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ラーメンYouTubeチャンネル「SUSURU TV.」にみる、長く伸び続けるコンテンツ作りの秘訣

ラーメンYouTubeチャンネル「SUSURU TV.」にみる、長く伸び続けるコンテンツ作りの秘訣

ラーメンYouTuber登録者数100万人超の人気YouTubeチャンネル「SUSURU TV.」のすするさんは、ラーメン動画の撮影はもちろん、企業とのタイアップ企画、商品開発、SNSコンサルティングと、引っ張りだこの毎日を送っている。「毎日ラーメン健康生活」という唯一無二な企画はどのように誕生したのか、そしてどのように事業を展開し、現在に至ったのか。話を聞きました。

「毎日ラーメン食べ続けたら人はどうなるか?」がYouTubeチャンネル開設のきっかけに

おかねチップス編集部
YouTubeチャンネル「「SUSURU TV.」はどのようにして生まれたのでしょうか?
すする
さん
4年生の時に大学を辞めて2年ぐらい無職をやってたんです。就職をせずラーメンばっかり食べるという退廃的な生活をしている時にサークルの先輩だったチャル蔵(SUSURU TV.の編集を担当している矢崎さん)がYouTubeチャンネルを立ち上げるからと誘ってくれて。

まさか僕がやるとは思ってなかったみたいです。後から聞いたら「自分がやるのは嫌だからお願いした」って言ってましたよ。でも、僕はそのとき実家帰るか東京でなんとか働くかの崖っぷちだったし、おもしろそうだからやることにしたんです。ただ、やるなら本気でやらないとなとは思ってました。
「無職でもラーメンだけは食べ続けてました」と真剣な眼差しのすするさん
おかねチップス編集部
チャンネルを開始して所謂「YouTuber」として食べていけると思ったのはどのタイミングでしたか?
すする
さん
スタートして1ヶ月でチャンネル登録者が1,000人。4ヶ月で10,000人を超えたので、手応え自体は早くからありましたね。10万人を一年で達成した時には、生活費が賄えるぐらいにはなったので、アルバイトを辞めました。
おかねチップス編集部
始めた時点で、YouTubeが仕事になると思っていましたか?
すする
さん
いえ、正直1ヶ月で終わるだろうと思ってました(笑)仕事という感覚ではなく続けてきたのですが、毎日更新してるうちに責任感が出てきましたね。
おかねチップス編集部
毎日更新となると、いつ企画を立てているんだろう?と気になります。
すする
さん
他のユーチューバーさんに比べると大分楽ですよ。毎週企画会議して、長時間撮影してとなると大変だと思うのですが、僕は基本的にお店を決めてラーメンを食べるだけなので(笑)

YouTuberは一人で全部やる方も多いですが、僕は編集をお願いできるチームが最初からいたので出役に専念できました。例えば僕が評論家だったら食べるごとに文章を書かなきゃいけないですよね。でも僕はチームでチャンネルをやっているので、ラーメンを食べることだけに集中できるんですよ。理想のチームですよね。
おかねチップス編集部
「毎日ラーメン健康生活」というコンセプトはどのように生まれたんですか?
すする
さん
それはチャル蔵の発案ですね。「毎日ラーメンを食べてる人がいたら面白いだろう」ってストレートなアイデアなんですが。ただ、ラーメンばっかり食べてて身体壊したりしたらイメージが悪くなりますし、ラーメン屋さんにも喜んでもらえないだろうってことで「健康」を入れてみました。
取材にはチャル蔵さんも同席。「自分がやりたくないからすするさんに声をかけた」とサラっと本音が飛び出る場面も。
おかねチップス編集部
ラーメンと健康。タイトルが世間のイメージと矛盾していて面白いですよね(笑)。
すする
さん
僕自身、元々週3日以上食べてたので、毎日食べたら自分の身体はどうなるんだろうって興味はありましたね。
おかねチップス編集部
動画には「痩せてて羨ましい」ってコメントが多いのが印象的です。実際、体調に影響は無いのでしょうか?
すする
さん
今のところほとんどないですね。ラーメン食べるためにジム行ってますから。麺以外の炭水化物は極力食べないようにしてます。
おかねチップス編集部
毎日ラーメンを食べるために努力しているんですね。すするさんの胃袋の限界が仕事と動画の限界になりますもんね。どれぐらいのペースで食べているんですか?
すする
さん
普段は多くて1日3軒、地方に行った時は、5軒、一日の最大が9軒ですね。
おかねチップス編集部
それだけ食べてて健康を維持してるのはすごいですよ!!
すする
さん
1,000日目の頃に今より15キロぐらい太って誰がみても不健康な見た目になっちゃったんですよ。それまではファストフードを食べたりもしていたので。そこから節制するようになりましたね。
おかねチップス編集部
1,000日目を境に更なるプロ意識が芽生え始めたと。
すする
さん
ラーメンを食べ続けて若くして亡くなってしまった方もいるので。不健康というイメージだけはつけたく無いんですよ。そこだけは絶対に崩さないようにしています。

