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強い信念で業界に革命を。ソーシャルインテリア社長・町野健に聞く困難を乗り越えるマインド

強い信念で業界に革命を。ソーシャルインテリア社長・町野健に聞く困難を乗り越えるマインド

デザイン性の高い新品の家具・家電を月額利用できる「サブスクライフ」や、家具や家電をお得に買えるオフプライスマーケット「サブスクライフ オフプライス」などを運営する、株式会社ソーシャルインテリア。

循環型社会の実現を目指して事業を続け、2021年8月には東洋経済の「すごいベンチャー100」に選出。さらに2022年3月には、約22億円の資金調達にも成功しました。

今でこそ注目を浴びるソーシャルインテリアですが、創業当時は「うまくいくわけがない」と批判されることもあったとか。それでも着実に業績を伸ばせたのは、代表の町野健さんの熱い信念とポリシーにありました。困難を乗り越えるマインドと、事業を継続していくコツについて伺います。

「こんなビジネスモデルは絶対にうまくいかない」と言われて

——ソーシャルインテリアのメインの事業のひとつは、家具などのサブスクリプションサービス(以下、サブスク)ですよね。事業を続けるうえで苦労はなかったですか?

町野さん:2017年にアメリカのスタートアップイベントに登壇する機会があり、他の企業が「お金の回収の仕方はサブスク」というキーワードを多数出していたのが印象的で。それで思いついたのが家具のサブスクモデルでした。「これはいい!」と思って事業プランをつくり、資金調達のために株主や有識者に相談したところ、「絶対にうまくいかない」と言われてしまいまして(笑)。

——自分がいいと思って出した事業計画を否定されるのはけっこう辛いですよね。

町野さん:そうなんですよ。しかも、赤の他人に言われるならそんなに気にしなかったと思うのですが、事業の当事者や経験のある方から予想以上に多くの否定的な声をいただいたので悩みました。「あれ?」みたいな。

町野さんは、日本HPやマクロミル、グライダーアソシエイツを経て、2018年3月に日本初の家具のサブスクリプションサービス「Subsclife」をスタートさせた

——その方々は、なぜうまくいかないと思ったのでしょうか。

町野さん:これはいまだに指摘されることなのですが、物を貸すためには、まず仕入れが必要で、そのためには資金が必要になります。しかも、当社はデザイン性の高い家具を扱っているので、大きな出費が必要になる。それを長期間で回収するモデルは、無理があると。

——そういった方々をどのようにして説得したのでしょうか?

町野さん:説得は諦めました。「絶対」と言っている人に対して説明したところで、「それならうまくいきますね」とはならないんですよ。ただ、なかには懐の広い方もいて。「うまくいかない」と口では言いながらも出資をしてくださったんです。非常にありがたかったですし、いまでも感謝しています。

——事業をスタートさせてからは順調でしたか?

町野さん:実はそれからも前途多難で。事業の出だし自体は好調だったので、サービスを立ち上げて1年後くらいに、次の家具を仕入れようと銀行やリユース会社追加資金の援助を掛け合ったのですが、ぜんぜん貸していただけなくて(笑)。

当時は、スタートアップのデット・ファイナンス(※近郊からの借入による資金調達のこと)はまだまだ難しい時代で、20社くらい当たったのですがすべて断られてしまいました。

——大変だったんですね……。その危機は、どのように乗り越えられたのでしょうか。

町野さん:社員の給与やメーカーへの支払いは、僕個人の資産で補填してなんとかしていました。そこに株主の方々からの投資を合わせて、そのときはなんとかなっていたという感じでしたね。

会社が資金難の状況で子どもが産まれ、公私ともに大変だったとか

——なかなかヒヤヒヤしますね。

町野さん:もう必死でした。目の前の壁を、とりあえず乗り越えるというか。でも、諦めるという選択肢はありませんでした。2019年当時は、新語・流行語大賞にノミネートされるくらいサブスクがブームだったこともあって、追い風の状況でしたから。めちゃくちゃ売れていたという実感はありませんでしたが、事業は回っていたし、とにかく自分を信じて突き進んでいました。

——2022年3月には22億円の資金調達を実現されましたよね。外から見ると順調なように思えるのですが、実際のところはどうなのでしょうか?

