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不動産投資クラウドファンディング「CREAL」が目指す、資産運用の総合プラットフォーム

不動産投資クラウドファンディング「CREAL」が目指す、資産運用の総合プラットフォーム

今、注目を集めている個人の資産運用。しかし、従来の手法では相当な知識と大きな初期投資額が必要で、初心者がなかなか手が出せなかったのも事実です。そこへ登場したのが、クラウドファンディングで1万円から不動産投資が可能なサービス「CREAL(クリアル)」。手がけるのは、クリアル代表取締役社長・横田大造さん。いずれは資産運用の総合プラットフォームを目指すという横田さんに、事業の立ち上げから資産運用のノウハウまでを伺いました。

不動産イノベーションが進まないなら自分でやればいい

――不動産投資のクラウドファンディングサービス「CREAL」は、どこから着想されたのでしょうか?

横田大造さん(以下、横田さん):私は新卒でアクセンチュアに入社した後、不動産ファンド業界に身を転じた「変わり種」のキャリアです。20年弱、不動産投資を行う不動産ファンドの現場でキャリアを積んでいたのですが、将来的に不動産から生み出されるであろう利益をもとに不動産価格を求める収益還元法というプライシングモデルの登場以後、ほとんど大きなイノベーションが起こっていないことに愕然としました。ましてやITとの融合は全く進んでいない。そんな不動産投資の現場を変革するべく、不動産×資産運用×ITを主軸にした新しいビジネスを着想し、クラウドファンディングサービス「CREAL」を立ち上げることにしたんです。

横田さんは、2017年よりクリアル株式会社の経営に参画している

――なるほど。そもそも不動産投資のメリットって何でしょうか?

横田さん:不動産投資は以前から資産運用の世界で重要な位置付けにあるんですが、株式などの金融商品って、不祥事やコロナ禍があったりすると一気に上下しますよね。それに比べて不動産は、不況であってもほとんどの方が賃料を支払ってくれる。一般的に不動産の賃料はほとんどディスカウントもないですし、値動きが少ない比較的安定したビジネスなんです。そのため、投資のプロの方、いわゆる機関投資家さんたちは、非常に高い割合で不動産投資を取り入れられています。

※顧客から預かった資金を運用・管理する大口の投資家のこと

――不動産投資はプロの投資家たちが取り入れている一方で、個人にはやはりハードルが高いですよね。

横田さん:ええ、不動産投資自体は安心的ではあるんですが、個人で参入されている方は非常に少ないですね。なぜかというと、過去に不動産投資における詐欺事件が起きたことで警戒心が高くなっていたり、マンションを一部屋買うのだって個人からしたらかなり大きな資金が必要になってしまうからです。借金をしなきゃいけないとなると、不動産投資に踏ん切りがつきにくい。それに加えて不動産業界には、いまだに古い慣習が多く残っていて、不動産会社側とお客さま側で知れる情報に差が生じてしまうことで、不動産投資のハードルをさらに上げてしまう。こうしたことが、不動産ビジネスの発展が遅れている要因でした。

――不動産投資業界は、旧態依然とした業界なんですね。

横田さん:おっしゃる通りです。だから私は、不動産投資にITを導入することで効率化し、利益を出す余地が十分あると考えました。先ほどもお話ししたように、不動産投資は変動が少なく安定的。賃料とその物件がいくらで売れるか、その二つの要素を予測できれば、まず大きく外すことがないんです。一般に目につきやすいのは株式投資ですが、こちらは不動産投資と比較してハイリスクハイリターンと分類されると思います。不動産はミドルリターンだけどミドルリスクでもあるので、個人の投資初心者の方は、不動産投資から始めることがおすすめですが、不動産への投資には通常高額な資金が必要というところが大きなハードルでもあると思います。

――不動産投資を行うための物件購入に、個人が数千万円を用意するのも難しい。だから、「CREAL」では1万円から不動産投資ができるようにしたんですね。

横田さん:そうなんです。「CREAL」は、クラウドファンディングの技術を使って最小1万円から不動産投資ができます。みんなでお金を出し合って大きな金額の物件を買い、その報酬に応じて分配します。少額から身の丈にあった投資ができ、なおかつ不動産投資という安定的な資産運用ができるのが、このサービスのポイントですね。

「CREAL」はマーケットの影響を受けにくく、安定的な配当ができる

不動産投資の民主化を実現

――では「CREAL」に興味を持った方に向けて、改めて基礎から解説をお願いできますか?

