動画制作・動画編集の外注ガイド|工程別に見る内製との線引きと、依頼範囲・素材の権利の決め方

動画を作ることになったとき、最初に迷うのが「どこまで自社でやって、どこから外に頼むか」です。スマートフォンでも撮れる時代になり、編集ソフトも安く使えるようになりました。それでも実際に動かしてみると、企画が決まらない、撮影の段取りが読めない、編集が終わらない、といったところで止まります。
この記事は、動画制作・動画編集の外注を「会社を選ぶ前」の段階から整理するためのガイドです。制作会社の一覧から選びたい方は動画制作会社のおすすめ35選、編集だけを頼める先を探している方は動画編集会社のおすすめ27選をご覧ください。ここでは会社名ではなく、工程のどこを外に出すかという線引きそのものを扱います。
なお、そもそも何のために動画を作るのかが固まっていない段階なら、先に目的別・動画の選び方ガイドで目的と視聴者を決めてから戻ってくると、この記事の判断がぐっと速くなります。
外注か内製かは「全部か、ゼロか」で決めない
相談を受けるとき、「動画は外注すべきですか、社内でやるべきですか」という聞かれ方をすることがあります。この問いの立て方だと、たいてい答えが出ません。動画制作はひとつの作業ではなく、性質のまったく違う工程の連なりだからです。
たとえば企画は自社の事業を知っている人のほうが強く、撮影は機材と経験がものを言い、編集は時間さえかければ素人でも形にはなり、字幕やテロップの最終チェックは自社でないと固有名詞の誤りに気づけません。つまり工程ごとに「社内が有利なもの」と「外が有利なもの」が入れ替わるということです。
ですから決め方は「全部外注するか、全部内製するか」ではなく、工程を並べたうえで、一本ずつ線を引くのが正解になります。まずは工程を分解するところから始めます。
動画制作の4工程|企画・撮影・編集・仕上げで何をしているのか
動画制作は、大きく「企画」「撮影」「編集」「仕上げ」の4つに分けられます。それぞれ必要なもの、詰まりやすいところ、外注に向くかどうかが違います。

| 工程 | 主な作業 | 必要になるもの | 外注のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 企画 | 目的の整理、構成案、絵コンテ、出演者と撮影場所の決定 | 自社の事業理解、決裁者との合意 | 低い(社内の情報が要る) |
| 撮影 | 機材手配、照明、音声収録、当日の進行 | カメラ・照明・マイク、経験のある人手 | 高い(機材と経験に依存) |
| 編集 | カット、テロップ、色調整、音の整音、BGM選定 | 編集ソフト、まとまった作業時間 | 高い(分業しやすい) |
| 仕上げ | 表記チェック、書き出し、各媒体向けの尺調整、入稿 | 社内の表記ルール、掲載先の仕様 | 低い(固有名詞の判断が要る) |
この表で見えてくるのは、外注しやすいのは真ん中の「撮影」と「編集」で、前後の「企画」と「仕上げ」は社内に残したほうが噛み合いやすいという構図です。前後を丸ごと預けると、自社の言いたいことと出来上がりがずれ、修正の往復が増えます。
ただしこれは原則であって、企画をまるごと相談したほうが早い場面もあります。次の章で、社内に抱え続けると苦しくなる条件を挙げます。
社内制作の限界が来る5つの条件
社内で動画を作ること自体は悪い選択ではありません。むしろ、短い商品紹介や社内向けの記録なら内製のほうが速くて安く済みます。問題は、次の条件に当てはまり始めたときです。ひとつでも当てはまるなら、その工程を外に出すことを検討する合図と考えてください。
- 担当者の本業が回らなくなっている。動画編集は時間を吸い込む作業で、片手間の担当者がいちばん先に潰れます。人件費を時間換算すると外注費を超えていることも珍しくありません。
- 公開の期限が決まっている。展示会、採用説明会、キャンペーン開始など動かせない日がある場合、社内の繁忙期と重なると詰みます。
- 音と照明の品質が要求される。映像の粗さは案外許容されますが、音が聞き取りにくい動画は最後まで見てもらえません。ここは機材と経験の差が出やすい領域です。
- 出演者が社外の人になる。顧客や取引先に出てもらう場合、当日の段取りの拙さがそのまま自社の印象になります。
- 同じ形式で何本も作る予定がある。一本目をプロに作ってもらい、型と素材を受け取って二本目以降を社内で回す、という進め方が有効です。
逆に、当てはまるものがひとつもなく、公開先も社内やSNSの短尺にとどまるなら、無理に外注する必要はありません。
外注範囲の4パターン早見表|丸投げから素材提供型まで
実際の依頼は、おおむね次の4パターンに落ち着きます。自社がどれに近いかを先に決めておくと、見積もりを取るときの伝達が一気に楽になります。
| パターン | 外に出す範囲 | 社内に残る仕事 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ①一括依頼型 | 企画から仕上げまで通し | 目的の提示、出演者調整、確認と承認 | 初めての動画、対外的な看板になる動画 |
