ロンブー田村淳の人生の投資術「周りも自分もドキドキさせるため、お金と時間の投資をいとわない」
テレビ番組のほか、ABEMA、YouTubeと、さまざまなメディアで活躍しているタレントの田村淳さん。株式会社LONDONBOOTSの設立や、オンラインをベースにしたコミュニティ「田村淳の大人の小学校」の開校、「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」公式アンバサダーの就任など、常に新たなことに挑戦し続けています。
業界の第⼀⼈者に事業成功の秘訣や経営のノウハウについて話を伺う企画「THE PIONEER」では、そんな淳さんの“行動の源”を深堀り。すると、失敗を恐れないマインドから、誰かの一隅を照らしたいという思い、人好きながらもフラットな関係性を保つ一面まで見えてきました。
最初の一歩を怖がっていたら何も始まらない。常に挑戦する道を選択
「たくさんの人に届けられる地上波は魅力的ですが、僕はそれだけでは満足がいかなくて。一つのことだけに固執し、その村に染まっちゃうのが嫌なので意識的にいろいろな媒体に出るようにしているんです」
この言葉通り、多方面のメディアに出演する淳さん。芸能界で活躍するタレントとして早いタイミングでABEMAやYouTubeに進出しましたが、地上波以外のメディアに出る怖さはなかったと言い切ります。
「数年前、街を歩いていたとき、東大生に勝手にカメラを向けられていたことがあったんです。気になって本人に聞いてみると、ツイキャスで生中継していると。それがけっこう衝撃的だったんです。当時、地上波でやりたいことができないことに葛藤を抱いていたこともあって、自己表現できる自分の放送局を持てるんだって。それで実際にツイキャスを始めました。
僕はやったことないことでも、興味を持つと挑戦するタイプ。何でもやってみたいので、新しいことに挑む怖さはありませんね。ツイキャスで警察と揉めた様子をそのまま配信してお咎めを受けたこともあったけど、失敗したからその距離感がわかった。最初の一歩を怖がっていたら何も始まらない。『やらなかった』という後悔をしたくないので、『やる』という選択が大前提ですね」
失敗を恐れない淳さんは今年1月、「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」公式アンバサダーに就任。中小企業48社が自社の広告宣伝に淳さんの画像と動画を自由に利用できるという、タレントとしてチャレンジングな広告業界初の取り組みにも参加しました。
「自分の画像がこういう風に使われるんだという戸惑いも少しありましたが(笑)、ネットで自分の姿をたくさんの人に見てもらうことは悪いことではないと思ってお受けしました。もともとテレビCMを仕掛ける大企業とは契約していなかったので、テレビCMに依存する必要もない。自分がタレントとして味がする間にどうやって露出するのかは、自らの意思でジャッジしたいと思っています」
主体的に番組制作ができるYouTubeの魅力
淳さんのセルフプロデュース力は、吉本興業を離れた相方の田村亮さんのために立ち上げたYouTubeチャンネル「ロンブーチャンネル」でも存分に発揮されることに。YouTubeでは自身で編集権を持つことの楽しさに加え、企業の広告案件を自分で対応できるおもしろさに気付いたと淳さん。
「自分のチャンネルに対して、企業の広告案件がつくこと自体が驚きでした。通常、テレビ番組のお仕事ではテレビ局や制作会社の方たちと一緒に番組をつくりますが、YouTubeでは広告主を自分で選べるし、プチCMみたいなものまでつくれる。そうしたことも含めて、主体的に番組づくりができて楽しいです。最近ではもっと編集技術をアップデートしたいと思って、いまAdobeさんに編集が上手くなるカリキュラムを組んでくれないかとお願いしているところです(笑)」
しかし、さまざまな企業からオファーが急増したことでの懸念点も。反社勢力と関わりを持たないようにするために、所属先の吉本興業に力を借りているそう。
「YouTubeの番組内容については、基本的に吉本はノータッチ。『これをやれ、これをやるな』という指示もありません。自分がやりたいと思ったことを好きにやらせてもらっています。ただ、反社会勢力と繋がりを持ってしまったら意味がないので、そこは吉本にチェックをしてもらっていて。その分、お金はお支払いしています」
お金は企業の本気度を知る尺度。ただ執着はしない
経営者向きなのではとさえ感じさせる、挑戦への姿勢とその手腕。ところが、淳さんからは「経営者に向いていない」と返ってきます。
