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クリエイターのブランドづくりをサポート!熱くなりすぎない社長・籔和弥がMOSHでつくる新たな経済圏

クリエイターのブランドづくりをサポート!熱くなりすぎない社長・籔和弥がMOSHでつくる新たな経済圏

ヨガやボディメイキングなどのフィットネス、美容やコーチング、音楽、ダンス……近年の様々なサービスのオンライン展開の背中を押しているのが、個人がネットで簡単にサービス販売できるECプラットフォーム「MOSH」です。

今回はMOSH株式会社のCEO籔和弥さんにMOSHが描くCtoCサービスのかたち、「前のめりになりすぎない」という仕事に対するマインドセットなどについてお伺いしました。

※CtoC:Consumer to Consumerの略。企業ではなく消費者から消費者へモノやサービスを販売する個人間取引のこと。

世界を旅してCtoC事業の大きな波を体感。MOSHの創業へ

——MOSHを創業したきっかけを教えてください。

籔さん:2016年末に前職をやめて、世界の市場がどうなっているのかを見て回ろうと4ヶ月かけて世界一周したんです。そこで、アジア、インド、アフリカを含め、AirbnbやUber、配車を中心としたGojek※やGrab※など、個人と個人が取引をするCtoCの商売がかなり普及しているのを体感しました。観光時に現地のサービスを知らないのは少し不安ですが、、プラットフォーム内で信頼が蓄積されていれば国境は関係なく安心して使えます。その様を見て、個人間取引はものすごい可能性を秘めていると感じたんです。

特にサービスの領域ではCtoCでの取引が今後大きく広がっていくだろうなと思い、帰国後にMOSHを立ち上げました。

※Gojek:ゴジェック。ジャカルタの同名ベンチャー企業が展開する配車サービス。

※Grab:グラブ。シンガポールの同名ベンチャー企業が展開する配車サービス。2018年にはUberが東南アジア事業をGrabに売却したことで話題に。

——実際に自社の事業にする決め手はなんだったのでしょうか?

籔さん:起業家や投資家、消費者150名ほどとお話しする中で今後は個人の自己実現が課題になってくるだろうと感じたんです。ある種の生き様、個々人がしたいと思っていることがすごくあって、その「Will」に対してハードルを持っている方がたくさんいる。それをサポートしていきたいと思ったんですよね。

前職では立ち上げタイミングからスタートアップに携わっていたことで起業の大変さを理解していたので、自分のなかで信じられる原体験や、自分なりに仮説を持つことってすごく大事だなと思っていて。そういう意味でも、実際に話を聞きにいきました。

淡々とスケールの大きい話を展開する籔さん

——では、MOSHではCtoCの中でも、なぜクリエイターにフォーカスしたのですか?

籔さん:僕が見ていた限り、2017年時点ではCtoCでモノを売っている人はいたけれど、サービスを売っている人はまだそんなに多くなかった。そもそもサービスって可視化されていないから、伝わりづらいものではあったんですけど、InstagramやYouTubeなどの動画・写真メディアの発展によって、それまで可視化できなかったモノを発信できる人たちが増えていったから、その発信を中心にサービスという切り口で商売できるんじゃないかと思ったんです。

とはいえ、最初からクリエイターにフォーカスすると意識をしていたわけではないんです。クリエイターエコノミー※が1つのトレンドになっていますが、それは結果的にその形に行き着きました。

※クリエイターエコノミー:ジャンルを問わず個人のクリエイターの情報発信や表現によって、収入を得ることにより形成された経済圏のこと。

広めるためのチャネルは既にある。だからこそMOSHは個人のブランド作りに貢献していきたい

——MOSH以外にも個人のノウハウやスキルや体験を売買するサービスが出てきていると思いますが、MOSHならではの特徴はなんでしょうか?