| ②撮影+編集型 | 撮影と編集 | 企画・構成、原稿、最終チェック | 伝えたい内容が社内で固まっている場合 |
| ③編集のみ型 | 編集・テロップ・整音 | 企画、撮影、素材の整理、確認 | 撮影は自社でできる、素材が溜まっている |
| ④素材提供型 | 撮影のみ(素材納品) | 企画、編集、仕上げすべて | 社内に編集担当がいて、継続的に作る |
初回は①か②、二本目以降に③か④へ移していく、という進め方がもっとも無理がありません。いきなり④を選ぶと、撮影した素材が自社の編集能力に合わず、使えない映像だけが残ることがあります。
ひとつ注意があります。①の一括依頼を「丸投げ」と同じ意味で使わないことです。企画から任せる場合でも、目的・視聴者・公開先・NG事項の4つは必ず自社が出す必要があります。ここが空白のまま進むと、きれいだけれど誰にも刺さらない動画が出来上がります。
費用の考え方|工程別に何が金額を動かすのか
動画の見積もりが読みにくいのは、同じ「動画1本」でも中身の重さがまったく違うからです。金額そのものより、何が金額を動かしているのかを知っておくほうが、比較のときに役立ちます。
| 工程 | 金額を押し上げる要因 | 抑えたいときの考え方 |
|---|---|---|
| 企画 | 構成案の本数、絵コンテの精度、打ち合わせ回数 | 目的と構成を社内で固めてから相談する |
| 撮影 | 撮影日数、撮影場所の数、スタッフ人数、機材の規模 | 同じ日にまとめて撮る、場所を1か所に絞る |
| 編集 | 尺の長さ、テロップ量、アニメーションの有無、修正回数 | 修正回数の上限を先に決めておく |
| 仕上げ | 納品する媒体の数、縦横比の種類、字幕データの要否 | 本当に必要な媒体だけに絞る |
| 共通 | 出演者の手配、BGMや素材のライセンス、納期の短さ | 余裕のある納期を確保する |
相場感としては、編集のみを依頼する形がもっとも軽く、撮影が入ると人と機材が動くぶん一段上がり、企画から通しで頼むとさらに上がるという順序になります。金額の幅は尺・撮影日数・修正回数で大きく変わるため、はじめから一点の金額を期待せず、範囲で提示してもらい、何が含まれて何が別料金かを確認するのが現実的です。
特に見落とされやすいのが修正回数です。「修正2回まで込み、3回目以降は別途」のように書かれているのが一般的で、ここを確認せずに進めると最後に想定外の請求が発生します。費用の内訳の見方そのものについては、グラフィックデザインの依頼ガイドで扱っている見積書の読み方も考え方が共通しているので参考になります。
素材と権利の受け渡し|あとで揉めないために決めておくこと
外注でいちばんトラブルになりやすいのは、費用ではなく権利と素材です。納品された動画は使えるのに、そこから静止画を切り出してチラシに使えない、二次利用のたびに追加料金が発生する、といったことが後から分かる例があります。
前提として、著作権は原則として実際に創作した側に発生します。つまり制作費を払ったからといって、自動的に著作権が自社のものになるわけではありません。自社に権利を移したいなら、契約書に譲渡を明記する必要があります。また著作者人格権は譲渡できない権利とされているため、実務では「行使しない」旨を取り決める形が取られます。
| 確認項目 | 何を決めるのか | 決めていないと起きること |
|---|---|---|
| 著作権の扱い | 譲渡するのか、利用許諾にとどめるのか | 改変や二次利用のたびに許可と費用が必要になる |
| 利用範囲・期間 | 媒体、地域、掲載期間の範囲 | Web限定のつもりが展示会で使えない |
| 出演者の同意 | 肖像の使用範囲と期間、退職後の扱い | 社員の退職後に公開を止める必要が出る |
| BGM・素材のライセンス | 楽曲・フォント・ストック素材の許諾範囲 | 市販楽曲の無断使用で公開停止になる |
| 元素材の納品 | 撮影原本・プロジェクトファイルを受け取るか | 次回の修正を同じ会社にしか頼めない |
このうち実務でいちばん効くのは、最後の元素材の納品です。撮影原本と編集プロジェクトファイルを受け取っておけば、数年後に社名やサービス名が変わったときでも、別の相手に修正を頼めます。逆にここを押さえていないと、ちょっとした差し替えのために一から撮り直すことになりかねません。ただし元素材の引き渡しは別料金になることもあるため、見積もり段階で相談するのが筋です。
依頼から納品までの工程表|いつ何が起きるのか
納期の相談をするときに、全体の流れが頭に入っていると話が早くなります。一括依頼型(①)を前提にした標準的な工程は次のとおりです。
| 順番 | 工程 | 自社がやること | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 相談・要件整理 | 目的、視聴者、公開先、予算感、希望納期を伝える | 1〜2週間程度 |
| 2 | 見積もり・発注 | 含まれる範囲と修正回数、権利の扱いを確認 | 1週間程度 |
| 3 | 企画・構成の確定 | 構成案と絵コンテを社内で承認 | 1〜3週間程度 |