「経営者は売上ベースで考えますが、僕はそれを考えないんですよ。家族がよほど贅沢しなければ一生食べていけるお金を担保してからは、お金に執着していなくて。お金は当然たくさんあったほうがいいし、あればできることが変わってきます。だけど47歳にもなると、服も毎日同じでいいし、自分のために使うことがほとんどないんです。
それに経営者は社員の生活に対して責任を負いますが、僕は人の家庭を背負うことまではできない。誰かが経営するものに対して投資はできるけど、自分が経営のトップになってやることはないですね。責任を背負うと、動ける範囲が狭まっていくのが嫌なんです。株式会社LONDONBOOTSも亮さんが吉本に戻れば、すぐにでもたたみたいくらいです(笑)」
一方で企業案件を受ける際は、提示された金額が企業のやる気を測る尺度になっているとも。
「その会社の本気度が金額に現れると思います。多ければ多い方がもちろんいいけど、お金がたくさんあっても使う量は決まっているし、家も建て終わったし、贅沢したい気持ちもない。だから、もしお金を使うとしたら、みんなと共有できる面白いものがいい。ただ、前澤友作さんのように配れるほどのお金は持っていないので、ドキドキとワクワクが共有できるような使い道をいま模索しています」
気付いていない誰かの一隅を照らしたい。仕事の根源は「人が好き」という思い
「仕事で重要なのは、お金ではない」と語る淳さん。では仕事のモチベーションはどこにあるのでしょうか? そのヒントは、自身が校長を務め、国籍や世代、仕事、環境、価値観の異なる人たちが集うコミュニティ「田村淳の大人の小学校」にあるよう。
「学校内にボードゲームをつくるグループがあって、そこで手掛けたボードゲームは校内で300個ほど即売。いま、それを校外にも売り出そうという動きも起きているんです。校内でのお金のサイクルはもちろん、外から得たお金が内部で回っていく楽しさ、自分でお金を生み出すことの喜びを味わってほしいんです。直近だと、日本唐揚協会会長のやすひさてっぺいさんに講師として授業をしてもらい、いずれ唐揚げ屋さんをつくりたいと考えています。自分たちがつくった唐揚げで、オンラインサロンの月謝3800円を賄えるサイクルを構築できたら面白いなって」
人と人を結び付け、新たなことを生み出す淳さんですが、その根本には「人が好き」という思いが。
「僕は好きな人や感覚が合う人とはどんどん会話をし、そんな人たちと常に一緒にいたいと思っていて。コミュニティ内でもやっぱり合う合わないがあって出て行く人もいますが、続ける人とはすごく濃い関係性になるし、そういう感覚が心地よくて。信頼し合える人と議論するのが好きなんです」
好きな人と議論する時間の中で、その人自身が気付いていない魅力や特技を引き出すことにも喜びを感じているそう。
「『自分には特技がない』という人が多いですが、誰もが秀でた何かを持ち合わせていると思っています。『田村淳の大人の小学校』でそう嘆く生徒がいたので話を聞いてみると、仮設住宅にめちゃくちゃ詳しいことがわかって。今度、仮設住宅の授業をしてもらいますが、教えることで知見がより深まるし、人に伝えるためにはどういうスキルが必要なのかという学びも生まれる。そういう循環もいいですよね。
ほかにも、ゲッターズ飯田さんと星ひとみさんが好きで関連の占い本を全部読んでいる方もいて。その生徒も特技はないというタイプでしたが、占いの話をするときは自信があって堂々としていたので、コミュニティ内で占いの館をつくってみたら大行列。自分の気付きで誰かの一隅を照らせたときに、相手からいただく感謝の言葉がすごくうれしくて。これは、この先もずっとやっていきたいですね」
「田村淳の大人の小学校」はもちろん、バラエティ番組でもプロデュース力により、新たな人気者を誕生させることの多い淳さん。どうしたら人の魅力を引き出せるのでしょうか。
「本人が気付いていないけど、こういう風にしたら面白いじゃんって思うんです。何かのきっかけでその人の人生が大きく変わるのではないか、そういう視点でいつも見るようにしていますね。だけど、人の魅力を見つけて背中を押すのは好きですが、最後までは面倒を見ません(笑)。うまくいこうが失敗しようが元々ゼロなんだからいいじゃんって。失敗が怖くて一歩踏み出せない人が多いですが、ちょっとだけ背中を押してみたら、意外とみんな進むんです」
相方の亮さんと伴走できるのは、昔からの関係値があるから
「大好きの人のために動く」という淳さんですが、「嫌いな相手とは無理して付き合わない」と話します。
「嫌いな人には『嫌いです』とすぐ告げて、二度と関わらないようにします。人に対しての悩みが増えるとしんどくなるので、僕はバサバサ切っちゃう。『そういう話し方や質問は嫌いです』とはっきりと言いますし、自分が嫌いな理由を添えてお伝えすることは失礼じゃないと思っていて。それでも人間関係を構築しようとしてくれる人には歩み寄りますが、よっぽどなことがない限り難しいですね。嫌いな人が実はいい人だったというのは、結果論。早いタイミングで嫌いな人から離れる方が、自分にとっても相手にとっても最良の選択だと思います」
