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夢は一気に叶わない。多様な人材のキャリアを叶えてきた株式会社UZUZ川畑翔太郎が語る、理想へつながるキャリアの作り方

夢は一気に叶わない。多様な人材のキャリアを叶えてきた株式会社UZUZ川畑翔太郎が語る、理想へつながるキャリアの作り方

新卒でもなく、中途採用でもない、第二新卒・既卒・フリーターの若者たちのキャリアを支援する株式会社UZUZは、多数ある人材紹介会社の中でも異色の存在です。しかし、そんな同社のサポートを求めて多数の若者たちがサービスを利用しています。一般的な就職支援ではなく、あえて今の事業に取り組もうとした理由は何だったのでしょうか。同社で陣頭指揮を執る専務取締役を務める川畑翔太郎さんに伺いました。

本当に支援が必要な求職者に対してサポートが足りない

――株式会社UZUZでは第二新卒・既卒・フリーターに特化して就業支援をされています。あえて、就業支援する人たちを彼らに絞った理由はありますか?

UZUZという会社は、創業者の今村と、代表取締役社長を務める岡本、そして僕の3人で創業しているのですが、僕含めて3年以内の短期離職者なんですね。今村が9ヶ月、岡本が1年、僕が3年で辞めてます(笑)。それで僕たち自身、誰からも相手にされない状況を体感しました。だからこそ、似通った境遇にある同世代の就業支援ができるんじゃないかと考えたんです。

――自分たちが感じていた課題に取り組んだ事業だったんですね。

世の中にはハイキャリア転職の支援をする企業が多いですが、彼らには新たな職を見つけるためにそこまで大きなサポートは必要ないと思うんですよ。だけど、彼らを支援したほうが儲かるからさまざまなサービスが乱立している。一方で、サポートが少なく、困っているのが第二新卒・既卒・フリーターです。これから先、労働者人口が減少していくことを考慮すると、彼らのような真にサポートが必要な人たちをなんとかしたいと考えました

――どのような場面で第二新卒・既卒・フリーターの採用が生じるのでしょうか?

新卒採用を行ったものの採用数が足りなかったり、就職氷河期などの理由で特定の世代が足りなかったり……という理由で募集が発生するケースが多いですね。

川畑さんは中学・高校の同級生だった今村さん(UZUZ創業者)からの誘いがきっかけで同社の立ち上げ期に参画した

――サービスを提供するにあたって心がけていることはありますか?

そもそもどんなキャリアの選択肢があるのかを紹介するところからはじめるようにしています。自分が知っている選択肢からしか選べないので、まずは業界や職種などに関する知識を広げます

加えて、求職者と企業の双方に対して、メリットとデメリットを包み隠さず話すようにしています。これは厳しい言い方になってしまうかもしれないのですが、就労経験が少ない人ほど理想を追い求める傾向が強いんですね。だから、フリーターのまま年齢を重ねるよりも、短期間でも正社員としての経歴を積むほうがいいと説明しています。

――現実を伝えることで、今よりも少しでもいい選択肢を選んでもらう、と。

カウンセリング中に求職者の方から「どうして今から入社する会社の悪い面を言うんですか」と不思議に思われることも多いのですが、ダメなところも把握したうえで入社したほうが長く働けたりするんですよね。逆にものすごく期待値が上がった状態だと、減点方式で見てしまうので実はよくないんです。

――企業側からすると、ネガティブな情報を言われてしまうと困ることもあるのでは?

辛辣なことを言えば、採用する側も選ばれる存在なんですよね。競合他社と比較されますし、魅力が劣れば優秀な人材の採用は難しくなります。だからこそ、企業側にも、現在のステータスでは100%希望通りの採用はしづらい現実を伝えて、そのうえでどのような人材が必要なのかを一緒に考えるようにしています。

「UZUZ」という社名には、感情の疼きを表す「ウズウズ」と巻き込む渦を表す「うずうず」の2つの意味が込められている

転職が当たり前の世の中だからこそ、”乗り換え前提”の就職もアリ

――つまり、求職者と企業それぞれの置かれている立ち位置を理解してもらったうえで、適切なマッチングを実現しようと考えているわけですね。

まさに。求職者も企業も、究極の理想ばかり追い求めて、失敗するケースが多いんです。そうすると、求職者はいつまでも就職できない状態が続きますし、企業は人がまったく採用できない。それって一番良くないですよね。

――確かに。条件すべてが揃う環境を求めていると、何もできないまま時間だけが過ぎてしまうこともありますよね。心当たりがある人も多そうです。

正直なことを言えば、理想と現実のギャップってどこにいてもあると思うんですよ。だからこそ、少しでも理想に近づけるような一歩を踏み出すことのほうが重要で。それで経験を積むことができたら選択肢も広がりますし。

