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“自分らしい暮らし”でワクワクを。「リノベ不動産」社長・鎌田友和が起こす不動産イノベーション

“自分らしい暮らし”でワクワクを。「リノベ不動産」社長・鎌田友和が起こす不動産イノベーション

グローバル不動産企業を経て起業した株式会社WAKUWAKUのブランド「リノベ不動産」は、中古物件販売からリノベーションまでを一貫して提供するプラットフォームで、これまでにありそうでなかった新事業。現在は全国に200店舗以上にまで拡大しており、その勢いはとどまるところを知りません。代表取締役CEOの鎌田友和さんに、これまで新築が中心だった不動産業界で中古物件にビジネス的価値を見出した理由や、リノベーションまで担うことにした経緯、今後の不動産業界について伺いました。

業界都合で提供されていた画一的な住宅に違和感あり

13年間勤めたグローバル不動産企業では、通算5,000件以上の不動産取引を成し遂げたという鎌田さん

――以前、鎌田さんはグローバル展開する不動産企業に勤めていました。どうして退職して、今の会社を起業しようと思ったんですか?

鎌田友和さん(以下、鎌田さん):当時、僕が担当していたのは、居住用不動産に特化した不動産売買の仕事でした。用地を仕入れて、住宅企画をして、住宅購入希望者に提供する不動産売買がメインだったんですが、働くうちに業界としての課題を感じるようになって……。

――鎌田さんが感じた不動産売買の課題って何ですか?

鎌田さん:不動産売買というのは、物件を売りたい人と買いたい人をマッチングさせて、手数料をいただくビジネスなんです。手数料は物件によって異なり、売り手と買い手の双方からいただく物件もあれば、売り手からは手数料をいただかず、買い手のみから手数料をいただく物件もあるんです。

例えば5,000万円の物件で、売り手と買い手の双方から手数料を3%ずついただくなら、それぞれ150万ずつ合計300万円が発生します。しかし、買い手のみから手数料をいただく場合は150万円の半額になる。不動産売買にはそういうカラクリがあるんです。

――物件によって手数料が違うんですね。でも、なぜそんなことが起こるんですか?

鎌田さん:仲介会社には売り手側、買い手側というものがあるんです。例えば物件を売りたいオーナーが、売り手側の仲介会社に売却をお願いするとします。そうした物件は、不動産会社が閲覧できるデータベースに登録されて、買い手側の仲介会社がそれを参考に物件を探し、買い手のお客さんに紹介します。このケースだと、売り手からの手数料は売り手側の仲介会社がもらい、買い手側の仲介会社は買い手のお客さんからの手数料のみとなります。その中で双方から手数料がもらえる物件は、売り手側の仲介会社が存在しない不動産会社が新築で開発した物件などですね。そのため、不動産会社としては双方から手数料がもらえる物件を優先してお客さまに紹介するようになってしまうんです。

――売り手と買い手の双方から手数料をもらった方が、不動産会社としての利益は多くなりますもんね。

鎌田さん:これが不動産売買における大きな課題の1つだと考えました。それと、ユーザー目線を意図的に無視することで、業績を伸ばす手法が業界に蔓延しているのもよくないと思っていました。

――よくない手法って何ですか?

鎌田さん:業績を伸ばす手法に多いのは、画一的な新築の建て売り物件を作って売買すること。新築の建て売り物件は、不動産会社が土地を買って家を建て、建て売り住宅として販売するのが通常です。建てるにはまず土地の仕入れがありますが、この価格競争が激しいんです。当然ながら、土地の持ち主は一番高く買ってくれるところに売りたいですよね。仕入れる不動産会社側としての予算は決まっているので、土地を高く買えば、その分建築費を安く抑える必要が出てきます。

――なるほど。

鎌田さん:しかも、土地を買って家を建てて売るまでのスピードも、会社の利益のためにはとても重要。土地を仕入れたら、設計、着工、販売をすぐに行うことで、買い手からの資金回収のスピードが上がります。そのスパンが2年なのか1年なのかで売上も倍に変わってきます。そこをスムーズに進めるため、外見も間取りも画一的な家が並ぶという現象が起こるわけです。本来、設計士はその土地を見て、景色や日当たり、風の感じ、高低などに合わせて最適な間取りを設計するもの。だからこそそこに住みたいと思う方がいらっしゃるんですけど、建て売りに関して、そういうことができている会社は現状では多くないのが実情なんです。

――いつからそういった循環が起きてしまったんですか?

