用シーンで生まれたカジュアル面談「Meety」。社長・中村拓哉が語る“起業3年で売り上げ0円の裏側”

超売り手市場化した採用シーンで生まれたカジュアル面談「Meety」。社長・中村拓哉が語る“起業3年で売り上げ0円の裏側”

「プロダクト開発について話そう」や「サウナ好き集まれ」などの話のネタをきっかけに、企業の中の人と1対1、またはグループで気軽に話せるカジュアル面談プラットフォーム「Meety」。転職のきっかけになるだけでなく、人脈を増やしたり仕事の悩みを解消できるとあって人気を集めています。

Meetyをリリースした同社社長の中村拓哉さんに話を聞くと、その誕生の裏にはコロナ禍のダメージをモロに受け、ピボット(事業の軌道修正)を余儀なくされた苦労があったとか。さらに、起業3年で売り上げ0円という事業の秘密についても聞きました。

人事を2年担当。「カジュアル面談なんかやってらんねー!」

3人の子どものパパでもある中村さん

——カジュアル面談プラットフォーム「Meety」は、メルカリやマネーフォワードなど名だたる企業が利用し話題になっていますね。ここに至るまで、創業して早々にコロナ禍の影響を受けたりと大変だったそうで。

中村拓哉さん(以下、中村さん):そうですね。何回したかわからないくらいピボット(事業の軌道修正)しました。僕は子どもが3人いるんですけど、彼らの笑顔がときおり重かったですね。このままMeetyを続けて、この子たちを本当に幸せにできるのかなって……(苦笑)。

——それは想像を絶するプレッシャーですね……。ご苦労談は追ってお聞きしたいのですが、まずは中村さんがHR(人材・人事)市場に着目したきっかけを教えてください。

中村さん:大学在学時から「1人の人間が社会に大きな影響を与えられる」という起業家の生き方に憧れていて、いつかは起業しようと考えていました。それで就職するなら、将来起業する上でいい経験になるであろうIT系のベンチャーにしようと、当時WEBマーケティングのスタートアップだった「Speee」に入社したんです。

Speeeにはインターン含めて7年在籍し、営業や新規事業の立ち上げ、新卒・中途採用などを経験させていただきました。そこで人事を2年担当し、エンジニアの採用が難しかった経験から、これは社会課題だと痛感したんです……。募集ポジションに対してエンジニアの数が10分の1と少なく、これは無理ゲーだなと思いまして(笑)。

——なるほど。Speeeで人事を担当したから、カジュアル面談のよさに気づいたというわけですね?

中村さん:いえ。正直、カジュアル面談は「だるい」と思っていました(笑)。来社した転職する気のない候補者に「面白そうな会社ですね」って言われても、忙しくて相手できないことも多かったので。それで、成果につながるかどうかわからないカジュアル面談なんてやってらんねー!と(笑)。

当初は、カジュアル面談についてネガティブなイメージを抱えていたそう

——なんと(笑)。まさか当初はカジュアル面談に否定的だったとは!

中村さん:カジュアル面談への考えが変わったのは、1年費やして数人しかエンジニアを採用できないという経験からです。「企業が候補者を見極める」という待ちの姿勢では、いいエンジニアは受けてくれないんだって気づいたんです。従来の採用は企業が候補者を見極めるやり方でしたが、エンジニアなどに代表する職種が超売り手市場の今、候補者が企業を選べる時代になりましたよね。それにも関わらず、採用の文化があまり変わっていないのは、大きな問題だと感じたんです。

——確かに採用の文化や方法って、昔から変わっていない印象です。

中村さん:候補者が優位にも関わらず、未だに企業側にマウントを取られたりと、転職でいい体験を享受できていないと思うんです。

また、その状況を理解しながら、どうしたらいいかわからない企業が多いのも実情。カジュアル面談をしても、雑談するだけで何も残らないという感じです。それに中長期に効く施策があったとしても、効果検証ができないので続けられないですからね。こうした採用における課題の発見が、後のMeety開発につながったんです。

——ちなみに今って、エンジニア以外の職種も売り手市場なのでしょうか?

中村さん:現在、Meetyの会員ユーザーに多いのは、エンジニア、経営・CxO、セールス・CS(カスタマーサクセス)などです。今後、国内の労働人口が減少していくので、ほかの職種もどんどん売り手市場になると思います。とくにインターネット企業では、人を採用したいというニーズが留まることはないと思います。

ただ、大企業出身だとスタートアップへの転職は不安という人などが多く、需要と供給のギャップは大きいままではありますね。

※「Chief x Officer」の頭文字を取ったもの。xにはそれぞれ担当する業務が入る。Chiefは「長」、Officerは「役員・幹部」を表すことから、日本語だと「最高〇〇責任者」にあたる。

31歳で起業。サービスリリース直後にコロナ禍で停止に……

——中村さんは31歳で「Meety」を起業されますよね。その時、お子さんはいらっしゃったのですか?

