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税理士・松崎怜が教えるフリーランス1年生が知っておくべき12のこと【11】「2年目以降のプランニング。まずは1年目を振り返るべし」

税理士・松崎怜が教えるフリーランス1年生が知っておくべき12のこと【11】「2年目以降のプランニング。まずは1年目を振り返るべし」

小商いをする人に向けて経営ガイドを行う税理士の松崎怜先生が、フリーランス1年生のアパレルブランドのオーナー・鈴木香澄さんに、フリーランスに必要なマインドやメソッドを教えるこの企画。最終回間近の今回は、「2年目以降のプランニング」について。フリーランス2年目以降の人のためにもなるヒントが盛りだくさんです!

「2年目以降のプランニング。まずは1年目を振り返るべし」

フリーランス1年生が終わったら、2年目以降のプランニングをしなければならない。そこで大事なのは、1年目を振り返って課題や問題点を洗い出すギャップ分析すること。3年、5年、10年、30年も、このギャップ分析によって目的地を明確化できるから使わない手はない。さらに課題や問題点を見つめ直すには、日本政策金融公庫の事業計画書を使うのも一つの策。


【目次】

  • 「現在の自分」と「創業時に想像していた1年後の自分」を比較すべし
  • 2年目以降も自分の目的地を明確にしよう
  • 日本政策金融公庫の事業計画書を使って、課題や問題を可視化

【CHECK 01】まずは1年目の振り返りを。「現在の自分」と「創業時に想像していた1年後の自分」を比較が正解

「2年目以降のプランニングをする前に、まずは1年目を振り返りましょう」と松崎先生
松崎先生
新年度となり、鈴木さんもいよいよフリーランス2年生ですね。そこで今回は、フリーランス2年目以降のプランニングについてお話しします。
鈴木
さん
ちょうどフリーランス2年目は、どうして行こうかと考えているところでした!
松崎先生
それはそれは。2年目以降のプランニングを練るとき、まずは1年目のことを振り返るのが大事です。

「現在の自分」と「創業時に想像していた1年後の自分」を比較していただきたいのですが、ここで僕がおすすめしたいのが「ギャップ分析」による自己分析です。
鈴木
さん
ギャップ分析???
松崎先生
この図のように、自分の「想像していたあるべき姿」と「現状の姿」を位置づけすると、そこにはギャップが生じるわけです。
鈴木
さん
そのギャップが今の自分の課題や問題になるというわけですか?
松崎先生
いえ、ギャップはあくまでもファクトです。

ここで生じた課題や問題を見極めて、仮説を立てることが重要なんです。要は自分に足りないものを可視化すること。ギャップ分析をする際は、こういうフレームワークに書き出すとより自分のことがわかると思います。

「ギャップ分析」するためのフレームワーク

現在の自分創業時に想像していた1年後の自分
仕事
私生活
個人の成長
松崎先生
「仕事」「私生活」「個人の成長」について、「現在の自分」と「創業時に想像していた1年後の自分」の姿をそれぞれ書き出していくと、自分の成長や足りない分が見えてくると思いますよ。

鈴木さん、仕事の部分だけでも少し書き出してみましょうか。
鈴木
さん
は、はい。創業当初は自分のブランドのオリジナルだけを扱う予定だったけど、アパレル業界の流れを考慮して今ではセレクトを扱うようになって。何にも考えてなかった税務に関しては、今では会計ソフトを使いようになって確定申告への意識が高まったり……。

ざっと記入してみました! こんな感じです。

鈴木さんが記入したフレームワーク

現在の自分創業時に想像していた1年後の自分
仕事・オリジナル+セレクトの展開
・セレクトなので在庫を減らせる。在庫処分も。
・洋服を養護施設などに寄附した
・領収書分類、収支付け、経費精算など、月報はできた。
・事業の未来像はあるが、数字に落とし込むところまではできていない。
・会計ソフトを使っている。
・確定申告を頭の隅に入れながら過ごすようになった。
・税務の優先順位は変わらず下のほう。
・オリジナル商品だけ展開。
・在庫をできるだけ持たない。
・洋服を寄附する。
・税務や会計に関する成長は考えていない。
・月報だけはやる。
・数値目標もない(そもそもお金の流れがわからない)。
・税務の想像がつかない。優先順位は最下位。
私生活
個人の成長
松崎先生
いい感じですね。とくに確定申告を頭の隅に入れながら日々を過ごしていらっしゃるだなんて。
鈴木
さん
実際に何かをしているわけではないですけどね……(笑)。しかも、税務まわりの優先順位は変わらず下のほうです。って、先生の前でごめんなさい!
松崎先生
いえいえ。これは普通のことだと思いますよ。フリーランスの方はあくまで事業がメインですから。こうして自分を知ったうえでギャップ分析をすることで、2年目以降の課題や目標が見えてくるんです。
鈴木
さん
たしかに! これはフリーランスの人はやるべきですね。

【CHECK 02】 2年目以降も続いていくフリーランス人生。3年、5年、10年、30年はどうすべき?

