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PARK佐々木智也と田村大輔に聞く、2つの事業が生み出す相乗効果

PARK佐々木智也と田村大輔に聞く、2つの事業が生み出す相乗効果

プロデューサーの三好拓朗さん、アートディレクターの佐々木智也さん、コピーライターの田村大輔さんの3人で発足した株式会社PARKは、さまざまな会社のブランディングやサービス開発、プロモーションなどを行うブランディング・エージェンシー。特にスタートアップ・ベンチャー企業を中心に、数々の事業をサポートしてきました。

そして2020年夏には、これまでの知見を活かし、スキンケアブランド「LOGIC」をスタート。ものづくり企業としての一歩も踏み出しました。「愛はあるか?」を企業理念に掲げるPARKが目指す、クリエイティブカンパニーの在り方とは? 佐々木さんと田村さんに伺います。

創業当時から構想していた自社事業と受託事業のハイブリッド

——ここ数年、クリエイティブカンパニーが自社事業を立ち上げることが増えている印象があります。そういった受注事業だけに頼らない潮流ができている気がするのですが、PARKはどういった経緯で自社事業をはじめたのでしょうか?

佐々木さん:実はPARKを創業したときから自社事業と受託事業のハイブリッドでいこうと話していて。クリエイティブを事業の柱にしつつ、新たなチャレンジとして事業をしたい気持ちがありました。

ただ、受託案件が増えれば増えるほど、自社事業に使える時間や余力がなくなっていくんですね。それで6年くらいは動けずにいて。その間に立ち消えになった事業もたくさんあります。

——とすると、「LOGIC」とそのほかの実現しなかった事業とでは、なにかが違ったのでしょうか。

佐々木さん:複数あると思います。まず、D2Cの潮流がタイミング良くきたこと。次に、受託事業を通じて化粧品の知見が蓄積してきたこと。最後にベンチャー企業と仕事をする機会が増えたことで、どういうステップを踏んでビジネスが成長していくのかを間近で見られたこと。これらが重なったことが大きかったですね。

田村さん:経営者や投資家が多数参加するビジネスカンファレンスに呼んでいただく機会もあって、そういう場に定期的に足を運んでいたことも良い刺激になった気がしますね。

佐々木さん:帰りの飛行機で「俺らもそろそろ自社事業やんなきゃね」と毎回言ってましたから。

面白法人カヤックに在籍していたときに出会った3人が共同代表となってPARKを設立。現在は10名程度のメンバーが在籍している

——自社事業を始めるにあたって、スタートアップ・ベンチャー企業の仕事を受けたことがターニングポイントになったかと思うのですが、きっかけはなんだったんですか?

田村さん:「Skyland Ventures」という若手起業家のスタートアップを中心に投資を行うベンチャーキャピタルのミッションとバリューを策定させてもらったのが大きかったですね。

佐々木さん:TwitterのDMにいきなり連絡が来たんですよ。「相談したいことがあるので時間をもらえますか?」って。その頃は失礼ながらベンチャーキャピタルに対しての理解があまりなかったのですが、代表の木下(慶彦)さんからものすごい熱量で気持ちをぶつけられて。

今は当たり前かもしれませんが、当時はベンチャーキャピタルがブランディングに力を入れること自体が割と珍しかったですし、僕たちとしても新たなチャレンジになると思ったのでお受けしたところ、すごく良い経験になりましたね。

PARKが2017年に制作したSkyland Venturesのミッション・バリュー

——スタートアップと仕事する事でPARKのクリエイティブの在り方みたいなものに変化はありましたか?

田村さん:だいぶ変わりましたね。スタートアップはとにかく成長スピードが早く、場合によっては3カ月で社員が20〜30人くらい増えていたり、事業の方向性が変わっていたりすることもあって。こちらのスピードが遅ければ遅いほど変数が大きくなってしまうので、可能なかぎり短期間で制作することが重要です。だから、ちょっと持ち帰って考えるよりも、その場その場で一緒に話をして決めていく進め方にシフトしていきました

佐々木さん:フットワークはとにかく軽くなりましたね。大きな組織ほど意思決定に時間を要することが多いですが、PARKは僕や田村が直接出向いてディスカッションすることで、できるだけクライアントさんの意思決定のプロセスを早められるようにしています

——実際に仕事を依頼された際、どのような心持ちでクライアントワークに取り組んでいますか?

