もともとの映像分野を志すきっかけは2000年代初頭のCorneliusに代表されるような実験映像的側面を持ったMVの数々に影響を受けたためです。
正直なところ映画はそれほど詳しくなく、「スターウォーズ」シリーズでさえまともに見ていません。なので、学生時代の作品はいわゆるモデリング、キャラクターアニメーションがしっかりした映画的な作品ではなく、プリミティブなボックスが街の中を行き交うような抽象的な作品を制作していました。
前職オムニバス・ジャパンでは、しっかりした技術の土壌の上に優れたアートワークを発揮する先輩たちが数多く在籍していて、みっちり3DCGを教えていただきました。しかしながら、根本の映像の興味が違うところにあったためモデリングやキャラクタアニメーションなど3DCGアーティストが当たり前に身に着けている技術が伸び悩み、「使いにくい人材」になっていた時期がありました。
そんな中オムニバス・ジャパンのクリエイティブディレクター山本信一さんから「じゃあこういうのは?」と企業CIのモーショングラフィックスや、テレビ番組タイトルバックなどを紹介してもらい一緒に作るようになります。映像におけるCGのパーツを作るのではなく、CGを作りながら全体の演出を構築していく制作スタイルを経験していきました。ちょうどその時期にHoudiniというソフトウェアのプロシージャルなアプローチを学び、ミクロ視点とマクロ視点を切り替えながらビジュアルに落とし込んでいく作業に没頭しました。そこで生まれた作品の繋がりでミュージシャンや、アート分野など普段の業務とは違う文脈の人とお話する機会が増えたことも領域を広げることができた大きな要因だと思います。