| 4 | 撮影準備・撮影 | 出演者と場所の手配、当日の立ち会い | 1日〜数日(準備は別途) |
| 5 | 初稿の確認 | 関係者の指摘をまとめて一度に返す | 1〜2週間程度 |
| 6 | 修正・仕上げ | 固有名詞と数字の最終チェック | 1〜2週間程度 |
| 7 | 納品・公開 | 元素材の受領、公開先への入稿 | 数日 |
全体としては、相談開始から公開までおおむね1か月半から3か月程度を見ておくと無理がありません。短納期の対応は可能な場合もありますが、そのぶん費用が上がるか、企画を詰める時間が削られます。
工程表のなかで自社の負担がいちばん重いのは、実は撮影当日ではなく5番の初稿確認です。関係者がばらばらに指摘を出すと修正が往復し、回数上限を超えて追加費用が発生します。社内の意見を一度に集約する担当を先に決めておいてください。
発注前チェックリスト|相談の前に社内で埋めておく項目
最後に、相談に行く前に社内で決めておくと話が速くなる項目をまとめます。すべて埋まっていなくても構いませんが、上から3つは埋めないまま相談すると、見積もりの精度が落ちます。
- 目的:この動画で誰に何をしてほしいのか(応募、問い合わせ、理解、記録)
- 視聴者と公開先:誰が、どこで、どんな状態で見るのか(採用サイト、SNS、展示会場、社内)
- 公開希望日:動かせない日か、多少ずれても良いのか
- 外注範囲:前章の4パターンのどれに近いか
- 予算の上限:総額の上限と、超えた場合に削れるところ
- 出演者:社内の誰が出るか、社外の人に依頼するか、顔出しの可否
- NG事項:映してはいけない場所・製品、使えない表現、競合への配慮
- 確認体制:社内の指摘をまとめる担当者と、最終決裁者は誰か
- 権利の希望:二次利用や改変の予定があるか、元素材が必要か
- 既存素材:使える写真・ロゴ・過去動画・BGMがあるか
このリストが埋まっていれば、複数社に同じ条件で見積もりを依頼できます。条件がそろっていない状態で集めた見積もりは、金額を比べても意味がありません。
よくある質問
編集だけを外注する場合、素材はどう渡せばよいですか
撮影したデータをそのまま渡すのではなく、使いたい部分のおおよその時間と、意図を書いたメモを添えると手戻りが減ります。ファイル形式や解像度、総容量は依頼先によって受け入れ条件が違うため、撮影を始める前に確認しておくのが安全です。撮り直しができない現場の素材ほど、事前確認の価値が高くなります。
社内で撮影して、品質は足りるのでしょうか
用途によります。社内共有や短いSNS投稿なら十分なことが多い一方、採用や対外的なブランド紹介では、音声の聞き取りやすさと照明の安定で差が出ます。判断に迷うなら、音が主役になる動画(インタビュー、説明)は外注、画が主役で短いもの(作業風景、商品の動き)は内製という切り分けが実務的です。
動画制作会社と動画編集会社は、どう使い分けますか
企画から撮影まで含めて任せたいなら制作会社、素材がすでにあって形にするだけなら編集を専門に扱う先が合います。前章の4パターンでいえば、①②は制作会社、③④は編集中心の依頼先が候補です。候補の一覧は動画制作会社のおすすめ35選と動画編集会社のおすすめ27選で比べられます。
相見積もりは何社くらい取るべきですか
2〜3社が現実的です。それ以上になると、こちらの説明と比較にかかる時間のほうが大きくなります。大切なのは社数より条件をそろえることで、同じ発注前チェックリストの内容を全社に同じ文面で渡すと、比較できる見積もりが返ってきます。
一本目を外注して、二本目から内製に切り替えられますか
可能ですし、継続的に動画を出す予定があるなら合理的な進め方です。ただし成立させるには、一本目の時点で元素材とプロジェクトファイル、使用フォントやBGMのライセンス情報まで受け取っておくことが条件になります。これを後から頼むと、追加費用がかかるか、そもそも渡せないと言われることがあります。
まとめ|線を引く場所は、工程のなかにある
動画の外注は、会社を探すところから始めると迷います。先に企画・撮影・編集・仕上げの4工程を並べ、どこを社内に残すかを決める。その線引きが決まれば、依頼すべき相手の種類も、見積もりで確認すべき項目も自然に決まります。
押さえどころを3つに絞るなら、①目的と視聴者は必ず自社で決める、②修正回数と含まれる範囲を見積もり段階で確認する、③元素材と権利の扱いを契約に書く、この3点です。ここさえ外さなければ、初めての外注でも大きな失敗にはなりません。
まだ動画の目的自体が固まっていない場合は、目的別・動画の選び方ガイドで企画の軸を先に決めてください。その後でこの記事の外注範囲の4パターンに戻ると、判断が一度で済みます。
知識を皆に
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動画制作・動画編集の外注ガイド|工程別に見る内製との線引きと、依頼範囲・素材の権利の決め方
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