町野さん:そんなことはないですよ。スタートアップあるあるかと思いますが、毎年のように資金の危機が訪れています(笑)。事業規模が大きくなったこともあり、信用もある程度積み重なってきているので、どこからもお金を貸してもらえないという状況はなくなりましたが、売上が増えても返済がキツくなるの繰り返しです。

事業の軸をひとつ決めて、現状に合わせて微調整していく

——何度も資金繰りの苦労を乗り越えて、着実に業績を伸ばしているかと思いますが、事業を継続していくコツはなんでしょうか。

町野さん:自分が考えたアイデアの軸を絶対にぶらさないようにすることですかね。軸がぶれると、しんどくなると思うんですよ。自分の事業を信じられていないわけですから。だから、事業の軸をはじめに考え抜くのはとても重要だと思います。

——と言いましても、不安になることはありませんか?

もちろん不安になる瞬間もあるのですが、ベースとなるビジネスモデルがイケるという確信と、この業界で絶対に革命を起こすんだという信念は常に持っています

——スタートアップの場合は特に、1年後の状況が現在とまったく違うこともあるかと思いますが、それでもブレずに、ということでしょうか?

町野さん:もちろん、絶対になにも変えないという意味ではないですよ。ビジネスの核となる、これだというものをひとつ用意しておいて、世の中の情勢を見ながら少しずつ微調整していく必要はあると思います。
あとは、社員から反論が出てきたときも、注意深く耳を傾けなければならないと思っています。社員は事業の当事者であり、僕と同じ目線で会社を見ているわけですから、常に彼らの声を聞いて、いろいろな改善を重ねています社名を変更したのも社員の声がきっかけだったんですよ。

2022年3月に社名を「subsclife」から「ソーシャルインテリア」に変更。家具の循環型社会づくりをミッションに据えた

——そうなんですか! 社名変更はとても大きな決定のひとつかと思いますが、どんな思いがあったのでしょうか。

町野さん:社名を変える半年くらい前から朧げながら必要性を感じてはいたんですよね。subsclifeと聞くと、サブスクだけをやっている会社なのかという印象を受けるじゃないですか。サービス開始時はそれでよかったのですが、その後にアウトレット家具の販売も開始して、社名と事業内容にズレが生じてきてしまった。

僕らのソリューションやバリューを適切に表現するためには、社名をアップデートする必要がある。そう感じたんです。この決定について、社員も株主も全員納得してくれたのは幸いでした。反対意見も出なかったですし。

——実際に変えてみて、ポジティブな変化は生まれていますか?
町野さん:社名を変えたからといって、いきなり業績がよくなるだとか、偉大な会社になるだとか、そんなことはもちろんないですが、非常にいい変曲点を作れたなと思っています。例えば「株式会社誠実」という名前に変えたら、誠実にならないとダメですよね(笑)。それと同じで、僕らも「ソーシャルインテリア」という、社会と家具を掛け合わせた名前を冠することで、もっと家具の循環型社会づくりに貢献する事業を展開していくことを、世の中に向けて宣言できたと思っています。背筋が伸びるような感覚がありますね。

ビジネス書は読まない。いかに型にはまらず柔軟性を見失わないか

——町野さんは業界の盲点を突いて、新しいビジネスを生み出してきたと思いますが、普段参考にしているものはありますか? 例えば、ビジネス書を読むとか。

町野さん:僕はなにかに依存するのが嫌いで、自分で考えて答えを出したいタイプなんです。ビジネス書も、30代の頃はたくさん手に取りましたが、いまはあまり読みません。本の内容をなぞるような思考回路になってしまうのが怖いんですよね。

もちろん、他人の意見をまったく聞かないというわけではないのですが。違う業界の人と話して、そこから学ぶことはあります。でも、当事者ではない人に相談したところで、その人からのアドバイスはすべてを鵜呑みにはできないので、意味がないと思うんですよ。

——なるほど。他人の意見は参考にしつつも、自分の考えを大切にしているということですね。

町野さん:人の意見をそのまま真似てもうまくいかないことが多いですからね。だからこそ、オリジナリティがとにかく重要で。今の時代は、ありとあらゆるものが検索したら出てくるし、ビジネスモデルもほぼ出尽くしていると思うんですよ。

大袈裟なことを言えば、10年前と比べるとビジネスをやること自体がすごく難しくなっている。そう考えたときに、新しい手法を取り入れる力や応用する力、転用する力を磨いて柔軟に対応するには、別の思考の体操をしないといけないんです。でも、そんなことは、本に書いてないんですよ。