鎌田さん:おそらく40〜50年前くらいですね。日本の住宅の供給量が足りない背景があり、品質よりも量が大事というのがあったんです。住宅購入が税制的に優遇されているのもそのためです。

ただ、住宅が足りなかったのはすでに過去のこと。今は住宅の余剰が生じていて新築着工件数も減少しているのに、不動産業界の仕組みとして改善されないまま現在に至っているのは問題だと思うんです。

――そういう問題や課題を抱えているのに、業界全体が変わらないのはどうしてですか?

鎌田さん:本当はみんなこれじゃまずいとは思っているけど、それをやらないと食っていけない。だから、この現状から脱することができないんです。僕はそういう不動産業界を変えたいとも思ったし、15年ほど前に「生きる目的が見出せない」という壁にぶつかったのも、起業する大きなきっかけになりました。当時、何のために生きているのか、何をすれば生きる価値があるのか、真剣に考えることがあって。それで自分なりに見えてきたのが、子どもに負けないような好奇心を持つことが生きる目的になったら楽しそうだな、ということでした。自分だけでなく、多くの人をワクワクさせられる生き方をしたいと。こうした抽象度の高い感覚と、不動産業界の課題解決が結びつき、株式会社WAKUWAKUを起業したんです。

物件売買とリノベーションを融合するために煩雑さを改善

――2013年の起業当時、新築着工件数が減り始めた時流から、中古物件を中心とした「リノベ不動産」を展開しようと考えたのでしょうか。

鎌田さん:そうですね。業界内でも「新築の時代はもう終わるよね」と言われ続けていましたから。しかし、中古住宅を扱うにしても、例えば2,000万円で中古住宅を買って、500万円でリノベーションをして3,000万円で売り、500万円の利益を出すのも自社で在庫を抱えるリスクが出てきます。また、予算が決まっている中で、高い値段でしか物件が買えず、結果的にリノベーションに使える金額が減るという問題も起こります。だから、株式会社WAKUWAKUでは中古住宅の仲介を中心とすることにしました。お客さまに物件をつなげ、そこで同時にリノベーションの提案もしていく、という仕組みにしたんです。

――その場合、手数料は双方と片方、どちらになるのでしょうか。

鎌田さん:この場合は、買い手側からのみ手数料をいただきます。これまでの不動産会社があまりやりたがらなかったビジネスモデルですが、「リノベ不動産」ではリノベーションもセットで提案するので合わせて収益が出せるんです。不動産というジャンルだけだとキャッシュポイントが1つだけになってしまいますが、不動産と建築を融合することでキャッシュポイントが2つになる。だからどちらかの収益が低くても、もう片方でしっかりバランスを取ることができるんです。

さらに中古物件を自分好みにリノベーションすることで、新築物件の3分の2程度の費用に抑えられるという、お客さま側にもメリットがあるんです。

――いいこと尽くしじゃないですか。

鎌田さん:希望に沿ったリノベーションができるので、お客さまもワクワクできますしね。そうしたインフラを作れたら最高だなと考え、フランチャイズ店を日本中に展開していて、現在200店舗以上にまで広がりました。店舗数は着実に増えているんですが、お客さんが求めるニーズは毎回異なりますし、そもそも物件自体も一軒ごとに違うので、実は非効率的だったりします。とんでもなく煩雑でめんどくさいし、生産性も低いんですよ。

――中古物件のリノベーションは非効率的なのに関わらず、「リノベ不動産」ではそれを実現できていますよね。なぜでしょうか?

鎌田さん:不動産業界はいまだにアナログで、そのために起こる煩雑な業務が非常に多い。そういった従来の課題を解決するために、DX化していかにオペレーションをエクセレントにできるか、そこに徹底的に集中してやっているからですね。FAX必須のような非生産的な旧来の慣習が残っている業界だけに、僕らの試みは伸び代も半端ない。不動産というレガシー業界で新しいことをするのは大変ですけど、誰もやっていなかったからこそ挑戦できる余地があると思っています。僕たちが中古物件のリノベーションという非効率的なビジネスをできているのは、お客さまをワクワクさせるための住宅を提供するという信念を、創業以来ずっとブレずに持ち続けているからかもしれません。

「住宅に自分の暮らしを合わせるのではなく、自分らしい暮らしができる住宅を提供していきたいんです」と鎌田さん

全国の不動産企業に仕組みを提供し加盟店拡大

――ここまで来て初歩的な質問で恐縮ですが、そもそも不動産売買とリノベーションは、別の会社がそれぞれ行うのでしょうか?