佐々木さん:僕は「憑依型」です。その企業の人になった気持ちで、既存サービスがあれば使い倒すし、ユーザーになりきったりします。たとえば、女性向けコスメブランドのクリエイティブを作るときは、女性になった気持ちで、実際に化粧水を使ったり、メイクをしてみたりもします。どうしても難しい商材はありますけど、いまのところはほとんど試せるものなので。最初はなかなか時間がかかりましたが、最近は短時間でのめり込み変身ができるようになってきましたね。

田村さん:僕の場合、キャッチコピーなどを作るときは、社外の人も乗っかってきやすいかをいつも考えています。例えば、企業理念は自分たちがありたい姿を語るものですよね。そのとき、これを目指すんだ、世界一になるんだと、ともすると独りよがりになってしまうこともあるかと思うんですね。でも、実際そういうものにあまり人は共感しにくかったりするのではないかと考えていて。だから僕は、地道なヒアリングを繰り返しながらその会社や業界を調べ、コンセプトをまとめて、ようやく言うべきことを形にしたうえで、さらにそこに社外の人が乗っかってこれるかという視点を大事にしています

PARKとLOGIC。2つの事業を同時にやるからこそ生まれるシナジー

——実際にLOGICを立ち上げて事業者になってみていかがですか?

佐々木さん:こんなにも意思決定が多いのかと戸惑う場面が多いですね。これまでは急かす立場にいたので、クライアントさんには悪いことをしていたなという気持ちでいっぱいになります(笑)。

あと、クライアントワークの場合、手を動かさなければ1円の稼ぎにもならないのですが、プロダクトは注文が入った瞬間に売上になるので、その違いはすごく新鮮です。極端なことを言えば、10人のスタッフで100億の売上をつくることもできるので、夢があるなと。

現状は、僕一人でカスタマーサポートを含めかなりのの業務を担っているので、クライアントワークとのバランスの取り方に苦慮していますが(笑)。

外資系広告代理店、面白法人カヤックを経てPARKを共同設立。アートディレクターとして数々の企業のブランディングを手がけてきた佐々木さん

——佐々木さんはLOGICの事業主でもあり、PARKのアートディレクターでもある。二足のわらじだからこそうまくいっている感覚はありますか?

佐々木さん:事業会社の台所事情を理解できたことで、クリエイティブに対するアクセルとブレーキの判断基準が変わったかもしれません

たとえば印刷物の提案をするとき、アートディレクターとしては「こういう世界観を最大限に表現するなら、これくらい良質な紙を使いましょうよ」と攻めの気持ちになる。でも、そこで事業主の自分が「ここで印刷費にお金をかけるより、安い紙を使ってもっとマーケテイングに費用をかけたいな」と冷静な判断をすることがあるんです。

あとは、すごくお金をかけてビジュアルを一つ制作するよりも、同じ金額で10種類つくって効果を測ったほうが良さそうだなと思うこともあって。視点の広さみたいなものは以前より培われている気がしますね。

ワークツールとしてのスキンケアブランドを掲げる「LOGIC」。忙しいビジネスパーソン向けに、スキンケアの煩わしさを解消することを目指している

——LOGICを立ち上げたことで、依頼される仕事にも変化はありましたか?

田村さん:明らかに変わったのは、D2Cブランドのクライアントが増えたことですね。

佐々木さん:今までもtoC領域の依頼はありましたが、サービスを提供する企業が多く、プロダクトを取り扱う企業からの依頼はそれほど多くなかったのですが、LOGICを手がけてからは確実にプロダクトに関する案件の相談が増えて相乗効果が得られていると感じます。今後はLOGIC以外にも自社事業を増やしていく予定なので、うまくシナジーを生み出していきたいと考えています。

——そういったネクストアクションについては、どのようにして決めているんですか?

田村さん:会社の未来に対する方針決定については、共同代表である僕と佐々木と三好の3人で行っています。2年に1度のペースで新規事業をやっていけるといいよね、と話しています。

——定期的に3人で集まる場を設けているんですか?