中村さん:参加した起業合宿で優勝したことが起業のきっかけなのですが、その時は妻が3人目を妊娠中でした。妻が子連れで里帰り出産するタイミングで、「ここでしないと一生起業できない」と一念発起したんです。それから2019年5月にMeetyを創業し、2019年11月に「Meetup」プラットフォームとしてMeetyをリリースしました。

※興味・関心のあるイベントを探すことができるインターネットメディアのこと。

中村さんは30歳という人生の節目を超え、ようやく起業することを決意

——大きな覚悟を背負ったうえでの決意だったんですね。Meetyはリリースから約3カ月で、広告費0円にも関わらず利用企業は100社を突破されます。それができた要因は何だと思いますか?

中村さん:Meetyは「人と企業をつなげる。カンケイをつくる。」ことをコンセプトに、カジュアルでありながら密な関係を築ける場として作りました。このコンセプトが共感を得られたのではないかと思います。

——課題を見つけ、顧客のニーズを満たすサービスを生み出せたのは、やはり人事の経験があったからこそですね!

中村さん:そうかもしれませんね。ただ、Meetyは“脱・人事視点”がなければつくり出せなかったプロダクトだと思います。人事の悩みに寄り添ったプロダクトというより、候補者視点の体験をつくりたい、という視点でプロダクトをつくっていますね。

——ところがその後、コロナ禍でMeetupのイベント掲載数が激減しますよね。Meetyのリリースから約4カ月後にサービスを停止されましたが、その時の心境はどんな感じだったのですか?

中村さん:やるしかない、この状況下に合わせて頑張ろう!と最初は燃えていました。

——前向きだったのですね。

中村さん:停止直後は前向きだったんですけど、次のプロダクトを出すまでに8カ月もかかって……。さすがにその間はマジで病みました。プログラマーのCTOと自分の2人きりの会社だから話し相手も1人だけだし、家で仕事しているので、社会との繋がりがなくなった感じがして、「俺、大丈夫か」ってダークサイドに堕ちかけたこともありました。

——その不安はどうやって解消していたんですか?

中村さん:散歩しまくってました。たくさん歩いて体を疲弊させて寝る、みたいなことを繰り返してました。だからあの時期は、めちゃくちゃ日焼けしてましたね(笑)。

「コロナ禍は周りの誰よりも日焼けしてましたね」と中村さん

——健康的な方法でいいですね(笑)。そのCTOの方とは、新たなプロダクトの開発に向けて、ひたすらミーティングをされていたのですか?

中村さん:はい、連日7〜8時間、深夜まで何を作るか議論していました。1回ゼロベースにして、採用ではないドメイン(領域)も考えていたので。でも、抽象的な議論ばかりしていると、「何のために僕らは起業したんだ」と、どんどん混乱していって……。一時、ビジネスマッチングサービスのクローズドβ版をリリースしたものの「コンセプトが曖昧でこれは利用されない」と判断し、2時間で停止したこともありました。

「社会に影響力がない会社なら、たたんだ方がいい」

——今のカジュアル面談プラットフォームに行き着いたきっかけは、何だったのですか?

中村さん:CTOから「君は何のために起業したんだ?」と問われ、ハッとしたんです。というのも残高はどんどん減り、投資してくれる会社なんてあるわけもなく、超焦ってあらゆる事業を考えていたんです。海外の流行っているサービスを日本で展開するというスタートアップ王道のタイムマシーン経営のやり方に沿って、成功しそうな事業をリストアップし試作したりしていました。

でもCTOのその言葉で、自分は世の中を変えるために起業したかったんだと初心に戻り、やっぱりHR市場で何かやろうと思い、カジュアル面談という切り口に辿り着きました。

中村さんは起業時の気持ちを顧みることで、カジュアル面談にたどり着いたそう

——コロナ禍がある程度落ち着くまで、人事経験を生かして採用のコンサルティングや人材エージェント事業を行うという案はありましたか? 新たなサービスを開発するよりは、低コストで利益も見込めるのではないかと思うのですが……。

中村さん:その考えはまったくなかったです。スタートアップの形式をとっている以上は、スモールビジネスで一時的な安定を得るという選択肢は消していました。また、お金が儲かるかよりも、誰もやっていない挑戦をして市場を変えられるか、社会に良いインパクトを残すことができるかを大事にしています。それができないのであれば、会社をたたんだ方がマシだと思っていましたね。

カジュアル面談をスタートし、口コミでユーザー数とマッチング数が急増!

——Meetyは2020年10月、現在のカジュアル面談プラットフォームを提供開始します。その後、ユーザーやマッチングの数は順調に伸びたのですか?

中村さん:サービスローンチ当初は、工夫を凝らして特集や企業ページを作ったり、著名な人や企業の事例紹介などに力を入れました。そして、リモートワークで会話欲求が高まったこと、日中でもカジュアル面談の予定を入れやすくなったといったマクロトレンドもあって、口コミから広がる形でユーザー数、マッチング数ともに現在も急増中です。

——メルカリなどの有名企業が利用して話題になりましたが、営業などはされたのですか?