籔さん:確かに日本でも”スキルやノウハウを売るEC”は多く登場してきていますが、まず、そもそもECビジネスには楽天のように消費者が検索や比較検討して購入するモール型と、そのブランドが好きで直接購入するようなBASEみたいなストアフロント型というものがあるんです。僕らは後者で、例えるならサービス業版のBASEみたいな形ですね。サービス業を営まれている方が、簡単に自分のサービスECサイトを作れる、自分のフォロワーに合ったメニューを作ってブランディングしていけるということが、大きな特徴だと思います。

ストアフロント型のサービスECのなかでは、MOSHが最初にスタートしていて、事業者やクリエイターの数も一番多い。純粋に一番いいプロダクトをいち早く作り続けているということがMOSHの優位性なんだと考えています。

——モール型のほうが集客はしやすいのかなという気もするのですが、ストア型を選ばれたのはなぜなのでしょうか?

籔さん:個人的にモールはクリエイターさんにとって販売チャネルの一つにしかなり得ないかなと思うんですよね。もちろんモールで事業を大きくするぞ、っていう会社もあると思うんですけど、個人で事業をやろうとした場合、普通にInstagramもYouTubeもTwitterもTikTokもやるし、他のモール型のECサービスにも出品するし、できる限りのいろんなチャンネルを発信媒体として使うと思うんです。それを集合させて、その人だけのブランドを作っていくという思考に、多くのクリエイターがなっている。だから、ブランドの世界観を表現しやすいストアフロント型の方を僕らは手がけているんです。

MOSHでは「こういうジャンルがあるんだ」という新しいジャンルのサービスがかなり生まれてきているのですが、それがSNSで発信されて多くの人に触れることで、「こういうことをやっている人がいるなら、私はこれができるかも」とまた新たなアイデアが生まれてくる。なのでモール型のように僕らがビジネスを分類していかなくても世の中全体で波はできていくんです。それを大きい波にしていく手助けをすることが僕たちの役割かなと思っています。

——MOSHを利用するクリエイターはSNS経由で増加しているのでしょうか?

籔さん:現状、ほぼ自然流入や口コミで広がっています。最初はフィットネス系のカテゴリーに特化した人たちが多くて、SNSで徐々に認知されていって他のカテゴリーのところにも広がって……みたいな感じですね。日本のマーケットはやはり店舗を中心とした出品者が多いので、そうした文化のなかで、個人ECの経済圏を、どのくらいのスピード感で広げていけるのかは課題です。だから、まずはクリエイターの数を増やしていけるかどうか。

自然流入だと間違いなく時間はかかりますが、その分エンゲージメントは高い。最初の2、3年は今と比べると成長角度は全然高くなかったですが、最近は安定して増加していますね。個人を主体とするチームやギルドみたいな方々にも使いやすいようにMOSH for TEAMSというプロダクトを新しく提供し始めました。

※MOSH for TEAMS:MOSHが手掛ける、個人がチームを作り、共同でサービスを展開することのできる取り組み。メンバーごとの売り上げ分配や管理、チーム一覧ページなどの作成を簡単に行える。

使ってもらえるサービスを作るために「コミュニティの熱量」を察知する

——MOSHは創業当時はまだ未開の領域のサービスだったと思いますが、立ち上がりは順調でしたか?

籔さん:いや、想像の2倍ぐらい時間がかかりました(笑)。立ち上がりに時間がかかるのは、ストアフロント型の課題なので、そこを耐えきれるかどうかつがひとつのポイントですね。コロナ禍でデジタル化が進んでサービスのECに対しての抵抗感がやわらいできましたが、僕らとしては今の状態が2018年とか2019年とか、もっと手前にあると思っていたので、見立てとしては相当早すぎた感じがありました。

資金がショート寸前までいったこともあるという。大きな想定外の出来事にも動じないところに、経営者の胆力を感じさせる。

——MOSHでは創業以来口コミでのサービスの広がりを大事にされていますが、それはなぜでしょうか?

籔さん:それは前職での体験が大きいです。特定のコミュニティにちゃんと受け入れられていけば、CtoCのプロダクトはちゃんと広がっていくんです。前職でやっていた飲食系の口コミサイトも、東京にしかレビューを書いてくれる人がいないと、他の地域の口コミは増えず、東京の飲食店の口コミばかりになる。つまり、同じプロダクトでも、各地域でコミュニティを作っていかないと広がらないし、逆に言うと熱烈なコミュニティがあったりコアで使ってくれる人がいれば広がっていくんです。それを再現性高く感じていたのが大きいですね。

——クリエイターに「使ってもらえるサービス」であり続けるポイントはなんだと思いますか?