田村さん:そうですね。3人で定期的にご飯を食べるようにしていて。それとは別に、半年に1回のペースで合宿的なことをやって目線を合わせるようにしています。

——具体的に話が進んでいるものはあるのでしょうか。

佐々木さん:プロデューサーの三好が登山愛好家向けのヤマメシ(山ご飯)ブランドを立ち上げようとしています。登山するときって、高地まで持ち運ぶためにものすごく食べ物を軽量化しているので、なかなか味にこだわれない現状があるらしくて。そんな妥協をしなくてもいいような、グルメなヤマメシを絶賛開発中です。

「愛はあるか?」 新たな愛着や常識を生むために

——2015年の創設から7年が経ちます。あらためて振り返ってみて、現在はどのようなフェーズにあると考えていますか?

田村さん:特にここ数年でようやく創設時に思い描いていた姿になってきたなと思います。やりたい領域や、きちんとプレゼンスが発揮できそうな領域の仕事ができるようになってきたし、自社事業も立ち上げることができましたから。

あと、2021年から発注側と受注側で事業収益を分配する「レベニューシェア」や株式を報酬とする「ストック・オプション」など、今までと違った形態で報酬を受け取ることにもチャレンジしていて。僕らは「クリエイティブ・インキュベーション」と名付けているんですが、そういうプロジェクトもいくつか走っています。

これはスタートアップのブランディングに限りませんが、やっぱりクライアントワークをやっている以上、予算の制約というものはひとつのボトルネックになります。声をかけてくださるのが軒並み熱量の高い会社ばかりで、気持ちとしては一緒にやりたい。でも、お金を理由に見送りにならざるを得ない。それで諦めるしかない状況にあるのは、僕たちとしても心苦しい。だから、報酬形態を柔軟にしていくことで、僕らもある種、運命共同体的な役割として起業家の皆さんと一緒にチャレンジしていけるといいなと思っています

クリエイティブディレクター廣澤康正氏に師事した後、面白法人カヤック、オレンジ・アンド・パートナーズを経てPARKの共同代表になった田村さん

——クライアントワークもLOGICも、いかに社会に価値を生み出していくかにフォーカスしているという点で、手段は違っても目指す方向は同じですよね。2つの事業を走らせながら、これからの時代をどう進んでいきたいですか。

佐々木さん:PARKを創業するときに、「愛が大事だよね」という話をしていて。だから、「愛はあるか?」という言葉を企業理念に掲げているのですが、その根本には自社事業だろうが、受託事業だろうが、自分たちが手がけたもので愛や誇りや愛着のようなものが生まれるようにしたいという思いがあるんですよね。どういった形の愛かは時期によって変化するかもしれませんが、設立当初に掲げた目標はブレないようにしたいなと思います。

田村さん:僕も「愛があるか?」という話に落ち着いてしまうのですが、若い産業に挑戦しているスタートアップはもちろん、LOGICもスキンケアの選択肢を広げるという意味では新しい領域を狙っているんですよね。スタートアップのクリエイティブしかり、自分たちの事業しかり、新たな文化や生活の景色を作るうえで、ブランディングやコミュニケーションは欠かせません。新しくてワクワクする価値を生み出すことに直結する事業という意識で、これからも自分たちの仕事に取り組んでいきたいと思っています。

佐々木智也(ささき・ともや)

1979年生まれ。東京造形大学デザイン学科インダストリアルデザイン専攻卒。スタートアップから上場企業までブランディングを軸に活動するクリエイティブファームPARK Inc.代表取締役。アートディレクターとしてCI/VIやグラフィックをはじめ、パッケージ、WEBやUI/UX、IoTプロダクトまで領域を越えたクリエイティブを手がける傍ら、2020年夏より忙しく働く人の“ワークツール”を目指したミニマル・スキンケアブランド『LOGIC』を立ち上げ、事業化としても挑戦中。 趣味はカラオケと自然派ワイン。いつか小さなワイナリーをつくるのが密かな野望。

田村大輔(たむら・だいすけ)

1982年生まれ。2004年よりクリエイティブディレクター/コピーライター廣澤康正氏に師事。面白法人カヤック、オレンジ・アンド・パートナーズを経て、2015年PARK創業。スタートアップや地域開発を中心として、コンセプト設計やブランディング、プロデュースに携わる。

撮影/武石早代
取材/村上広大
文/瀬口あやこ(アニィ)、村上広大

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