キャピタリスト水谷航己が推す、FinTechの未来をかけるスタートアップ5社
企業価値が10億ドル以上の未上場のスタートアップのことを指す、ユニコーン企業。アメリカと中国に多く、巨額の利益をもたらす可能性があるとして世界的に注目されています。その一方、現在10社ほどしかユニコーン企業が存在しない日本では、2027年までに100社に増やそうとする動きが起きています。
そうした中、馬力のあるスタートアップに、資金調達という羽根と困難に打ち勝つ武器となる知識の角を与えることで、伝説のユニコーンのような企業に成長するためのサポートをしているのが、ベンチャーキャピタル(VC)※です。 新企画「ユニコーンメーカーズブック」では、このユニコーン企業をつくるための立役者でもあるVCにスポットライトをあて、各業界に特化したキャピタリストから、これから日本を支える100社のユニコーン企業になり得る注目のスタートアップを先取りでピックアップしていただきます。
今回ご登場いただくのは、銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を掛け合わせたFinTech(フィンテック)関連のスタートアップに精通した、「ジェネシア・ベンチャーズ」のキャピタリスト水谷航己さん。なぜ、今FinTechスタートアップに注目が集まるのか。そして、ユニコーン企業としての素質はどこにあるのか。水谷さんの元を訪れます。
※未上場企業に出資を行う投資会社や投資ファンドのこと。
FinTech(フィンテック)とは?
金融(Finance)と技術(Technology)をかけ合わせた造語。金融サービスにIT技術を合わせることで誕生した、新しいサービスや事業領域のことを指す。スマホ決済や仮想通貨などがその例となる。FinTechという言葉は、アメリカで2000年代前半から使われており、リーマンショックや金融危機の後、さまざまなFinTecスタートアップが登場している。
キャピタリストが注目するFinTechスタートアップの今
それで現在、IT技術を使って前払いや分割、後払いなどこれまでの銀行とは違った形で金融サービスを提供したり、新たな決済サービスを開発したりと、よりなめらかな金融体験を消費者に提供するスタートアップが増えてきているんです。
そして、今のFinTechスタートアップ界のトレンドは、この3つのカテゴリーに分けられると考えています。
2022年FinTechスタートアップ界の3つのトレンド
1.【企業向け】新しい資金調達
資金調達の新しい手法にチャレンジしているスタートアップ。金融機関への借り入れやファクタリングなど従来の形に縛られず、新しい融資と投資が行えるサービスを企業に向けて提供している。
2.【消費者向け】新しい金融体験を提供するスタートアップ
近年急増中しているのが、これまで銀行ができなかった金融サービスを消費者に提供するチャレンジャーバンクと呼ばれるスタートアップ。自社サービスに先払いや後払いなどの支払い機能を付随する、「組み込み型金融」「埋め込み型金融」などといわれる“エンベデッドファイナンス”を行う会社も。
3. 〇〇×FinTech
顧客、従業員、取引などのデータを使った金融サービスを開発するスタートアップ。受発注、請求書、給与などの事業開発を手がける会社が、その隣接する金融サービスも行っている場合もある。
ジェネシア・ベンチャーズ水谷さん注目のFinTechスタートアップ5選
ここからは、「新しい資金調達」「新しい金融体験を提供するスタートアップ」「〇〇×FinTech」、それぞれのカテゴリーで水谷さんが注目されているスタートアップを、そのポイントともに教えていただきます。
・従来型の資金調達をスムーズにするための新たな仕組みづくり
通常は困難な有利な融資をスムーズに探すためのサービスを提供する会社や、手続きが煩雑な補助金・助成金を活用&サポートする会社も多く出現している。
・資金調達自体を新しい方法で構築する
新しい資金調達方法である株式(出資)と借り入れ(融資)のハイブリッドと呼ばれるレベニュー・ベースド・ファイナンス。VCや銀行からの資金調達ではなく、過去の売上をデータを分析し、それを踏まえて将来の売上の一部を現金化して、資金調達する方法も増えてきている。
キャッシュフローと資金調達をクラウドで一括管理する「Scheeme(スキーム)」| Scheeme株式会社