籔さん:プロダクトに関しては、まだまだという認識なのですが、改善していくというカルチャーを作ることがすごく大事だと思いますね。MOSHの企業バリューで「Start With One」、つまり、”ひとりの生き様からはじめよう”というのがあるのですが、これは創業タイミングから特に意識しているものなんです。僕は生のデータを取りにいくことをすごく大事にしていて、クリエイターの方のレッスンもサービスも受けに行くし、場合によってはその人とすごく仲良くなって家に泊まらせてもらったり、それぐらいすごく入り込んで、その人が本当に何をやりたいと思っているのか、本音ではどう思っているのかを把握しようと努めていて。インサイトをしっかり掴んで改善していく。そうして初めて使ってもらえるサービスになるのかなと。

経営メンバーの名刺は、個人個人オリジナルのロゴが採用されている。名刺やオフィスの空間など、デザインには並々ならぬこだわりがあるという。

自己実現のためにもクリエイターをサポートし、個人経済圏を作る

——話をお伺いしていて感じているのですが、籔さんは苦労や難題に動じないですよね。

籔さん:そうですね。気持ちや感情の浮き沈みはあんまりないですね。気長にやらないと実現できないビジネスモデルだし、めっちゃ営業すれば売れるものでもないです。全体的なメンタリティーとして、前のめりになりすぎないよう、自分のペースを意識して仕事をしています。どうしても創業社長って、事業が大きくなればなるほど接しづらくなっちゃうと思うから、肩の力が抜けているほうが周りの方も接しやすいと思って。ただ、ここは前のめりにならないといけない、という嗅覚もすごくあるのでここぞという時は猪突猛進でやります。

——なるほど、脱力と熱意のバランスがあるんですね。それでは事業の意思決定におけるバランスはどのように取られてますか?

籔さん:物事には、本当に何かを言い切れる理由とか、これは絶対成功する、という極端なことってあまりないと思うんですよね。だから、感覚か論理かどちらかに寄ることもあまりなく、正解がどこなのかをタイミングに応じて見つけていくのが重要なんじゃないかと思っています。

感覚で決めているように思われる部分にも僕のなかではロジックがあるんですよ。たとえば、MOSH自身のサービス名も「ホームページ作成くん」みたいなサービス名をつけたら、すごくわかりやすいし、検索上位に出てくる可能性も上がると思うんです。

一方で、僕らが対象にしているクリエイターの方々からすると、「なんかちょっとダサくない?」って思うんじゃないかなって。それって論理的な意思決定に振りすぎた弊害ですよね。アートやエンタメが世の中に受け入れられた理由とほぼ一緒で、言語化は難しいけど感覚的に世の中に求められているトレンドってあると思うので、それを把握することが大事だと思っています。

——籔さんは今後、MOSHの事業を含めてどのようなキャリアを思い描いていますか?

籔さん:あんまり自分のキャリアって考えていないんですけど、基本的にはずっと起業家でありたいです。いろんなクリエイターの方々の事業をたくさんサポートすることが自己実現を含めた次の社会的な課題解決に直結すると思っているので、個人の経済圏に対して、組織としてちゃんと影響力を持ち続けたい。1日1日が楽しくなるとか、ある程度熱量を持った状態で続けられて、そこから豊かなつながりが生まれることが、僕にとってのいちばんの喜びです。MOSHの事業を通じて様々なつながりを生み出していきたいと思っています。

籔 和弥(やぶ かずや)


MOSH株式会社 CEO
福井県出身。学生時代に自分でサービスを始める。2014年、Retty株式会社に社員7人目で新卒入社。Rettyアプリのリーダーなどを担当し、2017年に退職。その後、世界一周を行い、2017年8月にMOSHを創業。オウンドメディア「MOSH Magazine」を配信中

撮影/武石早代
文/飯嶋藍子(souLLC.)

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