横田さん:本来、高額な資金が必要な不動産投資を、クラウドファンディングを使って複数名からお金を集めて物件を購入します。最初に登録のための手続きはありますが、そこを通過したら投資したい物件を選んで契約書に同意の上でお金を入れていただければ投資完了となります。

「CREAL」の仕組み

――運用期間や利益の配分はどのぐらいになるのでしょうか?

横田さん:現時点での平均利回りは3%〜8%程度で、4%前後が多いですね。運用期間は短いもので4カ月程度、長いもので7年というものもありますが、概ね2年。一度投資いただければ、その後の運用は私たちが行うので、売却先の選定や空室が出た場合などの対応も全てお任せいただけます。投資された方は預けっぱなし、ほったらかしで運用できるというのも大きなメリットですね。最近ではコスパならぬタイパ、タイムパフォーマンスも重要なファクターです。煩わしい投資管理はプロに任せ、投資にかける時間をセーブできるのも人気の秘密です。

※投資金額に対する年間収益の割合のこと

――株式の投資信託みたいですね。

横田さん:かなり近いイメージですね。投資信託と違うところは、元本が値動きせず、安定しているところ。こうした安定性と始めやすさを評価していただいているので、1万円から始められるサービスながら、1人のユーザーさんの投資平均額はおよそ30万円。1つの物件にまとめてではなく、複数の物件に分けて投資していただいています。リピート投資率が非常に高いのも特徴ですね。

※投資にあてる元手の資金のこと

――ユーザー側のメリットが多いんですね。一方、運営側にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

横田さん:私たちのクラウドファンディングは、5~10億円の物件をメインのターゲットにしています。通常のクラウドファンディングプラットフォームではなかなかそのような高額の資金を調達することは難しいのですが、弊社は業界No.1の実績と知名度を武器に多くの投資家様を獲得することで、それを実現しています。

そして実は、この辺りの価格帯の物件は不動産投資の世界で最も人気がないものなんです。個人にとっては価格が高すぎるけど、機関投資家や不動産ファンドなど投資のプロにとっては低すぎる。エアポケットなだけに、実は割安で買える物件が多い価格帯でもあるんです。クラウドファンディングでお金を集めることで、私たちも個人のお客さまもチャンスを掴めるようになったんです。

――「CREAL」をみていると扱っている物件の傾向として、老人ホームや病院、幼稚園など特有な施設が目立ちますね。

横田さん:老人ホームや病院は安定してリターンを出す物件なんですけど、やはり価格帯的に投資家にとっては低く、個人にとっては高い。あまり投資対象として扱われにくい物件なんです。しかし、老人ホームや病院などを運営するオペレーターは自社だけで物件を開発することは難しいため、誰かに協力をしてもらって物件を建ててもらう必要があります。そこで個人投資家の方々の共感をフックに、1口1万円のクラウドファンディングで投資金額を募ることにより、これまでキャピタルマーケットからの資金調達が難しかった老人ホームや幼稚園といった社会インフラの開発を可能としています。まさに、社会的リターンと経済的リターンの両立を目指すサービスです。

2022年8月、千葉県市川市の「(仮称)ミラッツ市川宮久保保育園」は、投資申込がすぐさま満額に達した

――なるほど、社会的にも意義のある不動産投資なんですね。

横田さん:そうなんです。今、「CREAL」の看板物件は保育園ですが、過疎化地域の地方創生につながるような物件も人気ですね。例えば、千葉・南房総の国立小学校の保養所。ここは老朽化が進んで取り壊しの危機にありましたが、卒業生の方から地方創生に役立つホテルへ改修しようというアイデアが生まれたんです。しかし、銀行融資が難しかった。そこで私たちのクラウドファンディングを利用していただいたところ、数日間で2億3,000万円が集まったんです。いわゆるSDGsに近い案件は、非常に人気がありますね。