鎌田さん:不動産と建築というのは要素が異なるので、本来、不動産会社はリノベーションの提案はなかなかできません。また、リノベーションをする建築会社も、不動産は担当外のため、それぞれ別々にやるしかありませんでした。例えばあるマンションの一室が中古販売される場合、お客さまはそれを買ってあれこれリノベーションをしたいと考えますよね。ですが、販売している不動産会社は、どの壁なら壊せるのか、キッチンやバスルームなどの水回りはどこに移動できるのかは判断できないんです。

――不動産会社が扱うのは、あくまで物件だけということなんですね。

鎌田さん:そうです。しかし、リノベーションをどのくらいできるのか、いくらかかるものなのかがわからないと、お客さまとしてもトータルの予算が組めなくて困ってしまいます。そこで僕らは、不動産売買とリノベーションをセットで提案する仕組みを構築することにしたんです。全ての案件を僕らが直接担当するのは難しいので、不動産会社と建築会社をマッチングさせて、業務支援するためのプラットフォームを全国の加盟店に提供するというスタイルにしました。

「リノベ不動産」恵比寿南ショールームでは、さまざまな建材に触れられる

――どんな加盟店が多いのでしょうか。

鎌田さん:多くは不動産仲介者ですね。ほかにもリフォームをやっていた会社もあります。彼らは加盟店に加わることで、僕たちが提供するシステムや仕組みを活用してもらい、一連の住宅ローンの取り扱いから、中古住宅の仲介、リノベーションの設計、デザイン、施工までを一気通貫でサポートできるようになります。

――サポートが一貫していると、お客さんと加盟店の両者にとってもメリットが多そうですね。

鎌田さん:不動産にはいろいろな処理が必要で、書類だけでも何枚もありますからね。不動産と建築を中心に、あちこちに分かれているものを自動化するシステムを作り、さらにお客さまは店頭に出向かなくてもオンライン上で契約できるようにしています。ただ、何でもかんでも自動化、DX化すれば良いというわけでもなく、アナログ的に対面で対応した方が良い場合もあります。その辺りの勘所は、以前のグローバル不動産時代の経験が非常に役立っています。

――アナログの良い面とは?

鎌田さん:物件のご案内なんかはそうですね。オンライン上でもご覧いただけますけど、やはり実際に物件に足を運び、その部屋を見たいというニーズは必ずあります。

――実際の物件を見ると、そこでの暮らしの想像がつきやすいですもんね。それでは、どうやって全国200店舗以上に拡大したんですか?

鎌田さん:新築の需要がどんどん減少しているので、注文住宅を扱う会社はどこも苦しい状況です。近年は円安の影響もあり、2年前と比べると新築は22%も原価率が上がっているんです。これでは受注しても利益なんて出ませんよね。かといって同じ仕様の画一的な建て売り物件を一気に売ろうとしても、お客さま側のニーズの多様化も進んでいるので、それでは満足していただけません。そう考えると、中古住宅の取り扱いをしながら、同時にリフォームなりリノベーションも対応していかないと会社が立ちいかなくなります。そこで僕らは、そうした会社さんにお声がけして、加盟店になっていただいているんです。

――加盟店にとってもお客さんにとっても利便性が高いから、「一緒にやりましょう」となるんですね。

鎌田さん:従来、お客さまは銀行や不動産会社、リノベーション会社を自ら探さないといけませんでした。そういうことに時間と手間がかかって、良い物件に出会えても逃してしまうということがよく起きてしまうんです。その点、「リノベ不動産」の加盟店を利用すれば、不動産の物件探しから、住宅ローンの申し込み、リノベーションの設計デザイン、アフターサービスまで、窓口1つで全部完結できるようになります。加盟店側の利益率も高くなりますし、何よりお客さんの満足度を上げられるんです。

ちなみに、物件は住宅ローン、リノベーションはリフォームローンにそれぞれ分かれていて、前者は金利が0.3%なのに、後者は2〜3%で返金期間も短い。ところが「リノベ不動産」のシステムだと、リノベーションを含めた住宅ローンを適用できます。不動産と建築を融合させることで、お客さまが享受できるメリットが増えるんです。

中古リノベーションはこれからさらに一般化の兆し

――では実際にリノベーショされる物件って、どのくらいの古さのものまで可能なのでしょうか?