中村さん:いえ、気づいたら使ってくださっていました。今、直接顧客とつながるという意味で、採用もD2C化が進んでいます。エージェントや媒体ではなく、企業やその中の人が自らYouTubeやPodcast、SNSなどで発信・集客し、候補者とつながれるように変わりました。

そういった時流の中で、Meetyは 企業も候補者もカジュアル面談の申し込みがラクにできるので、UI・UX的にちょうど良かったんだと思います。それと運が良かったのもありました。

※中間業者を介さず、自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売すること。 

——運ですか?

中村さん:コロナ禍によってピボットし、今度はステイホームでいきるプロダクトをリリースしました。オフラインのイベントが減り、「友達ができない」「同じ職種の知り合いができない」と悩んでいる人が想像以上に多かったんです。とくに開発系の方って1社に何十人もいないんですよね。大手企業でない限り、機械学習エンジニアなら1人というパターンも少なくありません。

だから開発の方は何か課題があったら解決できるのが自分1人なので、外部の方に相談することが多い。今まではオフラインのイベントで、社外と繋がってノウハウを得たり、場合によってはそのつながりで転職していたんです。コロナ禍でそういう機会が減る中で、Meetyが受け皿になったのだと思います。採用だけでなく、情報交換にも便利だと感じてくださったのかなと感じています。

——Meetyには、やはりコミュニケーションが得意な人が中心に集まるのですか?

中村さん:いえ、共通の話題があれば、コミュニケーションが苦手な人でもめちゃくちゃ盛り上がります。Meetyの特徴の1つが、「私はこういう話ができます」という“話せるネタ”に対して申し込みできること。コミュニケーションが苦手でも「都内のサウナの話だったらしゃべりたい」というような(笑)。話す内容が最初から決まっているので、みなさん話しやすいんだと思います。

「Meety」の特徴

  • 会社・人事を介さず、企業の中の人にダイレクトに声をかけられる
  • 求人ではなく、企業の中の人の”話せるネタ”に対する申し込みができる
  • 志望動機を聞くことはNGなど、ガイドラインを定め、双方の齟齬をなくしている

「マネタイズのキーポイントをわかっているから、売り上げ0円でも不安はない」

現状Meetyは売り上げ0円という。中村さんに不安はない?

——Meetyは収益化しておらず、売り上げ0円と知って驚きました。

中村さん:「料金プランを教えてください」とよくお問い合わせいただくのですが、「今は完全無料のサービスです」とお伝えすると、みなさん驚かれますね(笑)。正直、HR関連サービスでマネタイズをすること自体、そこまで難易度が高くはないと思っています。採用が決定したタイミングで発生する成功報酬型や、サービス登録者にスカウトを送ることができる機能を販売するなど、ある程度パターン化されていますからね。なので、マネタイズができていない課題よりも、ちゃんと候補者の方に支持されるプロダクトになっているかの方が、僕らの本質的なイシューだと捉えています。小粒なビジネスで終わらずに市場で突き抜けるには、ほかにはない素晴らしいユーザー体験がマストだと信じています。

——待てるだけ待って、絶好のタイミングで収益化するという感じですか?

中村さん:PMF(プロダクトマーケットフィット)という概念がありますが、それには強いPMFと弱いPMFが存在するのではないかと思っています。他社製品と比較して独自のポジショニングを確立しているか、ユーザーさんが継続して使い続けてくださっているか、広告がなくても口コミで一定程度広がっているか、といった問いに対して自信を持って「Yes!」と答えられない状態のまま進んでしまうと、早い段階で頭打ちになってしまうのではないかと思っています。これらの問いに対して、自信を持って回答できる状態になるまでは、必要以上に焦らない方がいいと捉えている感じですね。

僕らにとって一番大切なのは、採用したい企業さんではなく、Meetyを使って話を聞きに行く候補者側のユーザーさんです。候補者体験No.1のプロダクトの実現に向けて、これからも頑張ります!

※提供しているサービスや商品が市場に受け入れられること。

すでに熱量の高い候補者が集まっているMeety。今後の展開も注目される

中村拓哉(なかむら たくや)

2011年、「Speee」に新卒入社。社員数20名程から400名程になるま6年間在籍し、Webマーケティングのコンサルティング、DSPトレーディング事業の立ち上げ、社長室にて新卒・中途採用、広報などを担当。2017年1月、VR・3DCG・アドテク関連スタートアップ「VRize」のCOO事業推進責任者に。KDDI∞Labo第11期、CCC運営TVPに参加。3DCGを広告素材として配信できるアドネットワーク“3D AD”の事業立ち上げ。シリーズAの資金調達後、退職。2019年5月、株式会社Meetyを創業し、代表取締役に就任。カジュアル面談プラットフォーム「Meety」を提供中。

Meety:https://meety.net/
Twitter:https://twitter.com/3kkabi

撮影/酒井恭伸 
取材・文/川端美穂

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