Scheeme株式会社が手がける、資金繰りから資金調達までシームレスにするクラウドサービス。融資・補助金など資金調達の申請にその都度作成が必要だった書類が、クラウドに保存した事業情報や数値計画を元に、簡単に作成することができる。さらに、資金繰り管理も簡単にでき、入出金予定を自動で作ることが可能。自分のニーズによってカスタマイズされた財務支援を行ってくれる。
Scheeme :https://scheeme.com
借主が賃貸初期費用の分割払いができる「OPEN UP 賃貸」| Crezit株式会社
2019年3月に創業したFinTechスタートアップCrezit株式会社による、賃貸初期費用の分割払いサービス「OPEN UP 賃貸」。部屋を賃貸するときに必要となる敷金・礼金・仲介手数料・保証料・保険料等の初期費用を、スマホで借り入れ可能のローンを使って分割払いできる。初期費用が払えず諦めていた引越し問題を、OPEN UP 賃貸で資金を拠出することで解決。
OPEN UP 賃貸:https://openup.crezit.jp
高齢者向けのペイメントサービス「KAERU」| KAERU株式会社
物忘れが増えてきた方をはじめ、認知機能の低下に不安がある方、認知症と診断された方などが、安心して利用できる金融サービス「KAERU」。事前チャージ式プリペイドカードのKAERUは、コンビニやスーパーなどさまざまな店舗でクレジットカードと同様に利用OK。1日に利用できる金額を設定できるから、使い過ぎ防止にも。前日使用分は自動チャージされるので簡単&手間入らずで利用でき、パートナー設定しておけば、設定や紛失時の手続きをそのパートナーにお任せすることもできる。
KAERU:https://kaeru-inc.co.jp
福利厚生×FinTech「miive(ミーブ)」 | 株式会社miive
2021年4月にリリースされた福利厚生サービス「miive(ミーブ)」。企業がプリペイドカードに毎月定額のポイントをチャージし、それを従業員がさまざまなコンテンツで利用できる。利用先は企業が自社の方針に合わせてカスタマイズできるため、コンビニやデリバリーランチなど、オフィスでもリモートでも利用可能。
miive:https://miive.jp
miiveさんでは、福利厚生を目的に企業がお金をプリペイドカードにチャージしてもらう仕組みなので、自然とお金の入口を押さえられていることになります。こうしてお金お入口、ひいてはお金の出口をも掴むことで、将来的に給与口座に置き換われる可能性を秘めています。
受発注×FinTech「CO-NECT」| CO-NECT株式会社
CO-NECT株式会社が提供する、BtoB受発注システム「CO-NECT」。FAXや電話など従来のアナログな受発注業務を、簡単にデジタルに置き換えられる受発注システム。発注側はスマホやPCで数クリックで発注でき、受注側がFAXやメールを希望する場合でも利用できる。
CO-NECT:https://biz.conct.jp
FinTechスタートアップから、多くのユニコーン企業が生まれる日も近い?
海外では数多くのFinTechスタートアップのユニコーンが登場し、また上場以降も事業成長を続けるスタートアップも多くあることから、経済規模の大きな日本においてもFinTechスタートアップの躍進は続いていくと予測しています。
水谷航己(みずたに こうき)
東京大学法学部卒業後、2013年4月に住友商事株式会社に入社。リスクマネジメント部に配属。再生可能エネルギーを含む国内外の大型発電事業案件に関する経済性や、リスク定量化分析を通じた意思決定サポートを担当する。また、投資成功確率の向上・M&Aプロセスの高度化を目的に社内の意思決定プロセスの見直しを実施するなど、投資の意思決定精度の向上に寄与。2015年には、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に出向し、複数業界におけるM&A案件の財務DD及びValuation業務に従事。2016年からは住友商事に帰任し、金属事業部門のリスクマネジメント担当として、国内外の自動車部品製造事業、金属加工事業のM&A、与信管理、投資先事業会社支援に従事。2018年7月より株式会社ジェネシア・ベンチャーズに参画。
撮影/武石早代
取材・文/おかねチップス編集部
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