鈴木さんは、2年目よりもっと先のプランニングも気になる様子
鈴木
さん
2年目以降のプランニングっと言っても、それ以降もずっと続いていくわけですし、けっこう長いじゃないですか。どうしたらいいんでしょうか?
松崎先生
3年、5年、10年、30年と、人によっていろいろなスパンがありますが、やっぱりフリーランスをやっていく中で大切なのは、きちんと目的地を決めること。

そういう自分のあるべき姿を描いていないと、さっきお話ししたギャップも見つけられませんからね。
鈴木
さん
フリーランス全員、自分の目的地は持っておく必要がありますか?
松崎先生
そうですね。目的地がないと迷ってしまいますから。その解像度に違いはあると思いますが、高い人と低い人では現在の活動も変わってくると思います。

最近は「FIRE(ファイヤ)」が流行っているじゃないですか。
鈴木
さん
ファイヤ……?? 火のことではないですよね(笑)。
松崎先生
違いますね(笑)。

「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期リタイア)」の頭文字を取ったものです。要は、若いときに働いて投資する資産を貯めて、その後運用の利益だけで生活するんです。
なんでもわかりやすく説明してくれる松崎先生
鈴木
さん
へぇ〜。
松崎先生
「FIRE」を取り入れた生活を目指す人とそうでない人だったら、今の暮らし方自体も明らかに変わりますよね。

とはいえ多くの人は、目的地を明文化することはあまりないと思います。そこでおすすめなのが自己棚卸なんですよ。

やりたい仕事、やりたくない仕事、仕事で大切にしていること。そして仕事での体験から得たこと、失敗を乗り越えた経験など、成功体験とその勝因を、現在と未来にわけて書き出していくんです。そうすることで、自分の強みや弱点が洗い出せるんですよ。

自分の強みと弱みを可視化する「自己棚卸」のフレームワーク

現在の自分半年後の自分3年後の自分5年後の自分
仕事
私生活
個人の成長
松崎先生
さらに、クライアントにしたい人・したくない人。解決できるクライアントの課題や、自分が選ばれる理由も書くことで、自分の目的地の解像度が上がると思います。

これを書き終えたら、さっきお話ししたギャップ分析をしていくといいと思います。
鈴木
さん
こうやって明文化することで、課題や問題がいっぱい浮かび上がりそう……。
松崎先生
ギャップの原因が10個くらい浮かび上がったとすると、その中で効果が高いかつ、解消できるものが一番価値が高いわけです。

例えば、ギャップの原因にコロナがあったとしても、自分ではどうにもできなかったりします。だからなんでもかんでも問題を解消しようとするのではなく、解ける問題を見極めてそれを優先にすべきでしょうね。

【CHECK 03】課題や問題の可視化には、日本政策金融公庫の事業計画書が使える!

日本政策金融公庫の事業計画書の活用方法とは?
松崎先生
最後に税理士らしい見解もお伝えしておくと、前回もお話しした日本政策金融公庫の事業計画書を使うのも一つの手なんです。
鈴木
さん
事業計画書ですか。どう活用したらいいんでしょうか?
松崎先生
日本政策金融公庫の事業計画書って、実はいろいろなタイプがあるんです。新たに事業を始める際、融資などを受ける場合に書く「創業計画書」、創業後に別の融資を受ける時に書く「事業計画書」の2つは、事業の今後を見つめ直すいい材料になると思います。

例えば、「創業計画書」は取扱商品やサービス、取引先、必要な資金と調達方法、事業の見通しを書く欄があります。
日本政策金融公庫のHPでダウンロードできる創業計画書
松崎先生
一方の「事業計画書」には、経営全般、売上・収益、人材・マネジメント、財務など経営上の課題とその改善策を書く欄があります。それぞれのカテゴリーにはさらに細かい項目があって、例えば「売上・収益」なら販路拡大、市場の競争激化、採算分析というものがあります。さらには、業績推移と今後の計画の記入欄もある。
 
これらからもわかるように、明らかに創業時の「創業計画書」とは違いますよね。こうして2年目以降は「事業計画書」で細やかに自分の事業に向き合い、創業時とは違った問題や課題のポイントを意識して事業を運営するのもいいと思います。
日本政策金融公庫のHPでダウンロードできる事業計画書。ほかにもさまざまな形式が用意されている
鈴木
さん
今、私の課題に認知拡大があるので、「事業計画書」を使ってしっかりと見つめ直さないと。
松崎先生
素晴らしい意気込みですね。
鈴木
さん
今日、先生のお話を聞いて、2年目以降のことを考えるいいきっかけとなりました。今までは苦手なことでも全部ひとりでやろうと考えてましたが、それはやっぱり非効率。フリーランス2年目は、できないことや苦手なことは外部の人に頼んでもいいかもって感じました。

今回もたくさんの学びと気づきをありがとうございました!
松崎先生
鈴木さんの成長ぶりは目を見張るものがありますね。次回は最終回です。最後までどうぞよろしくお願いします!

新年度になり、晴れてフリーランス2年生となった鈴木さん。フリーランス1年目を振り返ったことによって、2年目以降のプランニングも明確になったようです。いよいよ最終回を迎える次回は、「法人成り」についてお届け。法人化を考えているフリーランスの人は必見です!

松崎怜(まつざき りょう)

税理士、創業コンサルタント、財務コンサルタント。税理士事務所ASCOPE 代表、株式会社GO CFO、株式会社&FINANCE 代表、Doppio合同会社 共同代表。1983年、神奈川県生まれ。一児の父。「小商いと、社会を彫刻する」ことをミッションに、小商いがずっと続くように、経営のガイドを行っている。現在は、自身の「クリエイター」「フリーランス」「独立開業/ 創業」といった経験と実践をもとに、小商いの持続可能性を自分ごと化して探求している。

ASCOPE:https://www.ascope-tax.net

鈴木香澄(すずき かすみ)

1984年生まれ。大学卒業後、スウェーデン発のクリエイティブエージェンシー「GREAT WORKS(グレートワークス)」に入社し、ディレクターとして活躍。2019年に「ロンドンに住むLilly Lee(リリー リー)ちゃんが愛用している服」をコンセプトにしたカジュアルブランド「Lilly Lee(リリー リー)」を創設し、2020年1月より本格始動。

Lilly Lee:https://lillylee.theshop.jp

撮影/酒井恭伸
取材・文/おかねチップス編集部

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