「Discord = ゲーム」はもう古い。“あたらしいカルチャー”が広がっているDiscord | ひぐちなおやコラム-メシのネタになるコミュニティの話-
「コミュニティってなんですか?」
そう質問されたら、あなたはどう答えますか。
定期的に耳にする「コミュニティ」というワード。
ちょっと前はMROC、最近はコミュニティマーケティングやファンコミュニティ。
自治体や地域に関わる人では、地域コミュニティの重要性は10年以上語られているかもしれません。
正直「なんかふわふわした概念なんだよなあ」と思っている方も、それなりにいらっしゃるんじゃないかな、と思う次第です。
さて、冒頭の問い対して私はどう答えるか。<コミュニケーションが主たる目的として存在する、1つ以上の共通項を軸に集まっている状態>と定義していますが、これだけでは「ふわっと感」を脱せていない気がしています。
なので、コミュニティに関するホットな事例を共有することで、「ああ、そういうことね。」と、コミュニティ像を具体化するお手伝いができたらと思い、筆を取りました。
自己紹介が遅れました。
株式会社ニューピースのひぐちと申します。「誰やねん」とお思いでしょう。わかります。
コミュニティマネージャーを支援するために、コミュニティ分析ツール「comcom Analytics」のプロダクト開発やコミュマネの共同学習コミュニティ「コミュマネラボ」の運営などを行っています。以後、お見知りおきください。
そもそも、どうして、私が『おかねチップス』でコミュニティの話をするのか。
文化に詳しい方には既知の話ですが、70年代の新宿では、ジャズ喫茶「風月堂」やバー「ジャックの豆の木」などで、タモリや赤塚不二夫、寺山修司、横尾忠則など様々な分野の人間が交流したことで、文化の濁流が生まれたと言われています(『ほぼ日刊イトイ新聞』参照)。
店という場で、前衛という共通項で立ち上がったコミュニティから、新しい文化が生まれ、仕事に繋がっていった象徴的な事例です。ここまで劇的ではなくとも、親しいケースは2020年代現在も生まれているのは間違いないと思います。それなら、イマのコミュニティへの理解を深めることは、「仕事」のタネくらいには繋がるんじゃないか、と紙面をお借りした次第です。
さて第一回は、Discordに広がる文化コミュニティの話をします。
みなさん、「Discord」はご存知ですか?
「ああ、知ってるよ。ゲーム好きのためのツールだよね。」まあそういう気持ちもわかります。あるいは、NFTやDAO?まあたしかに。相性良いですよね。
でもそれだけじゃないんです。かつての「ジャズ喫茶」はバーチャル空間にある、と言えるぐらい可能性が広がっているんです。
若い世代が熱中するDiscordの新しい使い方を紹介します。
ミュージシャンが活用する Discord サーバー
ミュージシャンが、Discordを活用しているのはご存知でしょうか。
たとえば、国内のみならずアジアでも注目されるTohji 。彼が主宰する「t-zone」は、国内外のメンバー3,000人以上が参加しています。
そこで彼は、新しいイベントを実施する際に、日時だけでなく参加ミュージシャンのバックグラウンドや共演の理由を、自らの表現で伝えています。加えて、リスナーが作った作品(音楽やビジュアル)を相互にシェアして感想を伝えあっていたり、W杯などのイベントで盛り上がったりと、「公式と非公式」の境目をなくしたコミュニケーションを行っています。
Tohjiだけの試みではなく、CAHVやflag21など、オルタナティブなシーンで活躍するミュージシャンが自身のサーバーを主催し、作り手と聞き手がゆるく交流しています。
また、2022年12月まで放映していたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』の主題歌を担当しているMirrage Collective もDiscordを開設。オーディオ素材の配布や、リミックス企画を行っていたり、テレビに出演する際の実況が行われたりしています。
Discordは「ロール」を複数設定でき、チャンネル単位で「できること」を細かく設定することが可能です。細かく体験を設計できるので、これからさらに新しい場が生まれる予感がします。
podcast リスナー向けの Discord サーバ
近年、周囲でも聞いている人が増えてきたポッドキャスト。その「コアリスナー」向けにも、Discordサーバーを開設する流れがあるようです。
例えば、ACCグランプリを獲得したコテンラジオ。リスナーコミュニティをDiscordで運営しています。オフ会を開催したり、 「#コテンコミュ」のキーワードでSNSへの投稿も行われており、楽しそうな気配を感じています。
さらに、 Tokyo Young Bossも、2022年12月12日にDiscordサーバーをオープンし、50名限定の募集枠は早々に埋まったようです。クローズドなサーバーが多いので詳細を伝えることは難しいですが、ポッドキャストへのリアクションだけでなく、クリスマスを祝いあったりしている風景がみられます。
仕事になりつつある Discord
他分野で注目が集まるDiscordですが、すでに「仕事」にもなりつつあります。個人の“スキル”を売るサービス『ココナラ』で、「Discord」のキーワードで検索すると、サーバーの構築支援などの依頼が散見されます。
ほかにも、商用のサーバーの構築設定やBot開発など実用的なものから、NFTの活用施策の案件があります。実際にサーバーを運営していると、使いやすいチャンネル設計が意外と難しいので、ニーズはある気がしています。IA/UIデザインのスキルと連動しそうな気配がありますね。
***
どうでしょう。Discord、結構おもしろそうじゃないですか? プロセスエコノミーやクリエイターと相性が良いのはもちろんなのですが、個人的には「個人の店」と近いなあと思っています。
まだ土地が安価だった時代、仲間内の誰かが店を開いてそこに溜まる風景が都市にはありましたが、Discordはまさにそれを「バーチャル」空間で行う行為だろうと。
冒頭で言及した風月堂のように、あるいは街のレコード屋から新しい音楽が生まれたり、スケートボードショップからファッションブランドが生まれたりしたように、Discordのサーバーから新しいカルチャーが誕生するかもしれません。
あなたもDiscordで自分の場を開いたり、ちょっとあたらしい世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
第二回は、コミュニティの歴史を振り返りながら現代との共通項を紐解いてみるのとかはどうかなあ、と考えています。
ひぐち なおや
東京大学工学部社会基盤学科卒業。都市コミュニティと文化の関係性などを研究。リクルートホールディングスへ入社し、プロダクトマネジメントおよびUXデザインを担当。その後、NEWPEACEに入社し、プロダクトブランドのPMなどを担当。その後、新規事業開発およびプロダクトチームを立ち上げる。現在は、comcom の事業開発とプロダクトマネジメントを行う。居場所づくりで飯が食える社会の実現を目指す。
知識を皆に
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