大切なのはラーメン屋ファーストであること。信頼関係がSUSURU TV.ブランドをつくる

おかねチップス編集部
「SUSURU TV.」の運営元である株式会社SUSURU LAB.は2021年に広告部が設立されました。会社としてはどんな事業を行っているのですか?
すする
さん
映像制作と広告事業の2つの部署があり、タイアップ動画の制作からSNSのコンサルティング、PRまで幅広くお受けしています。
おかねチップス編集部
ラーメン以外のジャンルのお仕事もされているのですか?
すする
さん
基本的にはラーメンが中心ですが、健康商材や食品に関連するクライアントさんも増えてきていますね。動画でのタイアップに関しては僕が本当にいいと思うものや普段から使用しているものに限定しています。

予算や商材が合わない時は繋がりのあるYouTuberさんやインフルエンサーさんをご紹介することもありますね。
おかねチップス編集部
事業として「SUSURU TV.」ブランドを育てる上で意識していることってありますか?
すする
さん
1番はラーメン屋ファーストであること。僕自身がリスペクトを持っているのは大前提として、ビジネスを長く続けるためにはラーメン屋さんに嫌われないことは絶対です。

また、YouTubeでは僕は絶対自分が好きなラーメンを食べるようにしているんですよ。お金をもらったからといって自分のお勧め出来ないラーメンを無理やり食べに行くようなことはしません。儲かるよりも大事な線引きがあって、そこははみ出さないようにしています。
おかねチップス編集部
会社の本質にすするさんの「ラーメン好き」が土台にあるということですね。
すする
さん
ラーメンを食べなくなったら終わりだと思うんですよね。誰にも追いつかれないくらい食べ続けて、「ラーメンといえば”すする”」という存在であり続けたいんです。

会社のメンバーが増えて、業務委託のパートナーも増えていますが、ラーメンを絡めた企画であれば必ず僕もチームに入るようにしていますし、お店とのやりとりは僕がやるようにしています。
おかねチップス編集部
そうしたお店との信頼関係が重要だと。
すする
さん
信頼関係をちゃんと作っているからこそ成り立つビジネスだと思いますね。ラーメン屋の方々が集まる飲み会なんかもちゃんと足を運ぶようにしています。小さなことのようですが、そういう地道なコミュニケーションは大事ですよね。
おかねチップス編集部
会社としての今後の野望はありますか?
すする
さん
僕はあんまりそういうこと考えてないんですよ。代表のチャル蔵も考えてないので、誰も考えてないんですが(笑)僕個人としては、とにかく毎日ラーメンを食べる生活をできる限り続けていきたいですね。本当に無理だってなる時まで。その根幹だけはブラさずに守っていきたいと思っています。まあ、ラーメン食べてるだけなんですけどね(笑)
事業の根幹は「すするさんがラーメンを食べ続けること」。こんな会社は他にはない。

YouTubeが長時間視聴されるメディアとなり、動画の尺も延びるように

おかねチップス編集部
流石にラーメンを食べたくなくなった時期ってあったんじゃないですか?
すする
さん
1年目は少しだけありましたが、それ以降全くないですね。食べれば食べるほど好きになるし、どんどん行きたいお店は増えていくんで。
おかねチップス編集部
では、「SUSURU TV.」のチャンネル運営をしていく上で行き詰まりを感じたことはありましたか?
すする
さん
立ち上げた当初のフォーマットのまま動画を更新し続けて2020年ごろにマンネリ化してしまったんですよね。定例会義もやってなかったですし、ノリで更新していたんです。なので2000日を目処に運営の方針をしっかり固めて、動画のフォーマットも作り直したんです。タイムカード切るようになったり、ちゃんと会社っぽくしました。苦労、というよりはそこが転機なりましたね。
おかねチップス編集部
新しい動画のフォーマットは具体的には何を変えたのでしょう?
すする
さん
YouTubeで好まれる表現というのは日々変わっていくので、他の人気番組の作り方を研究してフォーマットを作り直したんです。逆にそれまで変えずにやってこれてたのが不思議なぐらいなんですけど。