求職者には「希望条件が5つあったとして、そのうち3つが叶えられるようにしませんか?」と伝えるようにしているという

――とはいえ、自分が求職者の立場になったら、希望しない企業に入社するのはそれなりの勇気が必要な気がします。

でも、自分と企業が本当にマッチしているかなんて、実際に働いてみないとわからないと思うんですよ。自分が重要だと思っている条件が、働き始めてみたら意外と気にならないなんてことはよくあります。それに、求めている条件はずっと同じではありませんから。

結婚においても「この人と一生を添い遂げよう」と思っていても、自分のライフステージや環境が変わると噛み合わなくなってくるじゃないですか。キャリアに求めるものも、その都度で変化していくほうが多いはず。しかも今の時代は、かつてのように新卒で入った企業で一生を終えるような価値観も薄まりつつありますから、むしろ乗り換える前提で就職するほうが気分も楽になると思います

――結婚で例えるのは面白いですね。言われてみれば、そうかもしれません。

結婚と同じという点では「安定」に関しても言えるかもしれません。結婚するときに「相手が経済力あるから、将来は安泰だな」と考える人がいると思うんですが、それは確実な未来ではないですよね。もし離婚することになったら、その人は支えを失うわけですから。

――確かに。

本当に安心したいのであれば、他人に頼るのではなく、自分自身がお金を稼ぐ能力をつけたほうがいいですよね。キャリアも同じで、何もスキルを持っていない状態で会社に依存してしまうとかえってリスクになることもありますから。

「何があっても揺るがないキャリアの基盤をつくることが大切」と川畑さん

当事者性を大事にして事業を手がけていきたい

――2021年から新規事業として『ニューキャリア』というサービスをスタートさせましたよね。これは“転職先を紹介しない”キャリアカウンセリングサービスとのことですが、なぜこの事業を手がけようと考えたのでしょうか。

UZUZという会社は、20代だった僕たちが同年代の人たちのために何かできないかと考えた結果生まれたんですね。でも、創業から10年以上の月日が経ち、気づけば創業メンバーは30代中盤に差し掛かっています。当然ながら若い世代とのジェネレーションギャップを感じることも増えてきました。加えて、僕たちのもとで一緒に働いている若手メンバーのキャリアも年を追うごとに積み重なっていきます。ただ、経験を積むとキャリアの選択肢が増えるので、逆に自分の進む道がわからなくなってしまう人も一定数存在するんですよね。だから、30代のネクストキャリアを一緒に考えられるサービスを今のうちにつくっておいたほうが、会社や社員のためになると思いました。彼らに市場感を正しく伝えて、前向きにキャリアを形成していけるようにしたいな、と。

「ニューキャリア」では、専属コーチが1on1でサポートし、一人ひとりにマッチしたキャリアを手に入れることを目指す

そういった社内における課題を解決することを発端にしたこともあり、ニューキャリアは既存事業のように就業経験がない人ではなく、何年か仕事をしてキャリアを積んだ人を支援の対象にしています。

――ニューキャリアはこれまでUZUZで支援してきた第二新卒・既卒・フリーターのキャリア形成にも役立てそうですよね。

そうですね。UZUZのキャリア支援サービスを利用して就職した人たちが、ニューキャリアで自分が納得する形でキャリアを形成できるようになれたらいいなと考えています。これまで2000人以上の支援を行ってきましたが、特に大事なのが「納得感」なんですね。自分で選んだ道であることが何より重要で。そのためには、自分自身の現状と理想をしっかりと把握することが大切なんです。

2019年には第5回ホワイト企業大賞特別賞「個人を起点に進化経営賞」を受賞した

――話を聞いていて、川畑さんたちは当事者性をすごく大切にして事業を手がけているように感じました。

おっしゃるとおりです。たまに「シルバー世代のキャリア支援はしないんですか?」と聞かれることがあるのですが、それはまだ僕たちの課題じゃないんです。

――それよりも解決したい課題が先にある、と。

もし課題を感じているのであれば、当事者たちでアクションを起こせばいいと思うんです。それをしないで問題だけ丸投げにされるのは少し違うかな、と。もしかしたら、自分たちがシルバー世代になったら、新しいサービスを立ち上げるかもしれませんけどね(笑)。

ただ今は、僕たちやその下の世代に対して何ができるかを必死になって考えたいんです。

キャリア支援を続けるなかで、川畑さん自身のキャリアも形成されていった

撮影/酒井恭伸
取材・文/りょかち

川畑翔太郎(かわばた しょうたろう)

UZUZ専務取締役
1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーINAX(現・LIXIL)に入社。1年目からキッチン・洗面化粧台の商品開発に携わるも、3年目に製造へ異動し、毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。高校の同級生の誘いと自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画。第二新卒・既卒・フリーターといった20代若者への就業支援実績は累計2,000名を超える。

株式会社UZUZ:https://uzuz.jp
川畑さんのTwitterアカウント:https://twitter.com/kawabata_career

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