また、大好きな人たちに対してもフラットな関係性を構築。「友情」という陳腐な言葉ではなく、心で繋がっている人たちを大切にしている様子です。
「本当の友達は、『友』なんて言葉を使わなくても繋がっていられると思っていて。僕は『友達』と言い合わないし、しょっちゅう連絡を取ったりもしません。それでも繋がっていられる人が友達なんじゃないかなって。そういう意味で人間関係の捉え方はドライだと思います」
芸人より起業家やクリエイターの友人が多いという淳さん。その理由には自分自身の成長が関係しているよう。
「いつも同じ芸人仲間で集まったりと、村社会のような絆を確かめる集まりが好きじゃなくて。それだったら、ドキドキするような普段つながりを持てない人とごはんに行く方が面白いです。そういうドキドキは自分から探さないと得られないんですよね。でも中には、『口ばっかりの人だったなぁ』と失敗することもありますけど(笑)」
淳さんが築いてきた人間関係の中で、「大好きでもない人」と語るのが相方の亮さん。「いま出会っていたらすぐにお別れしているかもしれないですね」と笑います。
「目標自体が違う人とは一緒に伴走できないんですが、僕と亮さんは目標が全く違います。でも伴走できているのは、コンビという繋がりがあり、昔からの関係値があるから。いま、亮さんと知り合っていたら、目標が違うので一緒に走り出すことはないと思いますね。だけど、これまで僕の極端な発言を『うちの淳はこういうやんちゃな子なんです』と、いつも隣で笑って中和してくれたのが亮さん。数え切れないぐらい助けてくれました。その信頼関係があるから、いまもコンビが続いているんです」
そんな亮さんの闇営業問題をきっかけに、「もともと辞めようと思っていた」という吉本興業との関係性も変わり、所属事務所のいい一面を知ることができたとも。
「吉本は自己PRが下手な会社。だからいい部分が全く世の中に出ず、ただのブラック企業という話が一人歩きしていて。だけど、闇営業問題が起きたときに会社の人といろいろと話して、優秀な社員がたくさんいて、その人たちがどういう気持ちでタレントと向き合っているかを深く知れた。もちろん嫌いな社員もいますが、現場にいるマネージャーなど信頼できる人がたくさんいるので、そういう人たちと仕事がしたい。いまはギャラも可視化されていますし、僕は活動の幅が広すぎてマネージメントがしんどい部類のタレントですが、それでも支えてくれるのでありがたいです。だから現時点では、吉本から独立する理由がないんです」
あるものを疑い、ないものは自分でつくる
変化が著しい、いまの時代。だからこそ、変わっていく事象に柔軟に対応し、「進化」することを大切にしていきたいと淳さん。
「僕は失敗した場合、アイデアを出して対応してきました。失敗をたくさん重ね、そこから得た学びを次に生かすことが進化だとしたら、これはとてつもなく大事なことなんじゃないかって。
長いこと芸能界に身を置いていますが、いまの芸能界をちっとも疑わず、ずっと同じところに同じ状況で居続けることに不安を抱かないということは、進化せず、思考が停止しているということ。この進化していない状態では、僕自身が納得できないんですよ。
『田村淳の大人の学校』では『有疑無創』という校訓を掲げていますが、これは『あるものを疑って、ないものは自分でつくる』という僕が考えた造語。この校訓通り、この先も常識を疑って新たなものを生み出し、自分がおもしろいと思えることに挑戦していきたいと思っています」
最後に今後挑戦してみたいことを聞くと、「深海にカメラを持って行きたい」と目を輝かせます。
「昔から深海や潜水艦が好きで。先日、深い所まで潜れる潜水艦のドローンを300万ほどで買えると聞いたので、いつか深海に挑戦してみたいです。みんな宇宙に行くところを真逆に行くっていう(笑)。世間の気持ちをどうすれば深海に向けられるのか模索中ですが、どこまで深く行けるのかが、いまの僕の夢ですね」
田村淳(たむら あつし)
山口県立下関中央工業高校卒業。2019年、慶應義塾大学大学 院メディアデザイン研究科修士課程に進学。2021年修了。
Twitter:https://twitter.com/atsushilonboo
YouTube:https://youtube.com/channel/UCTx_XX35OFPYWxc1qQnXypQ
田村淳の大人の小学校:https://www.atsushi-es.fants.jp
撮影/武石早代
取材・文/高山美穂
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