昔はとにかく短くてテンポの良い動画が人気だったんですよ。でも、YouTube視聴が一般化してきたことで、多くの人にとって普段から長時間見るメディアになったんです。YouTubeのアルゴリズムもそれを加味して長時間の視聴を推奨していたので、YouTuberがつくる動画は以前にまして長くなる傾向があったんです。今って1時間以上の動画でも普通に観られているじゃないですか。そういう点からフォーマットを合わせていきました。

僕らの場合、今までのフォーマットから変えたのは、駅を降りて歩いてラーメン屋に行く過程を映すようにしたこと。なので、そこまで大変ではなかったんです。そして、「SUSURU TV.」は基本となるフォーマットが長い時間を経て確立されていたので、動画が長くなっても視聴者がついてきてくれたんです。そこは視聴者やクライアントさんからも評価していただいているポイントですね。

YouTubeはコアな分野でこそ可能性が開ける

おかねチップス編集部
2021年11月の生配信でチャンネル登録者100万人を達成されました。
すする
さん
びっくりしますよね。いつも「もうこれ以上伸びない!」と思って動画を更新してるので。
おかねチップス編集部
これまで登録者数が減ったことはなかったんですか?
すする
さん
ありがたいことにそれはないんですよ。ちょっと伸び悩んだ時期があったぐらいですね。


1番伸びていた時期が1ヶ月で2万人だったんですが、そこから数千人に下がってしまったことがあって。今は平均して約1万人に新規登録いただいています。登録者数が減らない、というのは他のYouTubeチャンネルをみても珍しいかもしれないですね。
部屋の片隅に無造作に置かれていた登録100万人記念の楯。
おかねチップス編集部
安定的な伸びの要因はなんだと思いますか?
すする
さん
うーん、強いて言うなら分業していることですかね。
僕はラーメンを食べることだけを考えているのですが、それだけでは企画としては成り立たないんです。絶対に「ユーザー目線」があったほうが動画の再生数は伸びると思います。

そこを担保してくれているのが、チャル蔵なんですよね。彼は「食のコンテンツって何が面白いの?」って本気で思っているくらいユーザー目線なので。そういう人間の目線で動画の編集を行っているからこそ、多くの人に観てもらえるバランスになってるのかなと。
おかねチップス編集部
ラーメンを食べ続けるけれど、ただの「食」のコンテンツではないと。
すする
さん
そうですね。ラーメンの「情報」だけだったら別に食べる必要もないじゃないですか。でもラーメンを食べ続けたらどうなるかは食べ続けないとわからないんで。そういうドキュメンタリーのような側面はあるかもしれないですね。
ラーメン好きってどこにでもいるし、流行り廃りもない。コンテンツの間口としてはめちゃくちゃ広い。実際オファーをいただくクライアントの担当者もラーメン好きな方ばかりですし。そういう「ラーメン」そのものの力に助けられてるのは間違いないんですけどね。
おかねチップス編集部
これからYouTubeを始める人に向けて、何かアドバイスはありますか?
すする
さん
僕が言えるのは「自分を信じて継続するしかない」ということですね。元々僕が始めた頃ってラーメンYouTuberっていなかったんですよ。ラーメン自身は人気だし、一生廃れない分野だと思うのですが、なぜかそこの席が空いていた。だからトップを取れるんじゃないかと思ったんですよね。はじめれば観てくれる人は後からついてくる。僕はそう信じて続けてきました。

TikTokだったらトレンドを追ってそのジャンルを狙うのもいいかもしれませんが、YouTubeはトレンドに合わせても上手くいかないと思いますね。むしろ、YouTubeはコアなことを続けさえすればいつかはねる可能性がある。それを信じて、先を見ながらやっていくのがいいですよ。

すする

ラーメンYouTuber。無職期間に「毎日ラーメン健康生活」をテーマにSUSURU TV.を一緒に立ち上げ、2015年11月から配信を開始。SUSURU TV.のチャンネル登録者数は、109万人(2022年10月現在)。総再生回数は5億回を超える。

SUSURU WEB.:https://www.susurulab.co.jp/

撮影/武石早代
取材・文/高橋直貴

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