鎌田さん:かなり古い物件でも可能です。木造住宅ですと築100年でもちゃんと補強すれば問題ないですし、マンションなど鉄筋コンクリートも100年、150年と築年数が経っていても快適に暮らせます。結局、メンテナンス次第ですね。だから、中古物件を買うときは、過去にどういうメンテナンスがされてきたのかが重要。「物件は管理で買え」とも言われるぐらいですからね。

「リノベ不動産」が手がけた施工事例。デザイン性はもちろん、家事動線など機能性も兼ね備えた住まいづくりを実現させた

――管理の状態が良ければ古い物件でも、「リノベーションしないでそのまま住んでみたい」という声もありそうですよね。

鎌田さん:そういう方も少なからずいます。従来の不動産売買だと、リノベーション済みの物件を売りに出すのが基本ですが、「リノベ不動産」は物件の購入からリノベーションまでがワンストップ。だから、築20年ぐらいの物件をそのままの状態で買いたいという方に、リノベーションせずにその物件を紹介することもできるんです。さらに物件を買い取る会社が介在しない、買い手と売り手を直接マッチングする“不動産版メルカリ”のような状態になっているから、お互いの希望価格で物件を取引できる。これは両者にとっても大きなメリットになりますよね。リノベーション込みというスタイルで始めた「リノベ不動産」ですけど、こういった形でもお客さまに喜んでいただけていると思います。

――古い物件にも十分に可能性があるんですね。マーケットとしては、どのくらいのポテンシャルを秘めているのでしょうか?

鎌田さん:現在、日本の不動産業界では、中古住宅とリノベーションの分野で20兆円のマーケットがあるといわれています。僕らが扱っているのはそのうちのまだ数百億円なので、とにかく現在の事業に特化して、マーケットを伸ばしていきたいですね。2030年までの僕らの目標は、「リノベ不動産」を1,000店舗まで拡大、GMV通取引総額)1兆円の達成。このままの調子でいけば、それらを叶えられるはずです。

――すごいスケールですが、現実身を帯びていますね。鎌田さんはこれまでに多くの物件を取り扱ってきましたが、リノベーション物件の中で印象に残っているものはありますか?

鎌田さん:リノベーションの予算1,000万円というお客さまがいらしたのですが、そのうちキッチンに300万円かけられたんです。キッチンって安ければ数十万円で改修できますが、その方は大変キッチンにこだわっていました。お客さまが100人いれば100通りの暮らし方がある。そう改めて思うきっかけになりました。

――世の中全体の流れとして、今は自分らしい暮らしを実現する住居が求められているんですね。

鎌田さん:リノベーション自体は昔からありましたけど、この10年ほどで一気に拡大してきています。かつてはリノベーションをされる方って、こだわりの強いリッチな層が多かったんですけど、10年ぐらい前から住宅ローンでリノベーションにも対応してくれる金融機関が増えてきたんです。僕らが創業したのもちょうどその頃。だから、これはもう間違いなくそういう時代が来ると、中古物件とリノベーションをセットにした事業展開に舵を切りました。まだまだ目標には届いていないので道半ばですが、お客さまの満足度がとても高いのは肌で感じています。これからもユーザーファーストのサービスを強化させていき、みなさんをワクワクさせていきたいと考えています。

日常にワクワクを提供するため、鎌田さんは旧態依然といわれる不動産業界に挑み続ける

鎌田友和(かまた ともかず)

1978年静岡県富士市出身。 国内外にグローバル展開する総合不動産企業にて、13年のキャリアの中で通算5,000件以上の不動産取引に関わる。2013年6月に株式会社WAKUWAKUを創業し、住宅のみならず、くらし・働き方・経営・文化・従来の考え方そのものをリノベーション。「パーソナライズ化された自分らしい豊かな暮らし」の実現のため、産業構造の課題を解決するビジネスモデル「リノベ不動産」を展開する。

撮影/武石早代 取材・文/田中元

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