実際にアンケートを取ると、使い道が不透明な寄付よりも、どこに投資されているのかわかるクラウドファンディングの方が良いといったご意見をいただきます。さらにリターンもあり、お金がちゃんと巡っていることがわかるのもご利用いただいている理由なのだと思います。

「CREAL」が運用する小学校の旧保養施設をコンバージョンしたホテルは、売却を実行。元本に毀損なく償還・想定利回り通りに配当された

――「CREAL」での不動産投資はメリットが大きい感じがしますが、デメリットはないのでしょうか。

横田さん:「CREAL」は投資商品であり、元本保証の商品ではない、という点です。投資なので、やはりリスクはあるんです。ただ、「CREAL」では今まで利回りを達成できなかったことは一度もありません。それは会社として投資物件の目利き力があり、確実な物件しか扱わないから。もちろん、それでも何が起こるかわからないので、絶対的な保証はできません。例えば賃料を支払うはずの人が夜逃げしちゃったり、災害が起こったり、といった可能性もありますが、そういったことが起こらないための審査・精査は相当丁寧に行っています。

※運用期間中に、金融機関などが投資家に元本が減らないことを保証すること

――投資である以上、投資家のリスクは仕方ないんですね。

横田さん:はい、そうですね。だからこそ、我々もリスクに対する責任を負うため、私たち自身も投資家さんと一緒に出資するというシステムを採用しています。賃料が発生して利益が出ると、まず投資家さんに優先的にお支払いし、私たちは余った部分からいただく。投資期間終了で物件を売却した際に、仮に購入金額より安くなってしまったら元本毀損になりますが、その損失はまず私たちの出資分から負担するという取り決めもしています。想定以上に損失が食い込んでしまった場合は投資家さんにも負担していただかなければならないのですが、現時点でそうなった案件は1つもありません。

※投じた投資金額を下回ること

投資家を保護するため、想定どおりに収益が発生しなかった場合、そのリスクの一部をクリアルが負担する

投資初心者にこそ向いている、不動産投資クラウドファンディング

――CREALに掲載されている物件選びも自社で行ってらっしゃいますが、どうやって利益の出やすい物件を目利きしているんですか?

横田さん:弊社には投資運用部というファンドを組成するチームがいて、メンバーはREIT(リート)や投資ファンドの出身者。投資のプロ15名が物件を選定しています。

※投資者から集めた資金で不動産投資を行う金融商品の一種 

「投資のプロたちと同様、エンジニアも多く所属するのがクリアルの特徴です」と横田さん

―― では、不動産投資クラウドファンディングは一般的なクラウドファンディングとどう違うんでしょうか。

横田さん:お金を集めてリターンするという意味では、一般のクラウドファンディングと同様です。ただ、通常のクラウドファンディングのリターンは商品やサービスですが、弊社のリターンはお金。金額で評価されるので、その分よりシビアに見られるところはありますね。達成したのか、していないのか。そこではっきりと判断されてしまいますが、お客さんが満足できるリターンかどうかが重要という点では、「CREAL」も変わらないと思っています。

――そのリターンはこれまで全て成功させているんですよね。その秘訣はなんでしょうか?

横田さん:私たちが主に扱っているのはミドルリスクミドルリターンの物件なので、ハイリスクハイリターンに比べて失敗は確実に少なく、ローリスクローリターンよりもリターンは大きいんです。

―― 現在、不動産投資クラウドファンディングは競合他社も増えてきていますが、CREALならではの強みはありますか?