——「柔軟に対応する」というワードが出ましたが、具体的にはどういうことでしょう。

町野さん:僕は、すべて自分で考えている分、失敗もたくさんしてきました。でも、少しでもダメだと思ったらすぐにやり方を変えます。たまに、決めたことは絶対に最後まで実行しないといけないと言う人がいますが、僕はそんなことはないと思っています。

「人間、歳をとるとプライドが高くなって頑固になっていくからこそ、常に間違いを認めて型にはまらないように努力する必要があると思うんですよね」と町野さん

——失敗を恐れず、いかに次に活かすかということですよね。

町野さん:そうですね。プロボクサーのなかには、負けるのが怖くて試合の前日に眠れない選手もいるらしいですが、結果なんてやってみないとわからないですし、考えてもしかたがないことですよね。だから、負けたときは次は失敗しないように、自分を鍛えるしかないんです。

山があるならまず登れ。革命を起こすことだけに時間を費やす

——町野さんは、強い気持ちで困難を乗り越えてきたのだと思いますが、辛いときの具体的な対処法があれば、ぜひ教えてください。

町野さん:問題に対峙するときは、まず問題の主体が自分にあるか、それとも他人にあるかを考えます。自分が手に負えない、コントロールできないものに関しては、不必要に悩まないようにしています。考えても仕方がないですから。ただ、問題の原因が自分にある場合は、納得できる道筋が見えるところまで考え抜きます

——先ほども、町野さんは自分で考えて答えを出したいタイプとのことでしたが、考えるときにカフェに行くなど、なにかルーティーンはありますか?

町野さん:特にないですね。常に3つくらいの物事を同時並行で考えながら動いていて、急にふと答えが落ちてくるという感じです。過去には、夢の中で問題が解決したこともあります(笑)。

——夢で「Yesterday」を作曲したというポールマッカートニーみたいですね(笑)。会社のために常に思考を続けているからこそだと感じます。

町野さん:考えて考えて、日々成長の毎日です。哲学的に言うつもりはないのですが、仕事の行いって回り回って自分に返ってくるんですよ。日々自分たちが、徹頭徹尾、微に入り細に入り、きちんとこだわってやっているか、すべての社員にまでしっかりと気を配ってマネジメントできているか、情報を整理整頓できているかといったことが重要。会社自体も結局、自分たちとの闘いになるんですよね。

——自分たちの管理を適当にやっていたら、自分たちにしっぺ返しが来るということでしょうか?

町野さん:そうです。スポーツ選手もみんな、最後は自分との闘いだと言いますよね。会社も同じなんです。競合を研究しないという意味ではなくて、調べたうえでそれを上回るためには、自分たちからアクションを起こさないといけないんですよ。

「自分を信じてどれだけ磨けるか、これに尽きます」と町野さんは強い信念を持つことの大事さを語ります。

——だからこそ、先ほどのお話にもあったように、事業の軸となる部分が大切ということでしょうか?

町野さん:そこを信じられないと頑張れませんよね。例えば、10億円を受け取って明日から働かなくていいのと、死ぬほど働いた末に革命を起こせるのと、どちらがいいかと問われたら僕は間違いなく後者を選びます

——「苦労は買わずに聞け!」というテーマの取材ではありますが、町野さんのお話を通して、ときには苦労をすることも必要で、なんにでも恐れずぶつかっていった先に見えてくるものもあるのだということを感じました。
町野さん:渦中にいるときは、もちろん辛いですよ。いつもエベレスト登山に例えるのですが、登山中は寒いし、息苦しいし、しんどい。でも、苦労して自分の足で登るからこそ、山頂から見える景色は格別なはずなんです。街で安穏と暮らして人生を終えるよりも、山には絶対に登ってみたほうがいい。そんな思いで、僕は自分の仕事と向き合っています。

町野健(まちの・けん)

株式会社ソーシャルインテリア代表取締役
上智大院修了。日本ヒューレット・パッカードのコンサルタント、マクロミルにて経営企画、海外事業立ち上げを経て、2012年にキュレーションマガジンAntenna立ち上げのため、グライダーアソシエイツを創業。3年で500万ダウンロード達成、黒字化まで育て上げる。2016年にソーシャルインテリアを創業。2018年3月に日本初の家具のサブスクリプションサービスを開始。事業立ち上げ、メディア、マーケティングが専門。

撮影/武石早代
取材/村上広大
文/瀬口あやこ(アニィ)

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