横田さん:オンラインの不動産投資マーケットが広がっているので、他社さんもどんどん参入されていますね。ただ、後から参入される場合、やはりハイリターンを売りにしがちですね。その分リスクも高いので、そこがミドルリスクな物件をメインとする弊社が先行者利益で業界No.1でいられる理由かもしれません。

さらに弊社では、第三者の不動産鑑定会社による評価価格などのレポートを発行し、閲覧できるようにしています。不動産投資でここまでサポートしているところは他にないと自負しています。例えば評価価格が1億9,000万円とされる物件があったとして、その売値が1億7,400万円だったらお買い得。反対に、評価価格より上回る売値の物件だったら、投資家さんは絶対に買わない。このようにしっかりと第三者評価を開示し、情報の透明化を徹底しています。

クリアルではさまざまな情報の開示を行っている

――活況となり始めてる不動産投資ですが、さらなる活性化には何が必要とお考えですか?

横田さん:やはり不動産投資に抵抗がある方がまだまだ多いので、情報をさらにオープンにして、若い方はもちろん、会社員の方でも通勤途中に不動産投資をしている、といったような文化を作りたいんですよね。そのために私たちがすべきは、しっかりリターンを出し続け、投資家さんたちに成功体験を提供すること。「CREAL」を始めて3年、結果は出し続けられていますが、地道にそういったことを積み重ねていきたいと思っています。

しかし、DX化は、実は不動産と根本的には親和性が高いわけじゃないので一筋縄ではいかないでしょう。間取りなどが同じ物件があったとしても、道一本入るだけで価格が大きく変わったりするので、デジタルで画一的な評価をするのは難しいんです。そこでAIを導入し、道一本入ったらどれだけ価格に変化があるのかといったことも含め、DX化に向けた課題を解決している最中です。ここからようやく本格的なDX化に拍車がかかっていくと考えています。AIが学習して判断しやすいのはワンルームマンションなので、弊社ではAIが自動的にワンルームの物件を評価して仕入れてくるシステムをすでに開発し、稼働しています。今後はこれを老人ホームや幼稚園、ホテルなどにも応用していくために、開発を進めているところです。

――独自のテクノロジーによって、さらに進化していくんですね。

横田さん:不動産投資にテクノロジーをかけ合わせ、あらゆる情報を投資家さんたちに公開することで、ますます信用度も高めていきます。そこが私たちの最大の強みかもしれませんね。弊社は「不動産投資から社会を変える」をミッションに掲げていて、何から始めていいかわからない方に利用していただき、投資による資産形成の文化を根付かせていきたいんです。

――最後に今後の展望や野望などがあれば教えてください。

横田さん:ここまで不動産投資の利点をお話ししてきましたけど、私たちとしては不動産に限らず、資産運用を後押ししていきたいんです。今は安定的な資産運用の1つが不動産ですが、今後は太陽光や、ウイスキーのような嗜好品も投資の対象になると考えています。それこそ「不動産」だけでなく、「動産」にも投資できる。そんなサービスに成長したら面白いと思うんですよね。最終的には資産運用の総合プラットフォームとなって、中古売買ならメルカリさん、資産運用ならクリアルというような、日本を代表するような資産運用サービスになっていきたいです。

横田さん率いるクリアルは、資産運用の総合プラットフォームづくりを目指していく

横田大造(よこた・だいぞう)

クリアル株式会社 代表取締役社長
宅地建物取引士 / 不動産証券化マスター / 医療経営士
 
早稲田大学政治経済学部卒業。2000年にアクセンチュア株式会社入社。2005年にオリックス株式会社にて不動産ファイナンス業務に従事した後、2007年、ラサールインベストメントマネージメント株式会社にて、オフィス、レジデンシャル、商業施設等への投資業務に携わる。2011年、株式会社新生銀行にてヘルスケアREITの企画・設立を担当。2014年、上場ヘルスケアREITの運用会社ジャパン・シニアリビング・パートナーズ株式会社を創業、投資運用部長として物件取得業務を統括。2017年4月よりクリアル株式会社の経営に参画し、代表取締役社長に就任。不動産投資プロセスのDXを大胆に推進する資産運用会社をコンセプトに、一口一万円から投資できる不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL(クリアル)」を含めた各不動産テック事業をローンチ。2020年、国土交通省主宰「不動産特定共同事業(FTK)の多様な活用手法検討会」委員就任。

撮影/武石早代 
取材・文/田中元

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